召喚されたらしい俺は何故か姫扱いされている【異世界BL】

ネオン

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本編

ポワソン少年はチャッピーに似ている

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 セインと話していて、俺が今まで無事に生きてこれたのはセインが護ってくれていたからだということは分かった……。

 まぁでも、それは俺が精霊姫じゃなかったら捲き込まれていなかった事件ばっかりだとは思う。
 でもセインは、俺が姿を見れなくなってからもずっと側に居てくれたっていうのは嬉しかった。

 この訳の分からない異世界での俺の味方はセインだけだ。
 セインには、俺の失った人生やら家族やらへの喪失感や悲しみは理解できないみたいだけど、それでもずっと一緒に居てくれたコイツだけが頼りだ。

 俺が王子に怒った時も王子に攻撃してくれたしな。
 まぁ結界で防がれていたのは残念だったけど、目の前で怪我とかされたらそれはそれで嫌だったし結果オーライだろう。

 セインと色々話していて、もう一つ気になることを訊ねる。
 ここが魔法や魔力のある世界だと言うのなら、俺ももしかすると魔法を使えたりするのか?
 だって先代の精霊姫の子孫たちはすごい魔力持ちだったって言ってたよな?
 そしたら精霊姫自身も凄い魔法が使えるんじゃね? って思うじゃん。普通は。

 期待してたのにセインの答えはNO……。

 何でだよ!
 魔法で溢れたこの世界で魔法が使えない俺ってめっちゃ無力じゃん……。
 目に見えて落ち込む俺を見てセインは、今まで通りいつも自分が護るし、俺が望むことはある程度は魔法で叶えてくれるって言ってくれた。

 セインは俺を甘やかすつもりなのか?
 見た目幼児な癖にめっちゃ男前じゃないか……。
 ヘタレの主人公を助けるロボットみたいだなと苦笑して、某国民的アニメの話題を出したら、セインには伝わらなかったらしく、真顔で「空を飛びたいなら風の魔法があるよ」と言われた……。
 お前ずっと俺と一緒にいたんだよな?
 俺は毎週欠かさずそのアニメを観ていたのに、セインは観てなかったのか?
 セインはどうやらあっちの世界の文化には染まっていないらしい。
 精霊と人間ってやっぱり色々違うんだなとカルチャーショックを受ける。

 話し込んでいるうちに窓の外が薄暗くなってきんだけど、セインが部屋にあるランプに自然と明かりを灯してくれた。
 これは魔力で明かりを点ける魔具という物らしい。

 ということは……言うまでもなく魔力を持たない俺には使えない物なのだろうか。

 自分の無力さに肩を落としていると「オイラが点けるから大丈夫~♪」とニコニコした顔で言ってくれるセインが頼もしく見える。
 この世界では魔力に頼らないといけないことも多くて、俺はセインなしでは到底生きていけそうにない――。

 トイレだって水洗に見えて水洗じゃなく魔力で流してるらしいんだ。
 流石にトイレまでセインの世話になるのは嫌だなと、どうにかならないか悶々と悩んでいると、部屋のドアがノックされた。
 でも返事なんかしない――。

 入りたきゃ勝手に入れば良い。

 何度かノックされたけど、俺が答えることはなく、痺れを切らしたのか声が掛かった。
 どうやら声の主はあのムカつく王子じゃなくて、お茶を用意してくれた執事さんらしかったから仕方なく「どうぞ」と返事をする。

 執事さんの用件は、食事の準備が出来たから食堂に来て欲しいということらしい。

 そういえばお腹が空いたな……。
 学校帰りに買ったお菓子とジュースを楽しみにしてたのにな……。
 食べ物に執着はない筈だったけど、これはしばらく引き摺りそうだ。

 執事さんに連れられて食堂に行くと長いテーブルの端に王子が座っていた。

 まさかコイツと一緒に食べないといけないのか?
 物凄く嫌だ……。

 そんな俺の心境を知らない王子は、やたらとキラキラした笑顔でこちらを見てくる。

 見るな! 減るだろ! 

 俺は渾身の憎しみを籠めて睨み付けるが、なぜか王子は顔を赤らめた……。

 もういい! 俺は王子なんぞ無視してご飯を食べるぞ!
 そんで食べ終わったら速攻部屋に戻る!

 執事さんに促されて席に着くと、俺はさっさと食事を始めた。
 一般市民の俺が作法なんて知るわけもなく、好きに食べさせてもらった。
 執事さんは何か言いたそうだったけど、王子が俺の好きなように食べさせてあげて欲しいと言っているのが聞こえた。
 しかし、俺はちょっと優しくされたくらいじゃ絆されたりしないからな!
 人拐い王子の癖に――。
 俺はお行儀悪くガツガツとかっ込むと「ごちそうさまでした!」と大声で言ってさっさと食堂を出た。

 一人で足早に歩いていると広い建物の中で迷った。
 でも俺には頼もしい相棒がいる。
 セインに元居た部屋への帰り方を聞くと、無事に元の部屋まで連れて行ってくれた。
 セインはナビも出来るらしい。 
 超優秀だ!

 部屋に戻ると一人の少年がいて、俺に気付くと慌てたように駆け寄ってきた。

 おいおいおい、今度は何だよ?
 不信に思っていると、少年は俺の前に跪いて、これから俺の身の回りの世話をする専属侍従になったと言った。

「お初にお目にかかります。ポワソンと申します。精霊姫様のお世話をさせていただけるなんて、至極光栄でございます!! 何でもワタクシにお申し付け下さい姫様!」

 10才位にしか見えない少年は、俺の手を取ってそう言うとキラキラした目を輝かせた。
 その背後には見えない尻尾がブンブン振られているようで、忠犬っぽくて少しだけ和んだ。

 でも、姫って呼ばないで欲しいんだけど……。
 俺がそう言うとポワソン少年は「姫様をお名前で呼ぶなど恐れ多くて出来ません。姫様は姫様ですので、呼び方はご勘弁ください」と、これまた見えない犬耳を垂らして尻尾を股ぐらに巻き込んだような表情で言う。
 そんな顔をされてしまったら、受け入れざるを得ないよな……。

 俺、犬に弱いんだよ……。
 実家でも飼ってたし、犬は態度が分かりやすいし従順で好きなんだ。
 母ちゃんが仕事で遅い時なんかは、いつも側にいてくれて寂しさを忘れさせてくれた――。
 ゴールデンレトリバーの『チャッピー』はとても賢かった。
 俺が生まれる前から家に居たらしくて、ずっと兄弟の様に育ってきた。
 でも俺が中学に上がる前に死んじゃって、凄く悲しかったのを思い出す……。

 初対面で失礼かもしれないけど、ポワソン少年はチャッピーに雰囲気が似ている気がする。
 ポワソン少年だけは信じても良いかもしれない。
 簡単に絆されてしまう俺って、自分でも呆れるくらい単純だな。

 ご飯も食べたし、後は風呂に入ってさっさと寝たいかな。

 元の世界とは使い方が違うから、ポワソン少年が分かりやすく丁寧に説明してくれた。
 それから当然のようにポワソン少年が、俺の体を洗うと言うからそれは丁寧に断った。

「高貴な方は侍従に全てさせるものですよ」
 
 ポワソン少年はそう言うけど、日本人の感覚としては無闇矢鱈に他人に肌を見せる物じゃないと思うし、18年間自分でやってきたんだから大丈夫だと譲らなかった。

 しかしここでも魔力が必要らしく、シャワーを出すのも魔力なんだって――。
 お風呂一つでもセインに頼るしかないのか俺は?
 でも、ポワソン少年に見られながら入るよりはセインの方がマシだよな……。
 絶望感に苛まれながらぼんやりとそんなことを考えていると、ポワソン少年が掌サイズの石をくれた。
 何と魔力がなくてもこの石を使えば魔具を使うことが出来るらしい。
 沢山の魔力を籠めたこの魔石があれば一人でトイレを流すことも出来るって!

 やったぞ!
 トイレ問題が無事に解決した!
 自分で思っていたよりも俺はトイレのことを気にしていたみたいで、限定スイーツの最後の一個をゲット出来た時の様な晴れ晴れとした気持ちになった。

 嬉しくなった俺は、早速魔石を使ってシャワーを浴びることにした。
 温かい湯を浴びると体が芯から解れてホッとした。
 ホッとしたからか頬を涙が伝った気がするけど、これはシャワーの水滴だと自分に言い聞かせる。

 母ちゃんは俺のことを忘れてしまったんだな……。
 俺はマザコンではないと思うけど、父ちゃんが死んでからずっと二人でやってきたんだ。
 母ちゃんはこれから一人でどうやって生きて行くんだろうか。
 俺は最初から居なかったことになっているのなら、父ちゃんが死んだ後さっさと再婚でもして、新しい家族でも作ってるのかな?
 母ちゃんが俺のために色々なことを犠牲にしてきたことは知ってる。

 ――俺が居なかったら母ちゃんは自分の人生を謳歌出来るよな?

 ホームシックってやつなのか、二度と戻れないって聞かされてからずっと胸がザワザワしている。
 こんな時は何も考えずに早く寝るに限る。
 今日はもう寝よう。

 お風呂から出るとポワソン少年が用意してくれた服に着替えた。
 薄い生地で出来た長袖ワンピースの様な服は、足がスースーしていて落ち着かない。
 ズボンはないのだろうか……?

 下着も薄い生地のパンツだし。

 もっと男らしい物はないのかポワソン少年に聞くけど、俺用の服はこれらしい……。
 不満だけど今日はもう寝るだけだしと諦めてベッドに入った。

 ポワソン少年が「ごゆっくりおやすみください」って言うから「おやすみ~」と声を掛ける。

 ポワソン少年はこの部屋にある侍従の部屋にいるから、何かあったら枕元のベルを鳴らして下さいと言っていた。
 寝るだけなんだから何にもないだろうと思ったけど、色々と有りすぎて精神的に疲れていた俺の意識はすぐに途切れて、いつのまにか眠りに就いていた。



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