魔王の霊魂を背負う少女

アベルンルンバ

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第五章 教官ツルカ率いるギルド、危険種と遭遇する

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「ん? おやおや、お嬢さん。大人に向かってそのような口を利くとは、随分と達者ですな。身分の差がまるで分かっていないようで」
「は……?」
 危うくツルカは堪忍袋の緒が切れかけたが、我ながら寛大な心で耐えてみせる。
「あの、あなたの持っていかれた紙、私が見てた──────」
「あー全く、しつけのなってない子だ。どのようにしたら己の身の程を弁えず、これほど猪口才な態度になるのやら」
 ツルカの話に耳を貸さずに、男は髭を撫でながら吐息交じりに呟いた。
 いよいよツルカも腸が煮え返るが、不気味にも笑顔を絶やさない。
「聞いてます? それ、わ た し が見てたんですが!」
 ツルカは声高に、男が持つ張り紙を指差した。
「ん、ああ。で?」
「いや、おかしいですよね。なに勝手に持ってってるんです?」
「何を言っているのですか。言わせてもらいますと、あなたみたいなお子様が、Bランククエストなど受けられないでしょう? なら、私がお持ちしても変わらないじゃないですか~。そうですね……お、ありました。あなたには、これくらいがお似合いでは?」
 男は一つの張り紙をさっと剥がし、ツルカに差し出す。笑えることに、そのクエストはナユが先ほど選んだものと同じだった。
「あのー……はぁ、あなた私の事ナメすぎじゃないですか?」
「そうですか? 私はあなたに見合ったものを選んだおつもりですが……おや」
 すると男はツルカを見て、何かに気づいたように目を凝らした。
「あなた、騎士団ですか?」
 男はツルカの胸辺りに指差した。騎士団の証である勲章だ。
「まさかまさか、見ない顔なので分かりませんでした。もしや、新人で?」
「なんです、その言振りだとあなたも騎士団ですか」
 彼の身なりは身軽に改良されたプレート製の鎧。淡い光のように映える金髪オールバックスタイルと突き刺すように長い口髭。そして常に眩しそうな切れ長の目。
 冒険者かと思えば、彼はツルカと同じ騎士団らしい。
「失礼。私、ダージホンと申します。まさかあなたのようなお子様が騎士団とは微塵にも想像できなく」
 変わらず騎士団の男──ダージホンはツルカを侮蔑するような態度だった。
「……もしや、あなたはツルカ=ハーラン様では?」
「え……なぜ私の名を」
「やはり。新人を雇ったという話がありましたからね。確かCランク冒険者なのにも関わらず、より一層の功績を立て続けに積んだとか」
「かなり騎士団の中でも広まっているのですね?」
「まあ? 私にとっては、どうでもよい事ですが」
 どうやらダージホンの口からは、ツルカの逆鱗にいちいち触れる言葉がもれなく添えられるようだ。
「なるほど、ならばあなたがこのクエストをご覧になっていたのも頷けます。ですが、ツルカ様が担当するのはCランクギルドのはず。FからCランクのクエストをご覧になるべきでは?」
「でも、私が見ていたのに勝手に取っていくのもどうかと思いますが」
「Cランク冒険者にBランククエストを持っていかれるのは勿体無いのですよー」
 寛大といえども、よくここまで耐えただろう。ツルカは自分を褒め称え、そろそろ一発いくかと言わんばかりに拳を構えたが────
「やい、ダージホンさん。いいクエストありましたかね」
 一人の男がニコニコと、ダージホンに話しかけた。見る限り、ダージホンが担当している試験用ギルドのメンバーだ。一旦、ダージホンはツルカを差し置いて男と対応するが、再びツルカを蔑視するように睨みつける。
「ん、なんですかその子。ダージホンさんの知り合いですか?」
 男がツルカを見ながら首を傾げる。
「いえ、彼女は騎士団です。少し、揉め事をしておりまして」
「えぇ! こんな子どもが」
「そうでしょう? こんな子どもがですよ」
 揃ってツルカを侮蔑するような口振りだが、対してツルカは脱力しきっていた。
(……怒りが一周回っちゃったよ。とにかく、こいつらから離れたいんだけど)
《アイナに煽られるよりキレてますねー》
 遂にツルカは、ダージホンらの対応に面倒と感じ始めた。
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