魔王の霊魂を背負う少女

アベルンルンバ

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第六章 最強の少女、罪に問われる

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「どういうことじゃ。ドリバルグの魔王様がグランディール国に何の用が……!」
 国王の温厚な表情も、報告を聞いたすぐに見苦しいほど神妙になっていた。続いて騎士団長や騎士団諸共、ジン達も表情をさっぱり変えている。
 一番表情が乏しいのは言わずもがな、この少女だけだ。
「ドリバルグの……魔王様? 夜魔将官?」
 とぼけるかのような苛立たしい顔つきて、ツルカは安閑としていた。
《現役の魔王様、すなわち今のドリバルグ魔城国を治める女王様ですよ。その魔王直属の部下が、夜魔将官と言われる上級魔族なのです。第一位から第九位まで存在する夜魔将官は魔王様が選別した有為な魔族であり、上位三位までになると一人でSランク冒険者を複数人相手できるほどの実力を持つとか……》
(化け物か⁉)
《しかも厄介なのが今の魔王様。マスター……ツルカ=ハーランの身体である元魔王マリアネ様の一歳下の妹君なのです》
 あたかもツルカは関心が無さそうだったが、遅れて事の重大さに気づく。
「────それってやばくね⁉」
「やばいに決まってんだろ。あの魔王様がここに来てるんだぜ⁉」
「嫌だよ! 私まだ死にたくない!」
 まず何故、魔王が我々を殺めに来たという話になっているかは謎だった。
「くっ……一体魔王様がグランディール国に何の用があるのだ。こうしてはおられん。魔王様に無礼があってはまずい」
 ドリバルグ魔城国。グランディール国から北東端、ドリバルグ地方のアビス大峡谷を越えた先に栄える、魔王が統制している国だ。
 ドリバルグ魔城国に逆らう国はまずいない。魔王という存在は世界の頂点に立つ者であり、神と同様に崇められるほど高貴たる存在。古代からグランドシオルの魔王については『審判を下す者』と称され、悪を断罪する絶対者と言われるほど。
 当然ながら、魔王と聞いて快く思わない者も数多い。一般的な認知では悪魔の王と言われるほどだが、初代魔王の口伝こそが世界の平和。秩序を正し、重んじることこそ魔王の務めなのだ。今の平和があるのは魔王の後ろ盾があるからと肝に銘じなければならない。
「こやつらを今すぐ二階席へ隠せ。いいか、魔王様に無礼がないように姿を現すな」
 グランディール王城の玉座の間は二階が吹き抜けになっており、両サイドに二階席が設置されている。ツルカ達は玉座の後方にある二手に分かれたかね折れ階段を登らされ、二階席の隅へ身を隠すよう命令された。

「き、来ました。魔王様と夜魔将官の皆様です」
「よし……扉を開けよ。通すがいい」
「はっ」
 扉がゆっくりと開かれた。そこには只ならぬ様相を見せる九人の人影が確認できる。先頭に一人の男が立ち、並んで八人が順番に続く。
「来たわ……あれが夜魔将官って人達?」
「そうだろうな……明らかに雰囲気がちげぇ」
 昂然と歩を進める夜魔将官に、全身が戦くように震える。
「ちょ、待ってよ。あれっ……!」
 陰からこっそり一階の様子を伺っているツルカ達。するとマリナが何かに気が付いたかのように、夜魔将官の一人に指を差す。
「あれ……前に助けた人じゃない……⁉」
「え、え。ホントだわ! 三列目にいる人、三日前に助けた人じゃない!」
 艶のある黒髪と白銀の瞳。あれほど特徴的な容姿を簡単に忘れるわけがない。紛れもなく、三日前にアザンドラと戦闘を繰り広げていた女だ。
 以前と同じように奇妙な生体をあしらった紋章が刺繍されたマントを羽織っているが、それは他の八人も同じような紋章が刻まれた鎧や衣装を身に着けていた。
「嘘……まさかあの人、魔王様直属の夜魔将官だったってわけ⁉ あの気味悪い紋章って夜魔将官のものだったんだ。しかも前から三列目に並ぶってことは……」
「まさかあいつ、夜魔将官第三位ってことか……⁉」
 三日前に助けた女騎士が魔王直属の部下、夜魔将官だと誰が予想し得ただろうか。
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