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第5章 呪いの手紙編
第54話 呪いの手紙編⑪ 完
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呪いの手紙騒動から1か月経った頃。
アタシとリディアはデニー・マクミランのお葬式に参加していた。天気は生憎の雨で、葬儀場の外から激しく雨の音が聞こえてくる。
奥にはデニーの眠る棺が置かれていて、各々が別れの挨拶をしたり棺に思い出の品を入れている。
リディアの言う通り、デニー・マクミランは1か月で病状が悪化し亡くなってしまった。リディアとの手紙のやりとりが叶うことはなく、1通目の手紙の返信を考えている最中に彼の訃報がレッドフォード邸に届いた。
「レッドフォード伯爵…。」
アタシは女性の声を聞き、後ろを振り向く。後ろには、デニーの母親であるクロエ・マクミランさんとその横には夫らしき男性が立っていた。
「初めまして、レッドフォード伯爵、レティシア様。挨拶が遅れて申し訳ありません。わたくし、デニーの父親のネルソン・マクミランと申します。」
アタシとリディアは頭を下げ、静かに挨拶をする。
「デニーのためお忙しい中、お越しいただいて大変光栄ですわ。デニーも最後に、レティシア様に会えて幸せ者です。」
涙を堪えるように、クロエさんが言葉を繋ぐ。肩を震わせている彼女に変わり、ネルソンさんが話を続ける。
「お噂は息子と妻から聞いています。息子の我儘に付き合っていただき、文通の相手になっていただいたと。何とも恐れ多い…感謝の念に堪えません。」
「いいえ、アタシは2人を見守っていただけですわ。…結局、お返しができなくて残念だと、娘も言っていました。」
「…だからね、今日、お返事のお手紙持ってきたの。デニーに宛てて。」
ほら、と言いながらリディアは小さな鞄の中から1通の手紙を取り出した。『それはそれが…大変ありがたいです…!』と言うネルソンさんの横で、クロエさんは声を殺してポロポロと泣いている。
「お手紙、後で棺に入れされてもらうね。私魔法が使えるから、祝福魔法も付与したの。デニーに届くといいな。」
_______。
しばらくして、棺周りの人が捌けて、アタシとリディアの2人だけになる。アタシは花を一凛添えて、リディアの方を向き直った。
「アンタの背の高さでは、棺に届かないかしら?抱っこしてあげるから、手紙用意しなさい。」
アタシはリディアの腰を持ち、腕に座らせるような姿勢にさせる。一瞬リディアが体勢を崩して、アタシの頭に腕を絡みつけるように抱き着いてきた。ファンデーションがリディアの服に付かないように気を付けつつ、アタシはリディアの姿勢を正させる。
「…私、遺体を見るの、何気に初めてかもしれない。」
「意外ね。国王のお葬式で祝福魔法をしたりしなかったのね。」
リディアは小さな声で、アタシに話しかけてくる。人のざわめきがあるとはいえ、周りに他人がいる状況だから、アタシはリディアの耳元で話しかける。
「アディ、ちょっと手前にしゃがめる?手紙、デニーに渡したい。」
アタシは言われた通り、少し中腰になってリディアを棺に近づけた。リディアはデニーの眠る顔の横に、手紙を差し込むように入れる。本当は手に持たせてあげたかったみたいだけど、他の人が入れた品物でデニーの手は埋め尽くされてしまっていた。
「デニー・マクミラン、あなたに聖女リディア・アッシュクロフトの祝福がありますように。」
リディアは両手で祈り、祝福を口にする。アタシもリディアを抱っこしながら目を閉じ、デニーに祈りを捧げる。
「さようなら、デニー。そしてありがとう。あなたのおかげで、呪いの手紙の件は進展したわ。」
アタシも棺で眠るデニーに声をかけ、リディアを床に下ろした。リディアの手を掴み、参列者の後ろのほうで待機する。
この国における葬儀の方法は2つある。
1つ目は、貴族の間で主流となっている土葬。故人に防腐処置を施した上で、棺のままもしくは故人のみを土に埋葬する方法。
2つ目は、庶民の間で主流となっている火葬。故人の棺を魔法の炎で燃やし、骨を専用の容器に入れて埋葬する方法。土葬ほどお金がかからないため、貴族でもこちらの葬儀方法を選ぶ層は一定数いる。
(様子を見るに、デニーは火葬で弔われるみたいね。)
出棺の時間まで、アタシとリディアは他の参列者に紛れて時が過ぎるのを待った。
_______。
帰り道、ポソッとリディアが口を開く。
「アディの腕が治って良かった。」
「そうね。移動車の運転もスムーズに出来るようになったし。」
アタシはハンドルに左手を押し付け、握ったり開いたりを繰り返す。
「私もアディに手紙書こうかな。」
「あら、ラブレターかしら。いつでも歓迎よ。」
「モンスタっち10個くださいって。」
「可愛くないわね!!」
アタシとリディアは他愛もない会話をしながら、家に帰る。
お葬式の雰囲気を引きずらないように、できるだけ明るい話を。
_呪いの手紙は、もうどこにもない。
アタシとリディアはデニー・マクミランのお葬式に参加していた。天気は生憎の雨で、葬儀場の外から激しく雨の音が聞こえてくる。
奥にはデニーの眠る棺が置かれていて、各々が別れの挨拶をしたり棺に思い出の品を入れている。
リディアの言う通り、デニー・マクミランは1か月で病状が悪化し亡くなってしまった。リディアとの手紙のやりとりが叶うことはなく、1通目の手紙の返信を考えている最中に彼の訃報がレッドフォード邸に届いた。
「レッドフォード伯爵…。」
アタシは女性の声を聞き、後ろを振り向く。後ろには、デニーの母親であるクロエ・マクミランさんとその横には夫らしき男性が立っていた。
「初めまして、レッドフォード伯爵、レティシア様。挨拶が遅れて申し訳ありません。わたくし、デニーの父親のネルソン・マクミランと申します。」
アタシとリディアは頭を下げ、静かに挨拶をする。
「デニーのためお忙しい中、お越しいただいて大変光栄ですわ。デニーも最後に、レティシア様に会えて幸せ者です。」
涙を堪えるように、クロエさんが言葉を繋ぐ。肩を震わせている彼女に変わり、ネルソンさんが話を続ける。
「お噂は息子と妻から聞いています。息子の我儘に付き合っていただき、文通の相手になっていただいたと。何とも恐れ多い…感謝の念に堪えません。」
「いいえ、アタシは2人を見守っていただけですわ。…結局、お返しができなくて残念だと、娘も言っていました。」
「…だからね、今日、お返事のお手紙持ってきたの。デニーに宛てて。」
ほら、と言いながらリディアは小さな鞄の中から1通の手紙を取り出した。『それはそれが…大変ありがたいです…!』と言うネルソンさんの横で、クロエさんは声を殺してポロポロと泣いている。
「お手紙、後で棺に入れされてもらうね。私魔法が使えるから、祝福魔法も付与したの。デニーに届くといいな。」
_______。
しばらくして、棺周りの人が捌けて、アタシとリディアの2人だけになる。アタシは花を一凛添えて、リディアの方を向き直った。
「アンタの背の高さでは、棺に届かないかしら?抱っこしてあげるから、手紙用意しなさい。」
アタシはリディアの腰を持ち、腕に座らせるような姿勢にさせる。一瞬リディアが体勢を崩して、アタシの頭に腕を絡みつけるように抱き着いてきた。ファンデーションがリディアの服に付かないように気を付けつつ、アタシはリディアの姿勢を正させる。
「…私、遺体を見るの、何気に初めてかもしれない。」
「意外ね。国王のお葬式で祝福魔法をしたりしなかったのね。」
リディアは小さな声で、アタシに話しかけてくる。人のざわめきがあるとはいえ、周りに他人がいる状況だから、アタシはリディアの耳元で話しかける。
「アディ、ちょっと手前にしゃがめる?手紙、デニーに渡したい。」
アタシは言われた通り、少し中腰になってリディアを棺に近づけた。リディアはデニーの眠る顔の横に、手紙を差し込むように入れる。本当は手に持たせてあげたかったみたいだけど、他の人が入れた品物でデニーの手は埋め尽くされてしまっていた。
「デニー・マクミラン、あなたに聖女リディア・アッシュクロフトの祝福がありますように。」
リディアは両手で祈り、祝福を口にする。アタシもリディアを抱っこしながら目を閉じ、デニーに祈りを捧げる。
「さようなら、デニー。そしてありがとう。あなたのおかげで、呪いの手紙の件は進展したわ。」
アタシも棺で眠るデニーに声をかけ、リディアを床に下ろした。リディアの手を掴み、参列者の後ろのほうで待機する。
この国における葬儀の方法は2つある。
1つ目は、貴族の間で主流となっている土葬。故人に防腐処置を施した上で、棺のままもしくは故人のみを土に埋葬する方法。
2つ目は、庶民の間で主流となっている火葬。故人の棺を魔法の炎で燃やし、骨を専用の容器に入れて埋葬する方法。土葬ほどお金がかからないため、貴族でもこちらの葬儀方法を選ぶ層は一定数いる。
(様子を見るに、デニーは火葬で弔われるみたいね。)
出棺の時間まで、アタシとリディアは他の参列者に紛れて時が過ぎるのを待った。
_______。
帰り道、ポソッとリディアが口を開く。
「アディの腕が治って良かった。」
「そうね。移動車の運転もスムーズに出来るようになったし。」
アタシはハンドルに左手を押し付け、握ったり開いたりを繰り返す。
「私もアディに手紙書こうかな。」
「あら、ラブレターかしら。いつでも歓迎よ。」
「モンスタっち10個くださいって。」
「可愛くないわね!!」
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お葬式の雰囲気を引きずらないように、できるだけ明るい話を。
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