魔王の霊魂を背負う少女

アベルンルンバ

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第六章 最強の少女、罪に問われる

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「みんな、王様の前に並んだね……」
 夜魔将官は各自、国王の眼前に一礼すると、一人の男が代表して前に出る。
 見た目は長身痩躯で、肩までかかる長髪は烈火が吹き上げるように赤い。対してその身にはそぐわない重装を身につけ、もちろん胸当てには夜魔将官の証でもある紋が丁寧に刻まれている。貴石のように輝く翠緑の瞳、耳にはピアス、首には緻密に作られたロングネックレスをかけ、とてもではないがその存在感は他を超越している。
「ご無沙汰しております、グランディール国王、大臣。のみならず、今回は騎士団長と多くの騎士達も出迎えて下さるとは」
「これは……夜魔将官第一位、グザヴィエ殿。お元気そうで……」
 大臣は縮退しながら夜魔将官第一位──グザヴィエを上目に汗水を滴らせる。玉座に腰掛ける王も立ち上がって頭を垂れると、騎士団らも敬服の姿勢を取る。
「お心遣い感謝します。本日は実に良い日ですね。空を仰げば鳥が羽ばたき、耳をすませば心地よい風が吹いているのを大いに感じられた。人々も平和な日常を何気なく送っていらっしゃいますし、むしろ陳腐にも思えてきます」
「はっはっ、それも世界の秩序を保っていらっしゃるあなた方の主様のおかげです」
「ええ。おっと、これ以上の無駄話は時間が勿体無いので、早速ですが本題に」
 グザヴィエは気取った咳をつくと、一人の夜魔将官を手招いた。
「本日は夜魔将官第三位、ナタールの事について伺いに来たのです」
「ナタール……殿について?」
「はい。詳しいことは……私が話すのもあれですので、只今お外にてお待ちになられている陛下を玉座の間にお呼びしてもよろしいですか」
「も、もちろんですとも! 魔王様をお外でお待ちさせるなんて無礼極まりない。どうかお許しを……」
「いえ、魔王様は寛大です。そのようなことでお怒りにはなさりません」
 グザヴィエは夜魔将官一行を連れて、扉の前で並ばせる。
「頭を垂れよ。今ある万有に拝謝し、帰依せよ。全ては『審判を下す者』の為に」
 グザヴィエの言葉に、国王を除く玉座の間に集う全ての者が一礼した。そして、ゆっくりと扉を開く。しばらくして、一人の女性が玉座の間に入場した。
「跪けっ!」
 グザヴィエの指示に、鷹揚とレッドカーペットに沿って歩む女性に平伏する。
「来た……あれが」
「ひぇ~、まさか下民の俺達がシトラ魔王様を一目できるなんて夢にも思わなかったぜ」
「でもすっごく幼い……。ツルカちゃんぐらいじゃない? にしても綺麗な人」
 前髪が目にかかるほど長い白髪のエレガントヘアースタイルと、清純な白皙。天体のように光華を放つ紫色の瞳は、覗いてみれば吸い込まれてしまいそうなほど奥深く神秘的で、その目つきは凛としている。なんとも生真面目で貞操が固そうなお方だが、彼女の体裁は疑う余地なく実の姉であるマリアネと酷似していた。
 その出で立ちは類がなく、美しい体のラインをふんだんに主張している精妙にデザインされたエンプレスドレス、ケープを着こなし、まるで少女には顕示できない尊厳がある。薔薇の髪飾りとプラチナ製のサークレット、細かに綾なされたチョーカーネックレス。多彩な宝石が埋め込まれた王族を表徴するミニクラウンは満遍なく煌いているが、代々引き継がれているためか僅かに錆が浮いていた。
「シトラ魔王様……。大戦を引き起こした、マリアネ魔王様の妹君……」
「だけどよ、歴代の中ではかなり評判が高いほうらしいじゃねえか」
 シトラはグランディール国王の面前で静かに歩みを止め、右手を胸に添えて黙礼する。
「ごきげんよう、国王様。並びに出迎えてくださりました皆様。ドリバルグ魔城国女王、シトラ=スノート。本日は伝達もなく貴国へ押し入った事をどうかお許しください」
 一国の王として、かなりシトラは謙虚だった。
「め、滅相もない! 魔王様自ら我が国へいらっしゃるということは、相当の事がございましょう」
「そうですね。ひとまず皆さん、頭を上げなさい。いつまでもその体勢は苦痛でしょう」
 シトラの一言に、戸惑った様子で全員が襟を正す。
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