盾の騎士は魔法に憧れる

めぐ

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火の竜の王との邂逅

出発

 #フェンス


  火竜の峰へ向かう日となった。

  早朝に炭鉱街への街道に繋がる南門前に集合する。
 
  メンバーは儂の他に、騎士団から二人、魔結晶の選定を行う要員として王立魔道院から魔法使いが一人、王都守護隊から志願者を二人の計6人である。

  騎士団の二人は初級の治癒魔法を使えるそうで回復要員も兼ねている。魔道院の魔法使いは山登りに不安が募る如何にも研究者といった風貌だ。大丈夫だろうか・・・。
  守護隊からは2番隊隊長のアベルと3番隊副隊長のジョルジュ。なんでも各隊の隊長副隊長の6人で誰が行くかを賭けて勝負したらしい。勝負の内容は飲み比べだそうだ。誰が言い出したかは知らないが任務の重要性を理解しているのか?戻ったら訓練量を倍にして気合いの入れ直しだな。
  アベルはスピードを活かして戦う軽戦士。ジョルジュは3番隊隊長のゴードンと同じく弓使いである。
  まずまずバランスの取れた編成だとは思うが少し魔法要素が少ないか。

  まぁ火竜の討伐が目的ではない。問題はないだろう。

  そして見送りの面々が横一列に並んでいる。 

  まずは国王であるフリオニール。その背後には護衛の若い騎士が二人。よく儂の屋敷に来るときに連れてくる二人だな。その隣にマリアとユリア、それにヒルダも来ている。

「フェンス。お前なら何も心配はないが皆を宜しく頼む」
「ああ。任せておけ。フリオニールこそ俺が留守の間、街のことは頼むぞ」

  魔結晶を手に入れて戻るまで5日程だろう。あれだけの規模での襲撃を防いだので、魔人達もすぐには仕掛けては来ないと思うが絶対ではない。留守の間は騎士団と魔法ギルド員、マリア経由で神殿騎士団にも王都の防衛をお願いをしてある。守護隊の指揮もカインとゴードンがいれば大丈夫だろう。

「マリアも宜しく頼む」
「ええ。留守のことは心配なく。アナタは安心して任務を遂行してきてください」 

  そもそもマリアがいれば大群でもない限り心配などまったくないと言っていい。マリアの使う聖結界に囚われれば魔王かその側近クラスの魔人でもなければゴブリン並に弱体化するからな。

  魔人に産まれなくて良かったと心から思う。

「おじいちゃん、いってらっしゃい。ホントはあたしも行きたいけど・・・」
「フェンスさん。お気をつけて」

「ああ、行ってくるよ。ヒルダ、ユリアを宜しく頼む」
「は、はいっ!」
「ユリアは儂が留守の間も早朝の鍛練とヒルダ先生の授業を真面目にやるようにな。帰ったら冒険者登録に行こうか」
「うん!」

   火竜の峰は文字通り火竜の住む山。ユリアには色々と経験を積ませるつもりだが流石に今回はまだ早い。戻ったら冒険者登録を済ませ近隣のゴブリン退治辺りから始めるとしよう。

  見送りの面々に挨拶を済ませ二頭引きの大型馬車に乗り込む。帰りには大きな魔結晶を載せるため余裕があるものを用意してもらっている。6人で乗り込んでもかなり余裕だ。これは快適な旅になりそうだ。

  徐々に手を振るユリアが見えなくなる。大人しく留守番をしてくれるようだ。一緒に行きたいと言ったのを強く否定したときは、昼も摂らずに部屋に籠り言い過ぎたかとも思ったが、外出して戻ってからはやけに機嫌が良かった。出発の際にごねるかと危惧していたがそれもなく笑顔で見送りをしてくれている。

  フリオニールも「久々に共闘と行こうか!」などと狂言を吐いていたがマリアの一睨によって発言を撤回していた。 王の権限で同行者としてねじ込んでくるかとも思ったが、こちらも大人しく見送りをしていた。

  どちらとも若干態度が怪しかったが流石に単独行動まではしないだろう。

  既にもう王都は見えなくなり進行方向遠くに炭鉱街がある岩山が朧気に見える。ハリルの散歩や守護隊の訓練等で王都の外にも出ていたし、ごく稀にフリオニールの依頼で隣街やこれから向かう炭鉱街などにも出向いていたが、こうやってパーティを組んでの遠出はあの旅以来になる。

  年甲斐もなく少し弾む気持ちを周りに気付かれないよう抑える。同乗の面々はどうだろうか。何気なく馬車内を見渡してみると何故か全員少年の様な目で儂を見ていた。まさか気付かれたか?

「な、なんだ?儂はお、落ち着いてるぞ。確かにこうやって外に出るのはかなり久しぶりだが、儂も一応は冒険者だっからな・・・」
「総隊長?どうしました?具合でも?」
「い、いや!どこも悪くはない」

  気づかれては・・・いないようだな。

「そうですか。しかし、今回こうして同行出来るのがとても光栄です!普段から総隊長の武技や指揮の素晴らしさには感服するばかりですが、いつもと違う冒険者としての総隊長のお姿を間近で見れるとは・・・。感無量です!」

  隣に座っていたアベルがぐっと身を寄せてくる。目には涙まで浮かべている。まぁ確かに守護隊の面々とこういった機会はないからな。

「総隊長は弓の腕も素晴らしいとゴードン隊長から聞きました。もし機会があれば拝見させて頂ければと思います」

  アベルの背後からはジョルジュ。3番隊は隊長のゴードンが弓の名手なこともあり弓使いの割合が多い。訓練の際に儂が弓を射ることもあるがジョルジュは入隊してまだ三ヶ月程と浅く、見せたことはなかったか?
  しかし、隊長の人選は儂がしているが隊内の役職や役割は各隊の長に任せている。たった三ヶ月で副隊長に任命された実力を考えると儂などよりも弓の腕は上なのでは?と思うが。

「フ、フェンス殿!改めてご挨拶を。第3騎士団第7小隊所属ロディと申します」
「同じくルークです。魔王討伐の伝説の英雄の戦いを学ばせて頂きたいと思っております」

  儂の正面に座る騎士団の二人が会話の流れに乗って話しかけてくる。二人とも少し緊張した顔付きしている。

「ああ。宜しく頼む。だが、儂から学ぶことなどないだろう?君達の近くにはより英雄たる勇者王がいるではないか」
「いえ!勿論陛下は王としても戦士としても素晴らしいお方ではありますが、フェンス殿もまごうことなき英雄のおひとり!我らが学ぶことが尽きることなどありません」

「そ、そうか。まぁあまり気負わずにな」

  なかなかに熱い志しを持った二人のようだ。騎士団にはこういった考えのものが多いのだろうか……。滅多に城へ行くことはないが騎士団の詰所などにはあまり近付かないようにしておこう。とても疲れそうだ。
 
  その隣、静かにだが分厚い眼鏡越しの視線をしっかりと儂に向けている魔道院の魔法使いに目をやる。

 「君も宜しく頼むよ。ええと、名前はなんといっただろうか・・・」

  儂がそう尋ねると魔法使いの口元がニタッと笑う。

「ル、ルーテと申します。こちらこそ、よ、宜しくお願い致します。フェンス様っ」
「さ、様っ?!」
「ええ♪モデル──い、いえっ!英雄のお一方、そう呼ばせて頂くのが当然かと・・・」

  ん?何かおかしなことを言わなかったか。

 「い、いや。そんなに大層なものではないから自然にしてくれないか。くすぐったいというかなんというか・・・」

  儂のことをそう呼ぶものはほとんどいない。家族と昔からの仲間に知りあい、後は守護隊の面々くらいとしか普段は接しない。皆互いに気の知れた仲であるため気安いのもあるだろうが、儂が落ち着かないのでそうお願いをしている。

「分かりました。では自然に呼ばせて頂きます。フェンス様」
「は、ははっ・・・」

  身体つきが細いとは思っていたが女性だったか。眼鏡とやたらサイズの大きいローブのせいもあって気づかなかったな。王立魔道院の代表であるため実力は問題ないだろうが、なかなか変わった人物のようだ。

「フェンス様のご活躍をぜひとも取材──い、いえっ!拝見させて頂きたいと思っております」

  また何かおかしなことを言った気がしたがあまり気にしないようにしておこう。

  さて、炭鉱街への到着は夜。一泊して翌朝に火竜の峰の麓にある村まで馬車で移動し、そこからは徒歩になる。

  休めるうちに休んでおくとしよう──
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