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第二章 クエストに向かう少女、やり過ぎる
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七地方の一つ、鬱蒼とした森林が続くダマユナセール地方。
突然、そこに巨大な竜巻が発生した。木々をなぎ倒し、大地をも剥離させて飲み込むほどの破壊的威力。しかし、その竜巻は一点に留まって移動しようとしない。
「……ふん。こんなもんかしら」
すると、竜巻はある女性の一言であっけなく消え去った。
「今日も全く面白くない魔物ね。あっさり終わっちゃったわ~。しょーもなっ」
無聊に堪えない様子で、女性は大きく背伸びする。そこに、仲間らしき三人がどうしようもなく笑って木陰から姿を現した。
「いや、疾風さんは手に負えないですわ。うちら、陰でいつも見てるだけですし……」
「そうだよ、ふふっ。私達にもなんかさせてくれない?」
「リーダーが強すぎるってのも理由かもしれないけどっ」
困り果てたように三人がやれやれとリーダーに訴えかける。
「なによ、簡単にクエスト終わるんだしいいじゃない。文句あんの?」
「へいへい、ないですやい」
「Sランク冒険者三位の『疾風の覇者』様に、文句なんてないですよ~」
「嫌味に聞こえるわよ。ぶっ殺されたいの?」
気性の荒い彼女の言動に、仲間は愉快そうに口を覆った。
ギルドの仲間を三人連れてダマユナセール森林地帯へと赴いていた、Sランク冒険者三位『疾風の覇者』様。『天人』級魔法使いである。
異名で呼ばれている通り、彼女は最上級の風魔法を操る冒険者。噂によると、彼女が生み出す風の瞬間殺傷力は、かの『七星神竜』の一人、狂飆神竜にも匹敵する。従って、彼女と真っ向から勝負を挑むのは単なる自殺行為だ。実際、彼女に勝つ可能性がある人類は、現在で数名しかいないと言われているほど。
「あ、リゼ。髪にほこりついてる。とってあげるね」
「いいわよっ、別に。自分で取るわ」
「もう、遠慮しなくていいのに~。ふふっ」
彼女の性格は触れてしまえばすぐ爆発するくらいに短気で、協調性も毛頭無い我欲な人だ。しかし、本来はとても仲間思いで、困ったことがあれば何でも手を貸してくれる面倒見の良い母親のような存在と薄々聞く。
年齢は青年ほどの一人娘で、若葉のように鮮やかで優しい萌黄色のロングへアと瞳、精巧に装飾が施された黒色のロングドレスを身に纏い、常に険しい表情を浮かべている。特に機嫌が悪いわけではなく、先天的な顔つきらしい。加えて彼女は滅多に笑わないので、世間から疎まれてしまうのも無理は無かった。
だが、彼女を知る仲間は心から頼りにしているようだ。
「とりあえずクエストは疾風さんの技だけで終わったし、帰ってとっとと報告しようぜ」
「そうね。とっとと国に帰りましょー」
彼女達はダマユナセール帝国という、森林地帯に栄える国に滞在している冒険者だ。
人為が及ばぬ広大な自然が特徴的なこの地方は、多くの収穫物や生物が見受けられ、今でも空では鳥が延々と群れをなして羽ばたき、地には野生動物がのどかに暮らしている。緩やかに流れる川のせせらぎが心地よく響き、生い茂る木々の隙間から光芒が閃々と照らすような幻想空間は、一たび目にしてみれば困憊しきった身も心もみるみる癒される。
「あ、そういえばリゼ? 一昨日くらいかな、ギルドハウスにグランディール国の騎士団長から手紙が来てたよ。ってかリゼ、手紙見てたくない? あれ?」
重要な何かを思い出すように、仲間の女性は眉を寄せる。
突然、そこに巨大な竜巻が発生した。木々をなぎ倒し、大地をも剥離させて飲み込むほどの破壊的威力。しかし、その竜巻は一点に留まって移動しようとしない。
「……ふん。こんなもんかしら」
すると、竜巻はある女性の一言であっけなく消え去った。
「今日も全く面白くない魔物ね。あっさり終わっちゃったわ~。しょーもなっ」
無聊に堪えない様子で、女性は大きく背伸びする。そこに、仲間らしき三人がどうしようもなく笑って木陰から姿を現した。
「いや、疾風さんは手に負えないですわ。うちら、陰でいつも見てるだけですし……」
「そうだよ、ふふっ。私達にもなんかさせてくれない?」
「リーダーが強すぎるってのも理由かもしれないけどっ」
困り果てたように三人がやれやれとリーダーに訴えかける。
「なによ、簡単にクエスト終わるんだしいいじゃない。文句あんの?」
「へいへい、ないですやい」
「Sランク冒険者三位の『疾風の覇者』様に、文句なんてないですよ~」
「嫌味に聞こえるわよ。ぶっ殺されたいの?」
気性の荒い彼女の言動に、仲間は愉快そうに口を覆った。
ギルドの仲間を三人連れてダマユナセール森林地帯へと赴いていた、Sランク冒険者三位『疾風の覇者』様。『天人』級魔法使いである。
異名で呼ばれている通り、彼女は最上級の風魔法を操る冒険者。噂によると、彼女が生み出す風の瞬間殺傷力は、かの『七星神竜』の一人、狂飆神竜にも匹敵する。従って、彼女と真っ向から勝負を挑むのは単なる自殺行為だ。実際、彼女に勝つ可能性がある人類は、現在で数名しかいないと言われているほど。
「あ、リゼ。髪にほこりついてる。とってあげるね」
「いいわよっ、別に。自分で取るわ」
「もう、遠慮しなくていいのに~。ふふっ」
彼女の性格は触れてしまえばすぐ爆発するくらいに短気で、協調性も毛頭無い我欲な人だ。しかし、本来はとても仲間思いで、困ったことがあれば何でも手を貸してくれる面倒見の良い母親のような存在と薄々聞く。
年齢は青年ほどの一人娘で、若葉のように鮮やかで優しい萌黄色のロングへアと瞳、精巧に装飾が施された黒色のロングドレスを身に纏い、常に険しい表情を浮かべている。特に機嫌が悪いわけではなく、先天的な顔つきらしい。加えて彼女は滅多に笑わないので、世間から疎まれてしまうのも無理は無かった。
だが、彼女を知る仲間は心から頼りにしているようだ。
「とりあえずクエストは疾風さんの技だけで終わったし、帰ってとっとと報告しようぜ」
「そうね。とっとと国に帰りましょー」
彼女達はダマユナセール帝国という、森林地帯に栄える国に滞在している冒険者だ。
人為が及ばぬ広大な自然が特徴的なこの地方は、多くの収穫物や生物が見受けられ、今でも空では鳥が延々と群れをなして羽ばたき、地には野生動物がのどかに暮らしている。緩やかに流れる川のせせらぎが心地よく響き、生い茂る木々の隙間から光芒が閃々と照らすような幻想空間は、一たび目にしてみれば困憊しきった身も心もみるみる癒される。
「あ、そういえばリゼ? 一昨日くらいかな、ギルドハウスにグランディール国の騎士団長から手紙が来てたよ。ってかリゼ、手紙見てたくない? あれ?」
重要な何かを思い出すように、仲間の女性は眉を寄せる。
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