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ある冒険家の旅行記
しおりを挟む『トクロウ・ティティーの辺境旅行記3』
No.36 ~赤猫信仰の村~ 辺境地レベル☆☆☆★★
これまで色んな辺境地の村や町を訪ねて来た僕だけど、この村はまた一風変わった村だったよ。
それは大陸南東に位置するマオ山脈の山間にある村『ラースンの村』さ。
ああでもこの村自体はそんなにマイナーじゃないよね。そうそう、昔は南東都市『サギナ』へ行く街道の重要な宿場村だったからね。麓に鉄道が開発された今となってはほとんど足を運ぶ必要なくなっちゃった村なんだけど。
そんなかつての宿場村だった『ラースンの村』の一風変わったところと言うのが―――赤猫信仰さ。
赤猫って何? なんてわからない子のために説明すると…この大陸を大昔に創造したとされる神様の一神なんだ。
かいつまむと赤猫神が世界を創造し、白猿神は大地と生物と秩序を作り、黒鷹は大空と力と自由を与えた。と…詳しく知りたい子はそういう神話を読んでみると良いよ。
それで話を戻すと、赤猫神は『気まぐれに幸運を与える神』と言われていて、そんなところから『赤猫神は性別身分差別なく、全てのものに平等な神』だと信じ崇拝する者たちがいる。それが赤猫信仰なのさ。
けど白猿神の信仰がほとんど占めている中、赤猫信仰というのは中々珍しいんだよね。
しかも、それが村全体でってなると…大陸中探してもこの村だけだと思うよ。
そんな赤猫信仰が根強い『ラースンの村』には…なんと、ネコも多いんだ。村全体で世話しているから村ネコっていうのかな?
赤猫信仰には『ネコは人間の隣人である』っていう教えがあるんだ。
だからラースンの村人たちはネコを人と同じように扱う。食事も用意してあげるし、病気の子がいないか徹底して見守っているし、亡くなったネコを見つけたときは人と同じ墓へ手厚く埋葬する。赤猫信仰故の風習みたいなものなんだろうね。
白猿教にはサルを崇めましょうなんて教えはないから珍しいよね。
他にも、村の人たちに聞いてみるとネコにまつわる面白い話を聞いたから載せておくよ。
・ネコは幸運を司るが不運も司り、気まぐれに平等に与えてくれる
・ネコのヒゲには幸運が宿っているから拾ったらラッキー
・ネコには9つの魂がある
・どのネコも赤猫様に通ずる力を宿している
・ネコが99回同じ供物を食べてくれたら100回目に願い事が叶う
とまあ、こんな感じかな。
こういった感じの逸話は白猿神にはほとんどないから、それだけでも赤猫信仰というのは興味深いって思ったよ。
そういうわけで、もし赤猫信仰に興味を持った人は、一度『ラースンの村』を訪ねてみると新たな境地が開けるかもね。
道のりは山道故の辛さはあるものの、山間の村ならではの絶景は格別さ。
それにちょっと珍しい葡萄を使った蒸留酒も中々の名産品だ。
試行錯誤の末に造り出されたという歴史があるその蒸留酒は、癖こそ強いけど飲んでみるとそれが良さに変わる一品。樽造りからこだわっているらしく村一丸となって造っている…まさに村の宝だね。
そんな酒を飲みに旅行として行ってみる価値も充分ありありだよ!
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