俺と幼馴染だけ、異世界の別の場所に転移したそうです

ふじ

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第2章 俺と幼馴染と異世界

19.

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コンコン

「どうぞ」

俺はシンシアさんの部屋に入る。
「失礼します」

「冒険者になって早々にすごいことになったね」
シンシアが、書斎の椅子に座りながら
にこやかに声をかける。

(こんな優しそうな人を悠理はだなんて)

「そうなんです、、俺事の大きさがわかってなくて、、」
「それはシルミンの所為だからあとで怒っておくよ、
どうぞ椅子に座りなさい」
「いや、俺がフォースの勢いに流されてしまったのがいけないんです。ちょっと悩むこともあって、、、」
「まぁ、色々と初めてのこともあるだろうから
悩むのは仕方がないことだよ。気にしないで思いっきり悩みなさい」
「はい、ありがとうございます」
「早速だが、契約した魔獣を見せてくれるかな?」
「あ、はい」

俺はベスラムとルルラを机の上に解放させる。
「白蛇がベスラムと、リスがルルラです」

《こやつが冒険者ギルドの代表か、まぁ礼儀はありそうな奴だな》
《ふーん、まぁ実力はあるんじゃない?よろしくー》
2匹の気持ちをまとめて「宜しくといっております」と伝えた。

「なるほどね、報告に間違いはなさそうだ…」
うーん、といった形でシンシアさんが悩む。

「シンジくん、本来なら君はクエストに出る前に
僕たちの説明を聞いて欲しかったというのは、知っているかな?」
「はい、シルミンさんが仰ってました」
「本来、魔獣や動物と契約するには、彼らのMPと魔力を共有するため人間側の方のMPを大量に消費するんだ。それはお互いのランクも影響しててね。
君はEランク、ベスラムはA級、ルルラはB級だ。
この差が大きければ大きいほど消費が激しい。知らずに契約してしまった事で、1匹と契約してぶっ倒れる人もいる。人の行き来があるにしろ森の中でぶっ倒れては命がいくつあっても足りないからね。
それを避けたくて事前の講習会を受けてもらっているんだ」

「そ、そうなんですか…」
俺は驚いた。そもそも2匹と契約してぶっ倒れそうになった感覚もないし、
ベスラムがA級、ルルラがB級の魔獣だなんて知らなかったのだから。
《だから言ったのじゃ》
《ご主人ほんとおバカさん》
「魔獣なのは聞いたけどランクまでは聞いてなかったぞ」
俺は小声で2匹と話す。

「まぁ、森の中でぶっ倒れなくて良かった。
それに彼らは魔獣なら魔術も使えるはずだ、あとで項目も聞いておくといい。
シンジくんとスムーズに契約したのなら
近い項目の魔術を得意とするだろうからね」
「分かりました」
「正直、この冒険者ギルドには召喚士が君しかいないのもあって、
召喚士は謎のステータスにもなっている。追加で教えて欲しいことがあるんだがいいかい?」

その後俺は、シンシアさんに
どういう経緯で2匹に出会ったのかを話した。

「なるほどね。召喚士だからこそ2匹の声が聞こえたのかな。
ただ、正直この森は人の出入りも激しい。
魔獣がここまで出てくるのはなかなかないんだよ」

《それは私たちが見回りしてたからだよー。
魔王復活が近いのもあって、魔物が増えてきているんだ》
《こちらも今後の戦いに向けて適宜情報収集をしていたところだが》
《私が狩猟の罠にかかっちゃって、その時にご主人と出会ったんだよ》
(そうだったのか、魔王復活が近いと…)
俺は2匹が言ったことをシンシアさんに伝える。

「やはり動物の方が情報が早いですね。
最近その会議もあって他の国の冒険者ギルドとも
連絡を取っていたところなんです。
森や周辺地域が騒がしく魔物の量が増えたと。
確信がなかったのですが、魔獣達にまでいってるとなると予想は当たっていたようですね」

《正直これからさらに魔物の規模は増えるだろう。
さらに上位種も増えてくるはずじゃ》
《せっかくのこの安寧の時を壊されたくはないからね。私たちも用意はしておきたいんだ》
「そもそも魔王って必ず復活するのか?」
俺は2匹に聞いたつもりだったが
答えてくれたのはシンシアさんだった。

「魔王復活は確実でしょうね。残念ながら。
何百年かに一度の周期であるのです。昔の本にも載ってますよ。ただ、僕たち人間や人族に近い種のものは長生きができないため、あくまで昔話のようになっておりますが、、、、まさかこの時代でやってくるとは」

《本来なら魔王復活のタイミングに向けて
勇者が現れ各国を結び、魔王に立ち向かうのだが…》
《勇者が現れると私たちにはわかるんだよ。
なんていうか動物の直感的な感じで。そこで勇者を私達が見極めるんだ。
本当にこいつが勇者で良いのか、試練を与える》
「その試練を耐えたら?」
《勇者は我が魔獣族の長と契約し、
ドラゴン族とも協力協定が結べる。一気に人間族は強くなるね》
「もしも耐えられなかったら?」
《そこで終了、私たちは魔王vs人間の争いには干渉しない。さっさと逃げる》

(おいおいなんて無責任な…)

「2匹はなんて?」
俺と2匹が話しているのを見ていた
シンシアさんが聞いてくる。

「どうやらーーーーー」

「なんだって、、、、」
シンシアさんが真っ青になる。
そりゃそうだろうな、魔獣だけでなくドラゴンの力も借りれるのだ。
それがあるのと無いのでは力は歴然である。
だがそれは勇者の力にかかっているのだ。

《ただ、現在は魔物たちは増えているが、勇者の気配がさっぱりなんじゃ》
《勇者召喚がないのなら、今回の争いは人間は役立たずになるとうちらは思ってるんだ、だから準備してるんだよ!》
ルルラが机の上でシャドーボクシングを始める。
シンシアさんがルルラを不思議そうに見ている。
俺は説明した。

「そんなはず、、、先日ナタリー姫とお話しした際に、勇者召喚が先に行われてしまったと報告を受けてます。本来なら我が国にて勇者召喚を行い、姫様の加護を与える予定だったのですから…」
《ふーむ、だがそういった感覚はなかったな》
《んじゃ、それ嘘なんじゃない??》
「2匹はそんなはずはないといってます」
「ふざけないでくれるか!姫様が嘘をつくとでも!?」
シンシアさんが怒った、そうだよな。自分の国の姫様が嘘つき扱いされたんだから、、、
2匹がいったのだが俺が怒られる形になった。

「いずれどちらが正なのか分かるでしょう」

シンシアさんは大人気なかったと謝ってくれた。

「正直、魔王復活が本当だとして
人間への被害はどれくらいになるのでしょうか」
「分からないんだ、一度魔王が復活し戦いとなったら、各国に被害が及んで、それまでの記録書なんかも燃えてしまったりしててね…」
《申し訳ないが人間族は99%死ぬだろうな》
ベスラムが容赦なく答えた。

「勇者、余計頑張らなきゃじゃん!」

ん?まてよ??
勇者召喚は行われたとシンシアさんは言っていた。

「あの、どこの国が勇者召喚したんですか?」
「隣国のリービッヒ国だと聞いている」

(間違いない、俺のクラスメイト達だ!)
でも、2匹はそんな気配はなかったと…何故だ?
だって俺達は確かに召喚されたはず、ここにいるのが証明だ。ただ、俺と悠理だけ別の場所になっただけで、誰が勇者だかは分からないが、召喚されてリービッヒ国にいるはずなのだ。
俺は召喚士、悠理はだしなぁ。

「シンジくんどうかしたかい?」
「い、いえ。何でもないです。ちょっと気になっただけで…あはは」
「そうか…」

この噛み合ってない感じモヤモヤする。
けどシンシアさんも2匹も嘘を言ってるようには思えない。そんなことしてもお互い損になるだけだ。

確かに勇者召喚は行われた…
けど、勇者の反応は無し…
それって、、、?  んー、分からん。
俺は頭をかきむしる。
俺が考えたところで分かるわけがない。
(あとで悠理に相談してみよう)

あと、俺は気になっていたことをシンシアさんに聞いた。
「シンシアさんは、ローリエさんっていう、アルシーブにいるさんをご存知ですか?」
シンシアさんの雰囲気が変わる。
かい?」
「は、はい。ちょっとこの前悠理と色々ありまして…険悪なムードになってて…」
「彼女のことなら知ってるよ。アルジュームにも所属しているし、彼女はSランクさ」
「そんな、すごい方だったんですか!?」
「あぁ、彼女の場合は貴重な薬草や鉱石の発掘がメインだけどね。それと合わせて魔物狩りをお願いしていたりもするんだ。彼女に勝てる奴は早々いないよ」

(てっきり2人とローリエさんなら波長があうと思ったが、彼女の機嫌を損ねたのかな?)

「悠理とローリエさんが喧嘩?してしまって、これから悠理を説得しますが、どうしたら良いのか、、自分もローリエさんに痛いところを突かれまして…」
「そうでしたか。彼女は竹を割ったような性格です。うじうじするよりも腹を割って話す方がいいと思いますよ。それに貴方であれ、ユーリさんであれ、彼女の力はと思いますからね」

「??……わかりました。頑張って仲直りします!」

(多分伝わらなかったな、これ。彼女はローリエが魔女であると気づいている様だが、彼には話してないのか…)
シンシアは残念に思った。
ユーリにも必要な力だが、魔獣を扱うシンジにも魔力の使い方は学んでもらう方がいい。
特にこれから魔王、魔物との戦いになるのであれば、育てて損はないだろう。

「それでは、失礼します」
ベスラムを腕に巻き、ルルラを胸ポケットに入れる。
「2匹とも収納しないのかい?」
シンシアさんに聞かれた。
「あ、はい。ギルドに戻るときに収納を言われても拒否すると言われてしまいましたので」
シンシアさんも力関係が分かったのか、これ以上は聞いてこなかった。
「あぁ、報酬と下で2匹の従属登録をしておきなさい。エルミンに言えばわかると思います」

「わかりました。ありがとうございます」
《じゃーねー》
《では、失礼する》

俺はシンシアさんの部屋から出た。

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