召喚されたらしい俺は何故か姫扱いされている【異世界BL】

ネオン

文字の大きさ
12 / 106
本編

☆朝の攻防戦だけではなくなった②☆

しおりを挟む
王子の口の中に放ってしまい、慌てて起き上がると吐き出すようにお願いした。
 なのに王子は、ニッコリと笑うと、ゴクリと喉を鳴らして飲み込んだ……。

 何とも色っぽい仕草にドキリとしてしまう。
 信じられないことをされたというのに、思わず見惚れてしまった。

 ハッと我に返った俺は、何で飲んだのか抗議する。
 だってありえないだろう?
 一度ならず二度までも……。
 飲むのは上級者向けの行為だろ!?

「姫の蜜は大変美味しゅうございました」

 有り得ないことに現実逃避しかけていた俺を、現実に引き戻す様に発せられた言葉は、やはり普通ではなかったし、ましてやうっとりとした表情で言うことでもないだろう……。

 乱れた息を整えて再び抗議する。
 そもそも何故俺は王子にフェラをされていたのか……。
 こんなのは強姦と一緒だろ。
 寝ているところを勝手にだから睡姦か?
 いや、そんなことはどうでもいいな。
 寝ているどうこうの前に、同意のない時点で犯罪だ。

 ようやく纏まった頭をフル回転させて抗議すると、王子はシュンと落ち込んで、言い訳を始めた。

 曰く、近頃公務が忙し過ぎて、やっと出会えた運命の精霊姫様おれとなかなか一緒に過ごすことが出来ないというのに、ロイやポワソンとはかなり打ち解けている。
 更におれを害したキャサリンとは、まるでずっと昔からの知り合いのように仲良くしていると聞いて、自分だけが取り残された気分になった。
 そこで、他の者が出来ない伴侶にのみ許される特権として、性的な触れ合いをしたくなったらしい。
 これまでもそんな気持ちを、こっそりおれを抱き枕にすることで抑えてきたけど、とうとう抑えが利かなくなってこの行動に出たと――。

 疎外感を感じていたと……。
 だからといって、いきなりそんなことをされて、はいそうですかってなかったことには出来ないだろ。

 誰とも付き合ったことがないし(セインガードのせいだけど……)フェラなんて初めてだったし……。
 恥ずかしいし、居た堪れないし、気持ちがザワつく。

 とにかく王子にはすぐに離れてもらって、俺は下着を履き直した。

 チラリと王子をみれば、ズボンの上からでも王子自身が膨れ上がっていることが分かるけど、それは見なかったことにした。

 ――王子は俺のを咥えて興奮出来るんだな……。
 精霊姫って言ったって俺は男だから、どこか他人事なところがあったけど、王子は本当に俺のことをそういう対象に見ているんだ。

 愛してるとか好きだとか、食後に別れる度に囁かれている。
 でもそんなのは、イタリア人が女性を見たら取り合えず口説くみたいなサービス精神的なことだと思っていたんだ。
 だから、こうやって性の対象と思われていることに酷く驚かされた。

 でも実際問題、男同士で結婚しても子供なんて出来ないんだから、伴侶は俺ではなく、女性を探すべきだ。
 第一王子という身分から、世継ぎを残すことは義務なんだろうし。

 とりあえず無理矢理とはいえ、王子の口の中に二度も吐精してしまった罪悪感もあるし、こんな夜中に話し合いが進むとも思えないから、王子には自分の部屋に戻ってもらうことにして再び眠りに就くことにした。

 目覚めると、自分の部屋に戻るように言って部屋を後にするのを確認したはずの王子が、当然のように俺の腰に抱き付いて眠っていた……。

 昨夜のことも相まって、ムカッとした俺は、思わず王子の頭をはたいた。

「おはようございます姫」

 叩かれて目が覚めた王子は、いつも通りニッコリキラキラスマイルだけど、俺は怒っているんだぞ?
 自分が起こられることをしたという自覚がないのか、開き直っているのかは分からないけど、俺は怒っていいはずだ。

「早く離れろ!」

 朝から怒鳴り声を上げるのは気分的にも嫌だけど、まったく離れる気配のない王子に腹がたち、冷たく言い放った。
 しかし今日の王子は執かった……。

 離れろって言ったのに、巻き付いている腕に力を籠めて、不覚にもギュッと王子の胸に抱き込まれてしまった。
 抵抗しようにも、力が強すぎて上手く抗うことが出来ない。
 俺がもぞもぞと抵抗している間に、王子は余裕そうに俺の頭に顔を埋めると、そこで思いっきり息を吸い込んで匂いを嗅がれた!

 信じられない!

「や、やめろよ!」

 狼狽えながらもなんとか声抗議の声を上げるけどやめてくれない……。
 抜け出そうと身を捩れば捩るほど、益々抱き締める腕の力は強くなる。

 スーハーと生暖かい息が頭にかかってむず痒く鳥肌が立つ。
 男の頭の匂いなんて、絶対いい匂いではないはずだ。
 そんなに夢中になって嗅がれるほど良いものではないし、気色悪いから速やかに止めて欲しい。

「はぁ……。姫の香りはどれも私を魅了して止まないのですね……。本当はずっと味わっていたい姫の分身も、精の味も香りも、柔らかい黒曜石の髪や頭皮から香る香りも……たまらない……」

 ずっとだけど、発言がいちいち変態臭いのも止めて欲しい。
 夜中のことを不意に持ち出されて赤面してしまう。

 このままで良い訳がない。
 俺だけで対処出来れば良かったんだけど、今日は無理そうだ。

「ポワソン! 助けて!」

 初日以来ポワソン少年を頼ることはなかったけど、今日は俺の負けだ……。
 こんな場面を他人ポワソンに見られるのも恥ずかしいけど、これ以上この変態と一緒に居たら頭がおかしくなりそうだ。

 部屋の隅に気配を消して控えていたらしいポワソン少年は、俺が助けを呼ぶとスッとやってきて、王子の今日の予定を読み上げた。
 そして王子の予定の中に僅かな空き時間があることを見付けると、その時間に姫様おれとお茶が出来るように準備をしておきますって言っていた……。

 いや、俺の意思はさ?

 ポワソン少年からの提案を聞いた王子は、その空き時間おれと過ごす時間を少しでも長く取るために、サッとベッドから降りると部屋を後にした。

 離れてくれたから結果オーライなのかもだけど、何だか腑に落ちない……。

 しかもその日から、度々王子に性的なちょっかいを出されることになって、俺は更に悩まされることになった。

しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! できるかぎり毎日? お話の予告と皆の裏話? のあがるインスタとYouTube インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...