25階。このふざけたゲームを終わらせて

緋島礼桜

文字の大きさ
40 / 40

残り∞時間∞分∞秒

しおりを挟む

 1テイク目。
 久々のツムギに浮かれていた。
 すると「ツムギは探偵役に相応しくない」と揉め始めたのをきっかけに、場の空気は一気に疑心暗鬼へと変わっていった。
 あれよあれよという間に深夜、狂信者たちの暴走で乱闘状態に。
 そして、ツムギが斬られてNG。



 2テイク目。
 まずは狂信者対策が必要だ。
 警備員のタカシミズの助言で、参加者たちの性格やクセを記録していくことにした。
 メモにはスマホを使用。どうやら他の参加者のデータはリセットされるが、私のスマホだけは保持されるらしい。
 ……それでも、今回もツムギを守りきれずNG。



 3テイク目。
 グレイに無理やり「探偵役任命の手紙」を用意させ、ツムギの正当性を確保。
 ニコとイコシが親子だと知り、アマツキが格闘技経験者であることも把握。
 情報収集のため単独行動していたら、ツムギがクルミのヒステリックに巻き込まれてビルから転落。NG。



 4テイク目。
 ツムギだけでは不測の事態でNGになってしまう。
 わたしが助手役として付き添うことにした。
 クルミの件はタカシミズに任せる。
 それでもセイランに負傷させられNG。



 5テイク目。
 セイランとは事前に打ち解けておく必要がある。
 ツムギが最初に接触できるよう配置を調整。
 計画通り少しは打ち解けたが、まさか彼が爆弾の在り処を当てるとは……。
 そのせいで興奮したタカシミズを制止しようとしたセイランと共に、ツムギが便器に頭を打ち付けてNG。



 6テイク目。
 前回の失敗を踏まえて慎重に進めるが、今度はイコシがツムギを負傷させてNG。



 7テイク目。
 イコシとニコの関係を気づかせるためにも、タカシミズの存在が邪魔。
 なぜかゲーム開始時に羊羹を食べていたようなので、グレイに頼んで下剤を仕込んだ。背に腹は代えられない。
 だが、クルミのヒステリックを抑えきれずNG。



 8テイク目。
 リテイク前にクルミの所持品を調べると、シンヤにかなり惚れ込んでいることが判明。
 その弱みを利用して大人しくさせることに成功。
 イコシたちの暴走はツムギ、ニコ、アマツキで抑えられた。
 だが、ワカツキとブレツが見つからず。ツムギは自分の推察に自信を持てず時間切れでNG。



 9テイク目。
 ツムギの優しすぎる性格がどうしても裏目に出る。
 犯人役のヒヰロは矛盾点をいくつも漏らしていたのに、25人全員から聞き取らないと自信が持てないようだ。
 今回もワカツキとブレツを発見できずNG。



 10テイク目。
 まさかのヒヰロから、秘密の部屋のヒントを得る。
 彼女を憎んでいたが、元を遡ればわたしの責任でもある。そう思うと少しだけ、彼女を許せた気がした。
 だが油断していたせいで、ブレツの不意打ちによりツムギが負傷。
 致命傷ではなかったが、制限時間までに意識を取り戻せずNG。



 11テイク目。
 ツムギを守るため、今度はわたしが真っ先に秘密の部屋へ飛び込む。
 ブレツはタカシミズに任せて回避、互いに重傷を負った。
 だが、犯人当てで”シガ”と答えてしまい、彼が暴発したところで時間終了。NG。



 12テイク目。
 タバコを吸うから同行を拒んでいたが、シガを最初から同行させる必要があるようだ。
 禁煙を約束させたおかげで彼の疑心を避け、犯人をヒヰロと無事特定。
 最終ステージへ進むも、ツムギは迷った末に自分の線を切ってNG。
 ……でも、順調に進んでいる。ツムギに「わたしの線」を切らせるまで、あと少し。 



 13テイク目。 
 最終ステージでわたしの線を切るよう訴えたが、信じてもらえなかったのか、またツムギの線を切ってしまってNG。



 14テイク目。
 最終ステージでわたしの線があるという違和感をちゃんと説明したのに、ツムギは切ってくれなくてNG。
 ……どうして、ツムギはわたしを切ろうとしないの?



 15テイク目。
 最終ステージで同じく説得をしたが、またツムギは切ってくれなくてNG。
 今回の変化といえばギンジロウがクルミに離婚を申し出たことか。



 16テイク目。
 最終ステージで真っ先にわたしの線を切るよう叫んだ。
 だが、切ってくれなくてNG。
 今回の変化は、ツムギが人知れず落ち込んでいたことだろうか。
 これくらいなら、何度だって励ましてあげるよ。



 17テイク目。
 少しアプローチを変えてみることにする。
 シガやタカシミズにさくらの話題を出しておいて、最終ステージにわたしの線に気付いてもらう。
 二人共わたしの線を切るよう説得したが、結局ツムギは切ってくれなくてNG。



 18テイク目。
 もっと説得させる人数を増やした方がいいかと思って模索。
 だが、最終ステージでエリカの線がないことに気付いたクワキノの指摘でわたしが疑われる。
 混乱回避のため、ツムギは自分の色を切ってしまいNG。



 19テイク目。
 説得する人を変えても意味がない。やっぱりわたしがなんとかしないと。
 わたしが如何に賢い子かをアピールして、最終ステージに挑む。
 あれこれ説得したが、切ってくれなくてNG。



 20テイク目。
 まだまだ20テイク。しかし気晴らしにツムギからわたしとの馴れ初めを聞く。
 こんな風に思っていたのかと、新たな発見が嬉しい。
 今回の結果も、最終ステージで説得できずNG。



 21テイク目。
 タカシミズとブレツの乱闘に変化。ブレツが目に見えて手加減していた。
 リテイクによる既視感やトラウマのせい、ということか。
 今回の結果も、最終ステージで説得できずNG。



 22テイク目。
 ナノハがムラタに対して謝罪。続くリテイクが知らぬ間に彼女の罪悪感を助長させたのか。
 今回の結果も、最終ステージで説得できずNG。



 23テイク目。
 今更ながら、どうしてグレイは参加者に紛れ込んでいるのか聞いた。
 「間近で見ないと迫力がないだろう?」と返答。聞くだけバカだった。
 彼にだけ爆弾がないというのが、余計に腹が立つ。
 今回の結果も、最終ステージで説得できずNG。



 24テイク目。
 もっとスピリチュアルな攻め方をする。
 「わたしには超能力がある」と言及しておき、最終ステージで誘導する。
 だが、ツムギは切ってくれなくてNG。



 25テイク目。
 今度は「カンの鋭い少女」という設定で挑む。
 だが、今回の結果も最終ステージで説得できずNG。
 ツムギは「わたしの線だけは切れない」と言った。
 その言葉が嬉しくて、苦しくて、どうしようもない。








――カッチン!



「……これで25テイク目か。君も頑張るねえ」

 グレイが首を鳴らしながら言う。
 その声音には、どこか退屈そうな響きがあった。

 「まだたったの25テイク目でしょ? わたしは何千、何万回だってやり直すわよ」

 そう言い切ると、彼は肩を竦める。

 「ま、そうでなくちゃ楽しくない。……でもさ、本音を言えば、ツムギを間近で見続けられるこの時間が、少しは名残惜しいんじゃない?」

 私は鋭く睨み返した。

 「そんなわけないでしょ」
 「でも、彼を助けたり、推理を披露するツムギはまさに主役! 主人公! そんな彼を特等席で永遠に見ていられる――それってゲームクリアより、最高の幸福なんじゃないかい?」

 カチンコで肩を叩きながら笑うグレイ。


 確かに今のツムギは、”さくら”のときには見せなかった顔をたくさんわたしに見せてくれる。
 それがとても愛おしくて、純粋に嬉しいと思ってしまう自分がいる。
 ……けれど、わたしは迷わず首を振った。

 「思わないわ。だって、ツムギにはもっとたくさんの脚光を浴びるはずの――未来で輝いてほしいから」

 まだたったの25回だ。
 そう簡単にわたしの心は揺らがない。
 するとグレイは口角を釣り上げ、背を向ける。

 「それならいいんだ。ワタシとしても、君がこの惨劇ゲームをどんなラストに覆すのか……ちゃんと見届けたいからね。ま、頑張ってよ」

 それが本心かどうかもわからないまま、彼は去っていった。
 わたしはリテイクのため、その場に横たわる。








――カッチン!



 ……選択は一度きりしかない。と、誰かは言う。
 けれど、やり直すことだって可能なんだ。
 少なくとも、ここではそれが許される。
 だからツムギが”正しい選択”を掴むその瞬間まで――わたしは、絶対に諦めない。何度だってやり直す。
 たとえそれが、ツムギにとっての“後悔”という選択だとしても。



「ツムギ……25回も、このふざけたゲームを終わらせてくれてありがとう……」 

 小さく呟いた声が、震えてしまう。
 それでもわたしは、立ち止まらないから。
 
「今度こそ、ちゃんとわたしが終わらせてあげるから。だから――」



「え、何か言った?」
「ううん。……よろしくね、お兄ちゃん」








  CAST

 白旗 紡麦
 蛇ノ目 エリカ

 志賀 朝士 
 高清水 四半
 石紅 英茉
 享和 数狐
 菅原 天月

 嘉奈 一恋
 新井 鳶斗
 草薙 二煌
 油井 菜乃花
 羽紫 菫
 御後 珊瑚

 佐藤 銀治郎
 佐藤 胡桃
 審矢 壱時

 伊興 遍陀金
 加勢 晴嵐
 村田 菊仁
 鬼塚 恵

 桑木野 萬雁
 若槻 萱造
 武烈 藍鉄

 五十風 ひゐろ
 梅影 さくら

 グレイ・バンサンキエム








 25階、このふざけたゲームを終わらせて

    ―― 完 ――


しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。

設楽理沙
ライト文芸
2026.1.4 73話見直した際、瑛士の台詞《本音/懺悔》を加筆しました。😇 ☘ 累計ポイント/ 200万pt 超えました。ありがとうございます。 ―― 備忘録 ――    第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。  最高 57,392 pt      〃     24h/pt-1位ではじまり2位で終了。  最高 89,034 pt                    ◇ ◇ ◇ ◇ 紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる 素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。 隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が 始まる。 苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・ 消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように 大きな声で泣いた。 泣きながらも、よろけながらも、気がつけば 大地をしっかりと踏みしめていた。 そう、立ち止まってなんていられない。 ☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★ 2025.4.19☑~

ねえ、テレジア。君も愛人を囲って構わない。

夏目
恋愛
愛している王子が愛人を連れてきた。私も愛人をつくっていいと言われた。私は、あなたが好きなのに。 (小説家になろう様にも投稿しています)

さようなら、お別れしましょう

椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。  妻に新しいも古いもありますか?  愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?  私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。  ――つまり、別居。 夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。  ――あなたにお礼を言いますわ。 【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる! ※他サイトにも掲載しております。 ※表紙はお借りしたものです。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

処理中です...