魔王の霊魂を背負う少女

アベルンルンバ

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第七章 待ちに待った少女、遂にギルド対抗試験が始まる

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「さて、今は二人だけだ。これならなんの隠し事もなくいい話ができると思わないか?」
「い、いえ……もう私は緊張で泣きたくなるくらい震えていますが」
 不用品で雑然とした物置場の個室にて、若やかな男が白髪の少女に箒を投げ渡す。白髪の少女は箒を扉の取っ手に上手く引っ掛け、外側から開かないようにする。
「まあ、話の内容は予想できてるだろ? ならさ、単刀直入に聞こう。君、何者?」
 やはり分かり切っていた質問だったのか、白髪の少女は刹那に形相を曇らせ、男から後退する。白髪の少女は一向に黙して語らず、男から目線を逸らしていた。
「なあ、頼むよ。明らかに君はそこらにいるただのCランク冒険者じゃない。普通じゃないんだ。誰しもが疑念を抱いている」
「……必然的にこうなるのは分かっていましたが、私はどうしても答えられません」
「正体を隠したいのは分かる。でも俺は、不朽の栄光代表として、不明瞭な現実を把握しておかなければならない。君を危険な人物と認識しているわけではないんだ。僕はCランク冒険者の君がどうして危険種を討伐できたのか知りたい。約束だ、誰にも言わない。僕だけでいいんだ。君を……どうしても知っておかなければならない」
 男は不景気そうに近くの雑貨にもたれかかって、大きく嘆息した。
「でも……」
「君は絶対宣言のよって安全を約束されている。どんな内容であっても僕は何もしないよ。もともとする気ないのに……」
「……本当に内密にしてくれますか」
 ようやく白髪の少女は口を割る覚悟を決める。
「分かった。約束だ」
 男は口元を引き締めた。そして、白髪の少女は固唾を呑み、怯えるように────
「私は……かの有名な魔王、マリアネの力を引き継いでいます────」
─────。
───────。
「本日より冒険者昇格試験自由参加型、ギルド対抗試験を開始する」
 ダマユナセール地方にて、多くの冒険者と騎士団が集まっていた。騎士団長アルベルが巨剣を掲げ、開会の言葉を言いあげる。
「ひぇ……始まったぜ、ギルド対抗試験」
「ツルカちゃんと頑張ってきたもん! きっと大丈夫だよ!」
「うん。私達も頑張る」
「よっしゃー! ぶちのめしてやるぜ」
「お、おう……にしても」
 世界を揺るがしたシトラ魔王の絶対宣言から日が経ち、遂に冒険者昇格試験の伝統、ギルド対抗試験が本日より始まる。ツルカはこの時まで、なんの変哲もない日々を過ごしてきたつもりだが、やはり未だ慣れない事といえば。
「めちゃくちゃみんな、こっちをチラ見すんじゃん……」
 どれだけ経っても、ツルカ達は脚光を浴びる存在だった。とりあえず、目立ちたくないというツルカの願いは、もう叶いそうにない。ひとたびツルカ達が歩き出せば、人々は震えるように道を開けていく。さながら今をときめく大スターのような扱いである。絶対宣言によって、ツルカ達の知名度は神聖域に達していたのだ。
「本日は全、百三十一組の内、九十三組が集まってくれた。さて、ギルド対抗試験の諸注意だが……実は私がするよりも、彼女の方が最適かと思い、任命した。では頼めるか」
 アルベルは冒険者らの最前列にいる一人の少女に声をかけた。少女は大きくため息をついて、気乗りがしないように前に立つ。まず、冒険者一行はその存在に疑問を持った。
「あれ、誰なのかな。ジンは知ってる?」
「知らねえ。なんで俺が知ってると思ってる?」
 喧噪な空気が漂い始め、森林に人声が響き渡る。
「え、待って……。武装巫女装束に白髪の……⁉ まさか────」
 マリナが何かを言おうとした瞬間だった。
 突如、謎の少女は腰に帯びている鞘から刀を引き抜き、それを振りがぶった。伴って、枯れ葉が空へと吹き飛ぶほどの突風が、ダマユナセール森林を駆けていったのだ。
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