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始まりの日
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僕の名前はゼラ。13歳。
赤ん坊の頃に両親に捨てられ、王国三大都市の一つであるゼルヴァニアの教会に孤児として拾われた。
「ゼラの将来の夢はなあに?」
僕にそう問いかけてくる青い瞳の白髪を肩ぐらいまで伸ばした少女は同じ孤児であるリリア。リリアは小さい頃からおっちょこちょいで何度か危ないところを助けていたら僕の後ろをテクテクついてくるようになった。
「僕は英雄フリードみたいに強くなって悪い魔人を倒す! そしたら、この教会にいっぱい寄付して僕を捨てた両親を見返してやるんだ!」
「ゼラはすごいね!」
「でも、魔人は凶暴で危険な生き物よ。そのためにはもっと強くならないといけないわね」
「「シスター!」」
僕とリリアの会話に割って入ってきたのはこの教会で孤児達の面倒をみているシスターであり、僕たちみんなの母親だ。
「シスター、なんで魔人は女の人だけがなるの?」
リリアがシスターに問いかける。
「それはね、邪悪な心を持っているのが『魔女』と同じ女性だけだからよ。15年前、生活を豊にしようと人々に『魔力』という力を与えた魔女がいたの」
「それ知ってる! 赤目の魔女でしょ!」
とリリアが自信満々に答える。
「ええ、そうよ。でもね、生活を豊かにするという魔女の話は私たち人間を滅ぼすための嘘。なんと魔力は邪悪な力だったの。魔力の力に溺れた人間の心は穢れ、やがてその体は黒く染まり凶暴な魔人へと姿を変えていく」
「その魔人達を英雄フリードが倒して世界を救ったんだよね!」
僕は目を輝かせながら言う。
「ええ」
「私も魔人になっちゃうのかな」
リリアが不安な声を漏らす。
「大丈夫よ! 魔力は悪い心をもつ女性しか持てないから、リリアも清く正しい心を持っていれば絶対に魔人になることはないわ! だからちゃんといい子にしてるのよ?」
「うん!」
「リリアは将来何になりたいの?」
「私はそ、その、ゼ、ゼラの…」
僕の質問にリリアは何故か顔を真っ赤にしながらなかなか答えようとしない。
「僕の?」
その時、
「きゃーーーーーーーっ!!」
シスターが唐突に悲鳴をあげる。
口を押さえながらシスターが指差していたのはリリアの手。
その手の甲には黒い斑点模様ができていた。それは人が魔人に変わる兆候。
「えっ、う、嘘」
リリアが自分の手を見つめ、目を見開く。
「ち、違うんですシスター。き、きっと何かの間違い…」
弁明しようとリリアがシスターに手を伸ばす。
「近づかないで! 化け物っ!」
「きゃっ!」
リリアはシスターに突き飛ばされ床に倒れた。
「は、早く騎士様に報告しないとっ!」
助けを求めるリリアを無視しシスターが足早に教会を出て行く。
「ゼ、ゼラ、違うの、私は魔人なんかじゃ」
泣きそうな顔でリリアが僕にすがりよる。
心の中に疑念が芽生えた。
なぜ、リリアが魔人に?
魔力は悪い心をもつ人間しか持てない。だったら目の前でぷるぷると震え上がっているリリアが、小さい頃からずっと一緒に育ってきたドジだけど優しいリリアが魔人になるわけない。
「逃げよう!」
気づいたらリリアの手を掴んで教会を飛び出していた。
街には騎士がたくさんいる。逃げるなら森だ。
僕とリリアは街とは反対にある森へと駆け出した。
赤ん坊の頃に両親に捨てられ、王国三大都市の一つであるゼルヴァニアの教会に孤児として拾われた。
「ゼラの将来の夢はなあに?」
僕にそう問いかけてくる青い瞳の白髪を肩ぐらいまで伸ばした少女は同じ孤児であるリリア。リリアは小さい頃からおっちょこちょいで何度か危ないところを助けていたら僕の後ろをテクテクついてくるようになった。
「僕は英雄フリードみたいに強くなって悪い魔人を倒す! そしたら、この教会にいっぱい寄付して僕を捨てた両親を見返してやるんだ!」
「ゼラはすごいね!」
「でも、魔人は凶暴で危険な生き物よ。そのためにはもっと強くならないといけないわね」
「「シスター!」」
僕とリリアの会話に割って入ってきたのはこの教会で孤児達の面倒をみているシスターであり、僕たちみんなの母親だ。
「シスター、なんで魔人は女の人だけがなるの?」
リリアがシスターに問いかける。
「それはね、邪悪な心を持っているのが『魔女』と同じ女性だけだからよ。15年前、生活を豊にしようと人々に『魔力』という力を与えた魔女がいたの」
「それ知ってる! 赤目の魔女でしょ!」
とリリアが自信満々に答える。
「ええ、そうよ。でもね、生活を豊かにするという魔女の話は私たち人間を滅ぼすための嘘。なんと魔力は邪悪な力だったの。魔力の力に溺れた人間の心は穢れ、やがてその体は黒く染まり凶暴な魔人へと姿を変えていく」
「その魔人達を英雄フリードが倒して世界を救ったんだよね!」
僕は目を輝かせながら言う。
「ええ」
「私も魔人になっちゃうのかな」
リリアが不安な声を漏らす。
「大丈夫よ! 魔力は悪い心をもつ女性しか持てないから、リリアも清く正しい心を持っていれば絶対に魔人になることはないわ! だからちゃんといい子にしてるのよ?」
「うん!」
「リリアは将来何になりたいの?」
「私はそ、その、ゼ、ゼラの…」
僕の質問にリリアは何故か顔を真っ赤にしながらなかなか答えようとしない。
「僕の?」
その時、
「きゃーーーーーーーっ!!」
シスターが唐突に悲鳴をあげる。
口を押さえながらシスターが指差していたのはリリアの手。
その手の甲には黒い斑点模様ができていた。それは人が魔人に変わる兆候。
「えっ、う、嘘」
リリアが自分の手を見つめ、目を見開く。
「ち、違うんですシスター。き、きっと何かの間違い…」
弁明しようとリリアがシスターに手を伸ばす。
「近づかないで! 化け物っ!」
「きゃっ!」
リリアはシスターに突き飛ばされ床に倒れた。
「は、早く騎士様に報告しないとっ!」
助けを求めるリリアを無視しシスターが足早に教会を出て行く。
「ゼ、ゼラ、違うの、私は魔人なんかじゃ」
泣きそうな顔でリリアが僕にすがりよる。
心の中に疑念が芽生えた。
なぜ、リリアが魔人に?
魔力は悪い心をもつ人間しか持てない。だったら目の前でぷるぷると震え上がっているリリアが、小さい頃からずっと一緒に育ってきたドジだけど優しいリリアが魔人になるわけない。
「逃げよう!」
気づいたらリリアの手を掴んで教会を飛び出していた。
街には騎士がたくさんいる。逃げるなら森だ。
僕とリリアは街とは反対にある森へと駆け出した。
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