魔王の霊魂を背負う少女

アベルンルンバ

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第七章 待ちに待った少女、遂にギルド対抗試験が始まる

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「とりあえず、アイナは見ててくれよ。俺の雄姿をさ……!」
 ツルカは立ち上がり、脚の擦り傷を見兼ねて溜息をつく。次にツルカは魔力弾を大量に生成し、それを自分の周りに躍らせた。
「行くぜ!」
 ツルカは突風のように駆け、カマロナの右手に回り込む──が上手くいかず、カマロナは瞬時にツルカと距離を取って魔法を唱える。
「『ダークスピア』!」
 カマロナの唱えた魔法により、闇で形作られた槍が無数に召喚される。宙でさまようダークスピアはいきなり方向を変え、射られた矢のように、ツルカへと放たれた。
「『マジックウォール』!」
 ツルカが唱えた『マジックウォール』の魔法で、前方に魔力で体現した大盾が現れる。大盾は向かってくるダークスピアを弾き、ツルカに一切寄せ付けない。さらにツルカも召喚しておいた魔力弾を放って対抗。カマロナは魔力弾を避けていくが────
「────っ!」
 あっという間にツルカはカマロナの目下まで迫り、最後の一弾を残しておいた魔力弾を拳に秘めた。
「『マジックシールド』────!」
 咄嗟にカマロナは『マジックシールド』を発動し、ツルカとの間に衝撃吸収の魔法陣を展開したが、ツルカはお構いなしに拳を突き出した。
「行くぜ! 名付けて『魔力で超威力が増加したスーパーパンチ』ィィィィィ───!」
 カマロナの魔法陣とツルカの拳が触れた刹那、魔法陣は破裂するように損壊。ツルカ渾身の右ストレートは破竹の勢いでカマロナの左わき腹にヒットした。
 普通なら衝撃吸収の魔法陣を拳で突破できるはずがない。しかしツルカは、最後に残しておいた魔力弾を右手に収めることで、拳と魔力弾の威力を重ねて放ったのだ。そうすることで、純粋な魔力の塊である魔力弾とともに、強烈な打撃を与える事が出来る。
「畜生が……! 許さん………許さんぞっ!」
 左わき腹を押さえながら、カマロナは怒声を張り上げる。超人的な再生能力があるはずのカマロナだが、ツルカの攻撃はどうも辛抱できず、痛みが治まらない。
 するとカマロナは空高く浮かび上がり、両手をすり合わせた。目を真っ赤にしながら何やらぶつぶつちと呟き、しばらくして底知れぬ異質な魔力を解き放つ。
「許さん……ここまで私を弄ぶなど! 【世界の理を歪めし者よ、終焉を告げ、万物を掃滅せよ。森羅万象を統べる神でさえ、我が術を止めんとせん】」
《いけません! あれは『神王』級魔法! 今の状態では受け止められません!》
「────な」
「フハハハハ! 悔やむなら天界で懺悔するんだな! 死ね、『デクラレイション・エンド』────ッ!」
 その瞬間、カマロナの前方に何重にも重なった赤光に輝く八芒星の魔法陣が一斉に展開され、瞬時に放たれたのは途方もない漆黒の波。魔法は一瞬にしてツルカの目前にまで接近し、避ける事は不可。ツルカはいち早く衝撃吸収の魔法陣を展開し、カマロナの魔法を食い止めようと図った。そして、衝撃吸収の魔法陣とカマロナの魔法が鮮烈に衝突する。
「うっ……これは……無理なやつだ……!」
 魔法の重圧を受けたツルカは悟った。明らかにこの魔法は常人が巧まずして為せる技ではないし、常人が受け止められる技でもない。これは神にも匹敵するほどの大魔法だ。
「どうだ、この圧倒的威力! 貴様ごときが受け止められるものではないだろう⁉ いつまで耐えられるか見せてもらおうか!」
 ツルカは必死に踏ん張るが、魔法の威力は弱まるどころか強まる一方。ツルカの足が地面にめり込んで滑る。どうやらカマロナはツルカが押し負けるまで魔法を放つ気だ。
《ダメです……! このままでは衝撃吸収魔法陣も持ちません! 彼女の魔法がマスターの身体に当たれば、確実に姿形なく消滅しますッ!》
 次第にツルカを守る魔法陣が薄れていく。衝撃吸収の魔法陣もいよいよ限界が近い。
「うぐぐぅ……ちきしょう……でも駄目だ。力を使っちゃ……!」
 ツルカは約束したのだ。あの時……力を使わないとあれだけ強く、心に誓ったのだ。意地でも貫徹しなければならない。
 信用を得るためには────
「く……うううっ」
「あと何分、いや何十秒持つかな? アハハ!」
「ガキ! 頑張れ! お前ならやれる!」
「そうだよ! そんなやつコテンパンにやっつけちゃえ!」
 と言われても、よくある逆転展開はツルカにできそうもない。刻々と限界が迫り、腕がもげてしまいそうな痛みが全身を伝い、とうとうツルカは焦眉の急を告げた。
「もう……っ!」
《マスターッ!》
 遂に魔法陣が破られた──と思った時だ。いきなり魔法陣の強度が増したのだ。
「やれ───っ!」
「ハッ⁉」
 グランディール国城門前から男の声が大きく響いた。
 そこには───
「あ、アイギス⁉」
 誰もが目を見張る人物、『不朽の栄光』リーダーとして名高い勇者──アイギスだった。
 アイギスは片手に転移魔法石を、もう片手には魔力石を持ち、ツルカの魔法陣に魔力を供給すると、声を荒げてツルカに叫ぶ。
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