魔王の霊魂を背負う少女

アベルンルンバ

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第七章 待ちに待った少女、遂にギルド対抗試験が始まる

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「くうっ……なんて強さなの」
「あんたぁ……こんなことして許されると思ってんのかしら⁉」
 グランディール国、ダマユナセール側城門前。マガンとリゼットが息急き切っていた。
 大勢の騎士団がいたものの、大半が壊滅。手も足も及ばぬ残りの騎士は、その光景を遠巻きに眺めるしかなかった。
「くくくっ。Sランク冒険者でもこの様か……! 素晴らしい、恐るべし禁魔崩書ッ!」
 姿形が歪な女は刃物のように鋭いツメを立てて、風の如くリゼットに接近した。リゼットは後ろに飛んで回避するが、女は弾むように地面を蹴り飛ばして、再度接近する。
「ち──『アップドラフト』!」
 リゼットは風を生み出して体の向きを操作した。女は息をもつかせぬ速さでリゼットを通り過ぎる。女はただでは扱えないような高度魔法を唱えては、爪でリゼットを切り裂こうとした。さらにリゼットを弄ぶように故意に攻撃を外し、派手におどけて見せる。その屈辱的な態度にリゼットは我慢ならなかったが、悔しいことに女の実力は明確だった。
「ほらぁ! 避けてばっかじゃいつか死ぬぞ! ああん⁉」
「く、クソったれめ……!」
「り、リゼットさん!」
 リゼットは攻撃を繰り出すことができず、風を駆使して女の攻撃を避けることしかできない。マガンは急いで応戦しようとするが────
「おっと、君の相手は俺だよ?」
 マガンの進路を塞ぐかのように、コートに身を包む男が回り込んでくる。先ほどマガンは彼と切り結んだが、この男も実力は確か。一見、男は魔法使いかと思えば懐に隠している鉄製のナイフだけで、シャイニンに次ぐ剣士であるマガンと太刀打ちした。魔法使いの欠点である近距離戦までも視野に入れ、その技術を補っているかなりの手練れだ。マガンも驚き焦っている。
「カマロナは取り込んでる。せっかくあっちはあっちで楽しんでるし、俺達もこっちで楽しもうぜ? このバリオン、あんたといい勝負ができると思わないか?」
 リゼットとカマロナが戦う光景を指差しながら、バリオンはくすくすと笑いかける。
「ふ、ふざけないで! 友達を放っておけないの!」
「おやおや、さっきも互いに剣戟を振るった仲じゃん? 俺はナイフだけど。そんな俺をお友達認定してくれないなんて、悲しくなっちゃうよ~?」
 バリオンはめそめそするように、身にまとうコートを脱ぎ捨てた。
「……え、ええ⁉ その紋章、夜魔将官⁉」
「ちっちっち、違うな。元、だ」
 露になったバリオンの姿に、マガンは青ざめた。
 鋼で形作られた鎧に、上品な装飾。着目すべきところが、鎧に刻まれる紋。疑いの余地もなく魔王軍直属、夜魔将官としての証だ。
「な、なるほど……。なら、あの実力も理解できます。夜魔将官は全ての能力、戦術において抜きん出ている最高峰の戦士。わ、私でも苦労するはずです」
「おお、私でも……か? 君がSランク冒険者何位かは知らないが、夜魔将官を舐めてもらっては困るな。これでも私は大戦時、Sランク冒険者を三人も殺ったからなっ!」
「────ううっ……!」
 バリオンはナイフを片手にマガンへ突貫する。小回りの利くナイフに、マガンが扱うような刀は相性が悪い。マガンは刀を構える体勢でバリオンの攻撃を受け止めるしかない。
「ほらほら、受け止めてばかりじゃ楽しくないじゃないか。もっと君が追及してきた刀の業を俺に披露しておくれ?」
 マガンも馬鹿ではない。バリオンは上級魔法をも操る事が出来る。押し返して反撃したとしても、バリオンの魔法がいち早く完成するだろう。夜魔将官であった彼なら、即決で放つことのできる無詠唱魔法も容易いだろうし、威力が超凡であろうことも想像に難くない。まともに喰らってしまえば、マガンも冗談では済まないのだ。
「なんだ……。もっと楽しませてくれると思っていたが……心外だ。面白くない」
 バリオンは守りに徹するマガンの懐に、隙間を縫うように潜入。瞬発的なバリオンの動きに驚く暇もなく、マガンは迅速に対応しようとしたが。
「『デスウェーブ』」
「────っ」
 バリオンがマガンの腹に手を添えて魔法を唱えた瞬間、空間すら歪むような波動が生み出された。直後、爆ぜるような音と同時に、マガンの胴に大穴が空いた。波動で身体は吹き飛ばされ、マガンは派手に倒れ伏す。
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