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第2章 俺と幼馴染と異世界

17.

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 契約かー…

正直数日前まで凡人高校生であった俺には
よくわかない話である。
契約書ってやつが必要なのか…?

「うーん」

「シンジくん、本気で従属契約がわかないの?」
シルミンがマジな顔して聞いてくる。

「はい、本来ならクエスト行く前にエルミンさんから教わる予定でした」

「「……………」」
お互い無言になる。

シルミンは、おねーちゃんがあの時焦っていた理由がわかった。
(こりゃ、、、)

改めて自身の行動の甘さに反省するシルミンだった。

《私はこの子だったら契約してもいいよー。助けてくれたもん》
《正直幾度と召喚士と契約を結ぶことはあったが
こんな間抜けなやつは初めてじゃ。ほっとけん》

「なんか、褒められたりバカにされたりしてるけど
なんか契約してくれそうです」

「おう、まじか……」

「契約書とかって必要です?ほら雇用契約的な?」
俺はアルバイトで培った知識を用いる。

《んなよく分からんもんは必要ない。
わしらに名前をつけるのじゃ。それだけで良い》
《君がつけた名前を私たちが気に入れば契約完了だよ!
可愛い名前をつけてね!》
「あ、そうなの。そんな簡単なんだ。書面とかないのは助かるね」
《ならワシは紳士的な名前が良いな》
「紳士的ってなんだよ。たかが一青年にそこを求められても分からないから。」

シルミンは普通に魔物と話しているシンジが不思議でしかなかった。
しかも相手はB級とA級だ。
普通は自身の冒険者のランクに合わせた魔獣や魔物と契約をするのが一般的だ。
正直冒険者なりたてのシンジではこんなことはあり得ない。はずなのだ。

(召喚士って謎の多いステータスだから、もしかしたらこれが普通なのかも)
シルミンはそう思う事にした。

シンジは悩む。
彼らの名前をつけるのに。

「紳士的なのと、可愛いのと。」

シルミンさんに助けを求めたが
こればっかりは本人が考えないと従属契約の意味がないらしい。

「ええーーーい。
白蛇は、《ベスラム》!リスは《ルルラ》だ!」

2匹の名前をつけた途端
シンジと2匹の周りが明るく光る。



2匹の言葉が聞こえると、光は収まった。

「どうやら契約は完了したようね」
俺たちを見守っていたシルミンさんが声をかけてきた。

「正直何年も冒険者やってるけどこんなことは初めてよ」
「そうなんですか?僕なんて毎日が初めてだらけですよ」
「ふふっ。そうだよね。とりあえずフォースくんが待ってるだろうから
モアウサギを5狩ってフォースくんのところに帰ろう」
「あれ、数増えてません?」
「だって、仲間が2匹増えたでしょ」

そうか、契約を結んだから
もうこいつらは俺の仲間なんだな。

「ベスラム、ルルラ、頼りない主人だがよろしくな」
《こちらこそー!》
《これからビシバシ、ワシらで貴様を育ててやるぞ》

(悠理がみたらびっくりするだろうなーーー、あはは)

その後コツを掴んだのか、俺はモアウサギをいとも容易く狩ることができた。
(俺ちょっとは成長している…!?)

喜んでいるシンジの姿を見て
ベスラムとルルラはまさか自分たちと契約したことでシンジの
魔力がアップしていると伝えるのは…今はやめておこうと思った。


「お、2人ともお帰りなさい!」
フォースが遅めのお昼を作って待っていてくれた。
フォースは自身で持参した《守り石》によって周辺に結界を張っていたのだ。
これなら冒険者とはぐれても自分の身は守れる。

早速シンジはモアウサギ20体を四次元ポケットから取り出す。
「15匹は討伐依頼分、5匹は俺たちの食事用にと思って」
「1人1匹でもお腹いっぱいになるのに、5匹?」
「シンジが途中で魔物と契約したんだよ。しかも2匹」
「まぁ、成り行きでなんだけどね…あはは」
「2匹も!?シンジやるじゃねーか。ビギナーズラックってやつだな」
「そうとも言えるね」
「なぁ早速見せてくれよ!その魔物を!」

俺は腕に巻き付いていたベスラムと
胸ポケットに入っていたルルラを見せる。

「ほぅ、これが魔物かーーー」
《なんだこのアホ面のやつは》
《好みじゃないーー》
思わず2匹のリアクションに笑ってしまった。
「シンジ、どうかした?」
「ん、いいや。なんでもない」
「ようし、新しいメンバーのためにも腕を振るうぜ!」
フォースは満足したのかモアウサギの解体と調理は始めた。

俺らは焚き火を囲んで待っていたらベスラムが話し出す。
《忘れておったが、我らは魔物ではない。人々は我らをと呼ぶ》
《あんな負のオーラ纏ったやつなんかと一緒にしないでー!》

(ふーん、魔獣と魔物って違うのか…)

「シルミンさん、彼らが俺たちはだと言ってます」
「!?」

なんてこった。本当かよ。
魔獣なんてシルミンですら数回しか出会ったことがない。
森の奥深くにおり、人に対して疑り深いため滅多に人が出入りしている森に出てこない筈だ。
それに魔物と違って彼らは魔術が使えるのだ。

「シンジくん。ギルドに帰ったらシンシアさんに報告だからね!だよ!」

「…………??は、はい」

(え、何!?俺怒られるの!?)
シンジは事の重大さが分かっていなかった。



俺たちはフォースが作ってくれた
野菜たっぷりスープと、モアウサギのソテー(トマトソース添え)を食べた。

ベスラムとルルラも気に入ったのかたくさん食べていた。
(動物って食べ物とかの好みが違うと思ってたけど
美味しいという感覚はどの動物でも共通なんだな)

俺らはとりあえず今回のクエストは達成したので帰り仕度をする。

「シンジは、こいつらを収納しないんだな」
ファースが聞いてきた。
「収納って何?」
「そんなことも知らないのかよ。
召喚士は契約した魔物を出したりしまったり出来るはずだぜ?」
(えぇ、そうなの!?)

「そんなことベスラムもルルラも、シルミンさん教えてくれなかった。」
「私はてっきり収納したくないのかなーと思ってさ、あはは」
シルミンさん、俺じゃなくて遠いところを見てますよね。

俺はシルミンさんをほそーーーくした目で睨む。

《まぁ、ワシらは収納せよと言われても
《外の風に当たりたいもんねーーー》
「え、俺が収納するって言っても断るのかよ」
《ワシの方がお前さんよりも強いからの。断れるのだ》
ベスラムが舌を出しながら答える。

「え、それじゃ意味ないじゃん。」

結局俺はベスラムを腕に巻きつけて、
ルルラを胸ポケットに入れてギルドに戻ることにした。


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シルミンは、正直この状況をどう説明するのか悩んでいた。

・シンジくんの初クエストを適当に受付した。
(知らなかったとはいえ、エルミンに怒られる……)
・契約方法を知らない初級冒険者である召喚士をクエスト行かせた。
(これもエルミンに怒られる…)
まだ、怒られるならましな方だ。

問題は…
契約方法すらも知らなかったのシンジくんが魔獣と契約したこと。しかも2
1匹はB級、もう1匹はA級。
本来なら初級冒険者ならMPの消費が激しくて契約時にぶっ倒れても仕方がないのだ。
それくらい上級の魔獣を使役するのはMP消費が激しいのだが、それが×2。
なのにシンジくん普通にしてるじゃん!?

(どういうことなの!?そして怒られるだけじゃすまないよね?これ!)
シンシアは頭を抱える。

(…………)

考えるのをやめたシルミンだった。

(とりあえず、エルミンに報告しよう。エルミンがなんとかしてくれる!)

シルミンも実は1匹動物と契約している。
主に連絡通達用だ。

メモを書いて、契約動物である鴉に
エルミン宛にと伝える。

契約動物である鴉は脚にそのメモを持ち、エルミンの元へ向かう。

(私の仕事は今日はもうこれで終わり!)
もう下手に足を突っ込まないと思ったシルミンだった。

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エルミンは受付の雑用をこなす。
(そろそろシンジくんたちが戻ってくるかもしれないわね…シルミンもね…)

正直シンジくんとフォースくんのことは心配だが
シルミンがいれば大丈夫だろうとは思っていた。
こう見えても自身の妹のことは手に取るようにわかる、私に怒られたくないがために仕事はするだろう。

(そして、あの子には説教ね…)
エルミンの拳が硬くなる。

ギルドの窓から鴉が入ってくる。
(シルミンの連れてる鴉だわ、何かあったのかしら)

シルミンがこの鴉を連絡通達用に用いているのはエルミンも知っている。
鴉がエルミンの前にメモを落とす。
「届けてくれてありがとう」

エルミンはメモを開く。

エルミンへ
これからシンジくんとフォースくんとギルドへ戻ります。
初クエストながらモアウサギの討伐成功してました。
そして、シンジくんが魔獣2匹と従属契約しました。A級白蛇とB級リスです。
シンジくんのMPは確かに削られているようですがピンピンしてます。って事で後よろしく。
シルミン


----な、何ですって。

思わずエルミンが受付から立ち上がる。
近くにいた冒険者たちが驚く。
「し、失礼いたしました」
態とらしく椅子に座るエルミン。

(何が起こったのよ…)

頭を抱える。
(今日が初クエストの子なのよ。そんな子が契約なんて、魔獣と、しかもA級とB級の2匹…!)

信じるに耐え難い話ではあるが、
シルミンがこの鴉に伝達を頼むときには嘘は書かない。

(私じゃ抱えきれない話だわ。)

エルミンは裏手に入り、
書斎にいるであろうシンシアに連絡を取る。
「シンシア様、ご多用中に失礼します」
〔エルミン、どうした〕
「シンシア様が気にされていた。初級冒険者のシンジくんですが、本日初クエストで魔獣A級白蛇とB級リスと契約を結んだようです」
〔…………、わかった。シンジくんが戻り次第、魔獣と共にこの部屋に来るよう伝えてくれないか?〕
「かしこまりました」

ガチャ、ツーツーツー

こういう時、上司がいると便利だわ。と思うエルミンだった。

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