26 / 683
第二幕 転生歌姫と古代遺跡
第二幕 プロローグ 『公演』
しおりを挟む
『異界の魂』の事件解決から数日後。
私達一座は予定通りこの街での第5回公演を開催する運びとなった。
公演が行われているのは中央広場に面する一画に立つ、前世で言うところの市民ホールのような建物だ。
様々な催しや式典が行われるところで、本当であれば賃料はかなり高額なものになるらしいが、侯爵様のご厚意で割安で借りられたらしい。
何でも、領民に娯楽を提供するのも領主の務め、であるとか。
本日はそのブレゼンタム第5回公演の初日。
この街では既に何度も公演しているので知名度も高まり、客足も上々だ。
今はメインの出し物の一つの演劇が行われているところで、私はそれを舞台袖奥から眺めている。
これから数日間は私も連日舞台に立ち、忙しい毎日となる。
とは言っても、私の出番は歌だけなんだけど。
ええ、ええ、大根役者なもんで演劇には出してもらえないんです。
くっ…今に見てなさいよ、シクスティンめ!
「…カティアさん、劇に出たいなら少なくとも棒読みはやめましょうね。はぁ…せっかく舞台映えする容姿してるのに…勿体ないなぁ。なんで歌はあんなに表現力豊かなのに、それを演技に活かせないのでしょうかねぇ…」
と、残念な物を見るような目でこちらを見て、ため息付きながら話しかけてきたのは当のシクスティンさんだ。
私の心の声が聞こえたのだろうか?
「殺陣なら完璧だと思うんですけど」
「…あなたみたいに目立つ人が戦闘シーンにだけいきなり出てきたら違和感ありすぎでしょう…」
「じゃあ、セリフが無い役を考えてくださいよ」
「だから。あなたほど目立つ人が一言も喋らないなんて違和感しかないんですって…」
「セリフ覚えるのは得意なんですけどね」
「はぁ、つくづく勿体ない…」
そんな会話をしているうちに、舞台上では物語が進み、観客は盛り上がりを見せている。
派手な真紅の衣装に身を包んだロゼッタさんが高笑いを上げながら高らかにセリフを発する。
『お~~っほっほっほっ!あなたのような小娘が彼の婚約者になるだなんて、笑わせてくれますわね!彼には公爵家令嬢たるこのワタクシこそが相応しくてよ!』
今回の彼女の役は、ヒロインをいじめ倒す悪役令嬢。
…なんと言うハマり役。
と言うか、普段の言動とあまり変わらない気がする。
しかし、令嬢と言うにはちょっと年が…(ゾクっ)…おっと、何か悪寒がするのでこれくらいにしておこう。
『私は…彼を愛しています!例え身分違いの恋だとしても、諦めることなんて出来ません!』
そして、ヒロイン役はアネッサ姉さん…ではなく、期待の新人ハンナちゃん(13)。
薄い茶色の髪に茶色の瞳と、目立つ容姿ではないものの、庇護欲を掻き立てるような可愛らしい女の子だ。
なんと、今回は彼女の主演デビューとなる舞台なのだ。
今回のストーリーは、うちの出し物としては珍しく学園恋愛物なのだが、それも彼女の初々しい魅力を最大限アピールする狙いもあっての事だ。
とある街での公演の際に、孤児院の子供たちを招待した事があったのだが、その時その孤児院にいた彼女はうちの一座の劇にいたく感動したらしく、雑用でもいいから雇ってくれと押しかけてきたんだ。
根性があると一座の面々にも気に入られて下積みを経験して行き、ついに本日のデビューとなったのである。
私とも年が近いので仲良くしている。
…私の方が芸歴は長いのに、演劇デビューの先を越されたのは別に悔しくない。
ちなみにアネッサ姉さんは、ヒロインの親友役で出ている。
「ハンナちゃん、いい感じですね」
「ええ、そうですね。彼女は才能があると思いますよ。これからが楽しみですね」
そうだね。
世代交代も考えなくちゃならないしね。
姉さんもロゼッタさんも、いつまでもヒロインやるような年でも…ゲフンゲフン。
さて、劇の方はクライマックスを迎えていた。
恋愛ものとはいえ、うちのウリである戦闘シーンもしっかり盛り込んで(半ば無理やりストーリーにねじ込んでる)、観客の盛り上がりが最高潮のまま終了となった。
ちなみにロゼッタさんこと悪役令嬢は、しっかり『ざまぁ』されてました。
「さて、そろそろ私の出番だね」
「ええ、頑張ってください。演劇と並ぶ我が一座の売りですからね、お客さんの心をがっちり掴んできてください」
シクスティンさんに激励されて、歌姫モードに意識を切り替えていく。
そう言えば、【俺】が転生してからは初めての舞台だけど…
うん、特に問題はないかな。
【私】がこれまでやってきたことが、私の中に確かに息づいてるのが分かるから。
程よい緊張感で気が引き締まっていく。
さあ、張り切って行こう!
…ああ、でも。
この間の打ち上げで、カイトさんの演奏に合わせて歌うのはとても楽しかった。
こんな大舞台で、彼と一緒に出来たらな…
そう言えば、『鳶』の面々にはチケット渡してたんだっけ。
もしかしたら、今日見に来てくれてるかな?
だったら、嬉しいな。
そうして、私の舞台の幕があがった。
私達一座は予定通りこの街での第5回公演を開催する運びとなった。
公演が行われているのは中央広場に面する一画に立つ、前世で言うところの市民ホールのような建物だ。
様々な催しや式典が行われるところで、本当であれば賃料はかなり高額なものになるらしいが、侯爵様のご厚意で割安で借りられたらしい。
何でも、領民に娯楽を提供するのも領主の務め、であるとか。
本日はそのブレゼンタム第5回公演の初日。
この街では既に何度も公演しているので知名度も高まり、客足も上々だ。
今はメインの出し物の一つの演劇が行われているところで、私はそれを舞台袖奥から眺めている。
これから数日間は私も連日舞台に立ち、忙しい毎日となる。
とは言っても、私の出番は歌だけなんだけど。
ええ、ええ、大根役者なもんで演劇には出してもらえないんです。
くっ…今に見てなさいよ、シクスティンめ!
「…カティアさん、劇に出たいなら少なくとも棒読みはやめましょうね。はぁ…せっかく舞台映えする容姿してるのに…勿体ないなぁ。なんで歌はあんなに表現力豊かなのに、それを演技に活かせないのでしょうかねぇ…」
と、残念な物を見るような目でこちらを見て、ため息付きながら話しかけてきたのは当のシクスティンさんだ。
私の心の声が聞こえたのだろうか?
「殺陣なら完璧だと思うんですけど」
「…あなたみたいに目立つ人が戦闘シーンにだけいきなり出てきたら違和感ありすぎでしょう…」
「じゃあ、セリフが無い役を考えてくださいよ」
「だから。あなたほど目立つ人が一言も喋らないなんて違和感しかないんですって…」
「セリフ覚えるのは得意なんですけどね」
「はぁ、つくづく勿体ない…」
そんな会話をしているうちに、舞台上では物語が進み、観客は盛り上がりを見せている。
派手な真紅の衣装に身を包んだロゼッタさんが高笑いを上げながら高らかにセリフを発する。
『お~~っほっほっほっ!あなたのような小娘が彼の婚約者になるだなんて、笑わせてくれますわね!彼には公爵家令嬢たるこのワタクシこそが相応しくてよ!』
今回の彼女の役は、ヒロインをいじめ倒す悪役令嬢。
…なんと言うハマり役。
と言うか、普段の言動とあまり変わらない気がする。
しかし、令嬢と言うにはちょっと年が…(ゾクっ)…おっと、何か悪寒がするのでこれくらいにしておこう。
『私は…彼を愛しています!例え身分違いの恋だとしても、諦めることなんて出来ません!』
そして、ヒロイン役はアネッサ姉さん…ではなく、期待の新人ハンナちゃん(13)。
薄い茶色の髪に茶色の瞳と、目立つ容姿ではないものの、庇護欲を掻き立てるような可愛らしい女の子だ。
なんと、今回は彼女の主演デビューとなる舞台なのだ。
今回のストーリーは、うちの出し物としては珍しく学園恋愛物なのだが、それも彼女の初々しい魅力を最大限アピールする狙いもあっての事だ。
とある街での公演の際に、孤児院の子供たちを招待した事があったのだが、その時その孤児院にいた彼女はうちの一座の劇にいたく感動したらしく、雑用でもいいから雇ってくれと押しかけてきたんだ。
根性があると一座の面々にも気に入られて下積みを経験して行き、ついに本日のデビューとなったのである。
私とも年が近いので仲良くしている。
…私の方が芸歴は長いのに、演劇デビューの先を越されたのは別に悔しくない。
ちなみにアネッサ姉さんは、ヒロインの親友役で出ている。
「ハンナちゃん、いい感じですね」
「ええ、そうですね。彼女は才能があると思いますよ。これからが楽しみですね」
そうだね。
世代交代も考えなくちゃならないしね。
姉さんもロゼッタさんも、いつまでもヒロインやるような年でも…ゲフンゲフン。
さて、劇の方はクライマックスを迎えていた。
恋愛ものとはいえ、うちのウリである戦闘シーンもしっかり盛り込んで(半ば無理やりストーリーにねじ込んでる)、観客の盛り上がりが最高潮のまま終了となった。
ちなみにロゼッタさんこと悪役令嬢は、しっかり『ざまぁ』されてました。
「さて、そろそろ私の出番だね」
「ええ、頑張ってください。演劇と並ぶ我が一座の売りですからね、お客さんの心をがっちり掴んできてください」
シクスティンさんに激励されて、歌姫モードに意識を切り替えていく。
そう言えば、【俺】が転生してからは初めての舞台だけど…
うん、特に問題はないかな。
【私】がこれまでやってきたことが、私の中に確かに息づいてるのが分かるから。
程よい緊張感で気が引き締まっていく。
さあ、張り切って行こう!
…ああ、でも。
この間の打ち上げで、カイトさんの演奏に合わせて歌うのはとても楽しかった。
こんな大舞台で、彼と一緒に出来たらな…
そう言えば、『鳶』の面々にはチケット渡してたんだっけ。
もしかしたら、今日見に来てくれてるかな?
だったら、嬉しいな。
そうして、私の舞台の幕があがった。
11
あなたにおすすめの小説
異世界で一番の紳士たれ!
だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。
リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。
リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。
異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる