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第二幕 転生歌姫と古代遺跡
第二幕 11 『ダンジョン』
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野営の翌朝。
日の出とともに起床、身支度を整え朝食を取ったら早速ダンジョン攻略に向かう。
「みんな準備はいいか?…じゃあ行こうか。目標はダンジョン魔核。通常であれば最深部にあるはずだから、途中の探索は跳ばして一気に最深部に向かおう」
カイトさんの言うとおり、ダンジョン魔核は普通はダンジョンの最深部にあることが多い。
効率的に攻略することだけ考えるならば、途中の階層は無視して最深部を目指すのが一番の近道だろう。
稀に最深部よりも浅い所にある場合もあるが、そうなると虱潰しに見て回るしかない。
ただ…
昨日途中まで探索していた時はただの遺跡だったが、ダンジョン化したことによって探索済みの場所でも改変が起きてるかもしれない。
魔物以外の一番の懸念はトラップの存在だ。
昨日の探索時は一つもトラップの類は無かったが…
実はゲームの時はいくつかのトラップが存在したのだ。
記憶を元に注意深く見ていたのだけど特に見つからなかったが、ダンジョン化した今となってはもう一度注意しておく必要があるだろう。
まあ、ロウエンさんもいるし、それほど心配する必要はないが。
でも、念の為伝えておく。
「ロウエンさん、ダンジョン化したら昨日は無かったトラップがあるかも?」
「ああ、そうッスね。油断はしないようにするッス」
という事で、再び地下遺跡にやって来た。
まだダンジョン化したばかりなら構造の変化は殆ど無いはず。
なので一気に最深部に向かうなら、第3階層まではとにかく真っ直ぐ進めば良いのは昨日と同じだ。
第1階層は特に魔物に遭遇することも、トラップが仕掛けられてることもなくあっさりと通過。
そして、第2階層だが…
「ロウエンさん、あそこ怪しくない?」
と、少し先にある床の一部を指差してロウエンさんに確認する。
【俺】の記憶では第2階層からトラップがあったと思い、記憶を頼りに注意して見ていたら、床の一部が周りと色が異なることに気がついたのだ。
「そうッスね。やはり昨日とは違うみたいッス。昨日の帰り道も無かったんで、ダンジョン化が進行してるんスかね」
と言いながらロウエンさんは石をひょいっ、と怪しそうな床に向かって投げつける。
すると…
バガンッ!
という音がして床が開く。
「落とし穴ッスか。単純だけど厄介な罠ッスね。…深さはそれほどでもないので死にはしないと思うッスけど、慎重に行かないとッス」
「良く気が付きましたわね、カティアさん」
「ロウエンさん仕込の斥候術です。ロウエンさん程ではないですけど、ポイントを押さえればある程度は分かりますよ」
「本当に何でも出来るのですわね…」
「専門家には及びませんよ。でも、私ってソロ活動の方が多いので一座の皆から色々な事を教えてもらってるんです」
まあ、器用貧乏とも言う。
でも、一人で何でもこなせるに越したことはないだろう。
トラップに注意しつつも第2階層のメイン通路を進んでいく。
記憶通りなら、もうこの先には無いはずだが、油断は禁物だ。
そして、慎重になりながらも迅速に進んでいって、第3階層へと続く階段までやって来た。
途中、魔物にも遭遇した。
Cランクの蜘蛛の魔物、ヴェノムスパイダー。
この周辺地域には存在しないダンジョン産の魔物だ。
同じくCランクのジャイアントスパイダーよりも小ぶりで攻撃力も劣るが、その代わり致死性の毒を持ち危険度はこちらの方が上だ。
だが、それも難なく倒すことができた。
このパーティーならCランクは全く問題にならないだろう。
そして第3階層にやって来た。
昨日はこの階層でBランクに遭遇したのだ。
つまり、このダンジョンでは最低でもBランクまでの魔物は出現するという事だ。
「っと、早速お出ましッス。ランドドレイク。Bランクっスね」
階段を降りてすぐに魔物と遭遇する。
ランドドレイクは巨大な蜥蜴とか、小型のドラゴンとでも言うべき魔物で、体長は10メートル近くある。
ドラゴンぽく見えるが、ブレスを吐いたりすることはない。
しかし、その巨体に見合うだけの絶大な攻撃力と、意外なほどの俊敏さを持つ強敵だ。
「カイトさん、蜥蜴なら上級の冷凍魔法で一気にカタを付けちゃいます。詠唱時間を稼いでもらえます?」
「ああ、頼んだ」
カイトさんに時間稼ぎを頼んで詠唱に入る。
ルシェーラ様はカイトさんとともに前衛、ロウエンさんは弓矢で撹乱、リーゼさんは味方にバフをかけてから連射の効く魔法で牽制してくれる。
前衛が攻撃を凌いでる隙に10秒ほどかかって詠唱を完了させ…
「いきます!後退してください!…[絶凍気流]!!」
前衛の二人が後退するタイミングに合わせて魔法を放つ!
空気をも凍てつかせる極低温の猛烈な凍気が一気に敵に襲いかかる。
かつて\"G\"退治に使ったのと違って手加減なしの全力だよ!
凍気はあっと言う間にランドドレイクの巨体を飲み込んで、ほんの一瞬のうちにカチコチに冷凍してしまった。
私が使える魔法の中でも特に攻撃力の高いものの一つだ。
例えBランクといえども、魔法耐性の低い相手なら一撃で倒せる。
ソロだと詠唱時間が稼げないので使いどころが難しい…と言うか正直使えない魔法だけど、パーティー戦なら前衛が凌いでくれればこの通りだ。
と言うか、カイトさんが鉄壁なので安心して詠唱できるのだ。
あれ程の巨体相手でも相変わらずの安定感。
普通に考えればあの巨体で突進でもされれば防ぎきれるものじゃ無いはずだけど、そう言う兆候を見逃さずに機先を制して封じてしまうのが凄い。
「…あんなのをゴキ○リ退治に使うのか…」
あ、そのカイトさんがドン引きしてる…
こ、ここは言い訳しておかないと!
「い、いえ、もちろんGに放つときは抑えてますよ!今回は全力全開でしたが…」
「それでも暫くは一面銀世界になったッス」
そこっ!
余計なことは言わないっ!!
「でも本当、頼もしいですよ。私は炎系なら上級も使えますけど、冷気系統は苦手なんですよね…カティアさんて苦手な系統あるんですか?退魔も炎も冷気も使ってますし…」
「もちろん有りますよ。結界系統はそれほど得意じゃないです。バフデバフもそんなには…そのへんはリーゼさんが得意ですよね?」
「ええ、攻撃魔法よりはそちらの方が得意です。そう考えると、私達は二人でバランスが取れてるって事ですね」
そう、お互いを補完できるのがパーティーを組む最大のメリットだ。
そういう意味では前回の『エーデルワイス』並に今回のパーティーも非常にバランスが良いと思う。
いや、『エーデルワイス』はどちらかと言うと攻撃力に特化した感じだったので、守備力もある今回のパーティーの方がよりバランスが取れてるかも。
初っ端からBランクに遭遇したが、その後はそれほど強い魔物に遭遇することもなく進んでいく。
この階層も真っ直ぐ進むだけなので、さほど時間もかからずに第4階層へと続く階段に辿り着いた。
さあ、いよいよこれからは未知の領域に踏み込むことになる。
階下に降り立つと、これまでは一直線に先に続いていた通路は少し先のところでT字路になっている。
どうやらこの階層も【俺】の記憶にある構造と同じようだ。
さり気なく最短ルートに誘導したいが…どうしようかな?
「どうやらこれまでの階層とは勝手が違うようだな」
「そうみたいッスね。さて、先ずはどっちに進むべきか?」
「左に行きましょう」
記憶を頼りに正解と思しきルートを示す。
「ん?やけにハッキリしてるな。何かあるのか?」
「勘です!」
理由なんて思いつかないので、勘ということでごり押しすることにした。
…いけるかな?
「…まあ、他に判断出来る要素もないしそれでいいか。何だかカティアの勘なら合ってそうな気もするしな。リーゼ、マッピング頼むぞ」
「あ、はい。分かりました」
実はこれまでの階層も念の為リーゼさんがマッピングしていたりする。
この階層は今までよりも重要だろう。
そうやって、分岐点を『勘』で行く先を決めながら進んでいくと、何度目かの分岐を過ぎたところで新たな魔物に遭遇した。
「あの曲がり角の先に複数の気配があるッス。多分これは…」
「アンデッドですね。この禍々しさ…上位かもしれません」
確かに曲がり角の先に微かな気配を感じるが、私にはどの程度の魔物かは判断がつかない。
リーゼさんによると上位アンデッドかもしれないと言うことだが…
「『清浄なる気よ、此処に集いて聖なる衣となり、我らが清廉なる魂を守り給え』…[聖套]!」
リーゼさんが詠唱すると、青緑色の淡い光が私達を纏う。
上位アンデッドのライフドレインを防ぎ、精神系の攻撃からも守ってくれる上級結界魔法だ。
「念の為[聖套]をかけました。これである程度上位のアンデッドでも対応できるはずです」
「ああ、助かる。…来るぞ!」
角から姿を現したのは…
「レイス!…3体いるッス」
「Bランクが3体か…なかなか厄介な。『魔壁』!」
レイスは確か魔法攻撃が主体だ。
使用してくるのは中級程度までだったと思うけど、3体同時に攻撃されると危険だ。
「ルシェーラ、一体は頼む!」
「はい!任せてくださいまし!」
『…[氷葬]』
っと、早速攻撃して来た!
敵の魔法発動とともに床が光って冷気が吹き上がり、次いで氷塊が現れた。
標的にされたのはロウエンさんだけど、魔法発動の兆候を察知して難なく回避する。
「ちっ!前衛後衛関係なしッスね!」
ロウエンさんの言うとおり、あまりこちらの隊列には関係なく攻撃して来る。
動きも早く不規則なのでお嬢様も狙いが定めにくいようだ。
ああもう!鬱陶しいな!
「…『退魔』!」
相手の攻撃に注意を払いつつも詠唱を完了させたリーゼさんが魔法を放つが、退魔の光は縦横無尽に動き回るレイスを捉えることなく躱されてしまった。
もっとも厄介な攻撃は聖套で防いでくれるけど、あの動きを何とかしないと…
そうだ!
確か[絶唱]の歌の一つにアンデッドに効果がある聖歌があったはずだ。
ゲームの時は実際に歌ったりすることは無くて、単なるエフェクトで表現していただけだが、現実のこの世界でスキルを発動させるにはちゃんと歌う必要がある。
そして、この間印を発動してから、何となく対応する歌が分かるようになったのだ。
「みんな!敵の動きを止めるからその隙に!」
私は祈りを捧げるように両手を組んで歌い始める…
歌うのはこの世界でも一般的な鎮魂歌。
葬儀の際に歌われる、魂を輪廻に導くための歌だ。
シギル発動の時と異なり、歌い始めてすぐに[絶唱]効果が現れるのを感じる。
「!動きが鈍くなりましたわ!これなら…せやぁーっっ!!」
お嬢様が相手をしていた一体を仕留めたようだ。
「もう一体!はぁっ!!」
次いで、もう一体をも仕留める。
「…[退魔]!」
コゥッ!
リーゼさんが放った退魔の光がついに最後の一体を捉えて消滅させた。
皆がレイスを全て倒したのを見届けて、私も歌い終える。
「ふう…何とかなりましたわ。カティアさんのおかげですわね。今の歌は…?」
「あ、私のスキルで[絶唱]っていいます。歌を歌うことで色々な効果が発現できるんです」
「ああ、そう言えばお父様から聞きいてましたわ。何でも印を発動させるのにもそのスキルを使うとか」
「歌姫のカティアならではのスキルだな。何にせよ助かったよ。同じBランクとは言え厄介さはそれぞれ異なるな。パーティーとの相性が顕著に現れる」
「そうですわね。まだ対処出来てますけど、状況によっては撤退も考えないとですわね」
「そうだな。侯爵令嬢を過度な危険に晒すわけにもいかんしな」
「あら?私の事は自己責任ですわ。パーティー全体のことを考えてくださいまし」
お嬢様はちょっと拗ねているようだ。
自分を理由にされるのは納得行かないんだろうけど、でもやっぱりねぇ?
「ああ、すまない。言い方が悪かったな。何れにせよ危険と判断したら撤退する」
再び方針を確認してから、探索を再開する。
その後何度か接敵したが、レイス程には苦戦する相手も無く順調に進んでいった。
「次は…右で!」
多分これが最後の分岐だ。
角を曲がってしばらく進んでいくと…第5階層へと続く階段が見つかった。
「…まじッスか。一体どう言う勘をしてるんスかね?」
「…本当に勘なのか?」
ぎくっ!
だが、ここは勘で押し通すしかない!
「い、いや~、自分でもビックリです!凄いな~私の勘って」
じと~っ、と、お嬢様が怪しげな目で見ているが気にしない!
ここで目を合わせてはいけないのだ!
「はぁ、何か怪しいですけど…まあ、迅速に進めましたし助かりましたわ」
よし!勝った!(何が?)
何とか無理やり誤魔化して、私達は第5階層へと降りていった。
日の出とともに起床、身支度を整え朝食を取ったら早速ダンジョン攻略に向かう。
「みんな準備はいいか?…じゃあ行こうか。目標はダンジョン魔核。通常であれば最深部にあるはずだから、途中の探索は跳ばして一気に最深部に向かおう」
カイトさんの言うとおり、ダンジョン魔核は普通はダンジョンの最深部にあることが多い。
効率的に攻略することだけ考えるならば、途中の階層は無視して最深部を目指すのが一番の近道だろう。
稀に最深部よりも浅い所にある場合もあるが、そうなると虱潰しに見て回るしかない。
ただ…
昨日途中まで探索していた時はただの遺跡だったが、ダンジョン化したことによって探索済みの場所でも改変が起きてるかもしれない。
魔物以外の一番の懸念はトラップの存在だ。
昨日の探索時は一つもトラップの類は無かったが…
実はゲームの時はいくつかのトラップが存在したのだ。
記憶を元に注意深く見ていたのだけど特に見つからなかったが、ダンジョン化した今となってはもう一度注意しておく必要があるだろう。
まあ、ロウエンさんもいるし、それほど心配する必要はないが。
でも、念の為伝えておく。
「ロウエンさん、ダンジョン化したら昨日は無かったトラップがあるかも?」
「ああ、そうッスね。油断はしないようにするッス」
という事で、再び地下遺跡にやって来た。
まだダンジョン化したばかりなら構造の変化は殆ど無いはず。
なので一気に最深部に向かうなら、第3階層まではとにかく真っ直ぐ進めば良いのは昨日と同じだ。
第1階層は特に魔物に遭遇することも、トラップが仕掛けられてることもなくあっさりと通過。
そして、第2階層だが…
「ロウエンさん、あそこ怪しくない?」
と、少し先にある床の一部を指差してロウエンさんに確認する。
【俺】の記憶では第2階層からトラップがあったと思い、記憶を頼りに注意して見ていたら、床の一部が周りと色が異なることに気がついたのだ。
「そうッスね。やはり昨日とは違うみたいッス。昨日の帰り道も無かったんで、ダンジョン化が進行してるんスかね」
と言いながらロウエンさんは石をひょいっ、と怪しそうな床に向かって投げつける。
すると…
バガンッ!
という音がして床が開く。
「落とし穴ッスか。単純だけど厄介な罠ッスね。…深さはそれほどでもないので死にはしないと思うッスけど、慎重に行かないとッス」
「良く気が付きましたわね、カティアさん」
「ロウエンさん仕込の斥候術です。ロウエンさん程ではないですけど、ポイントを押さえればある程度は分かりますよ」
「本当に何でも出来るのですわね…」
「専門家には及びませんよ。でも、私ってソロ活動の方が多いので一座の皆から色々な事を教えてもらってるんです」
まあ、器用貧乏とも言う。
でも、一人で何でもこなせるに越したことはないだろう。
トラップに注意しつつも第2階層のメイン通路を進んでいく。
記憶通りなら、もうこの先には無いはずだが、油断は禁物だ。
そして、慎重になりながらも迅速に進んでいって、第3階層へと続く階段までやって来た。
途中、魔物にも遭遇した。
Cランクの蜘蛛の魔物、ヴェノムスパイダー。
この周辺地域には存在しないダンジョン産の魔物だ。
同じくCランクのジャイアントスパイダーよりも小ぶりで攻撃力も劣るが、その代わり致死性の毒を持ち危険度はこちらの方が上だ。
だが、それも難なく倒すことができた。
このパーティーならCランクは全く問題にならないだろう。
そして第3階層にやって来た。
昨日はこの階層でBランクに遭遇したのだ。
つまり、このダンジョンでは最低でもBランクまでの魔物は出現するという事だ。
「っと、早速お出ましッス。ランドドレイク。Bランクっスね」
階段を降りてすぐに魔物と遭遇する。
ランドドレイクは巨大な蜥蜴とか、小型のドラゴンとでも言うべき魔物で、体長は10メートル近くある。
ドラゴンぽく見えるが、ブレスを吐いたりすることはない。
しかし、その巨体に見合うだけの絶大な攻撃力と、意外なほどの俊敏さを持つ強敵だ。
「カイトさん、蜥蜴なら上級の冷凍魔法で一気にカタを付けちゃいます。詠唱時間を稼いでもらえます?」
「ああ、頼んだ」
カイトさんに時間稼ぎを頼んで詠唱に入る。
ルシェーラ様はカイトさんとともに前衛、ロウエンさんは弓矢で撹乱、リーゼさんは味方にバフをかけてから連射の効く魔法で牽制してくれる。
前衛が攻撃を凌いでる隙に10秒ほどかかって詠唱を完了させ…
「いきます!後退してください!…[絶凍気流]!!」
前衛の二人が後退するタイミングに合わせて魔法を放つ!
空気をも凍てつかせる極低温の猛烈な凍気が一気に敵に襲いかかる。
かつて\"G\"退治に使ったのと違って手加減なしの全力だよ!
凍気はあっと言う間にランドドレイクの巨体を飲み込んで、ほんの一瞬のうちにカチコチに冷凍してしまった。
私が使える魔法の中でも特に攻撃力の高いものの一つだ。
例えBランクといえども、魔法耐性の低い相手なら一撃で倒せる。
ソロだと詠唱時間が稼げないので使いどころが難しい…と言うか正直使えない魔法だけど、パーティー戦なら前衛が凌いでくれればこの通りだ。
と言うか、カイトさんが鉄壁なので安心して詠唱できるのだ。
あれ程の巨体相手でも相変わらずの安定感。
普通に考えればあの巨体で突進でもされれば防ぎきれるものじゃ無いはずだけど、そう言う兆候を見逃さずに機先を制して封じてしまうのが凄い。
「…あんなのをゴキ○リ退治に使うのか…」
あ、そのカイトさんがドン引きしてる…
こ、ここは言い訳しておかないと!
「い、いえ、もちろんGに放つときは抑えてますよ!今回は全力全開でしたが…」
「それでも暫くは一面銀世界になったッス」
そこっ!
余計なことは言わないっ!!
「でも本当、頼もしいですよ。私は炎系なら上級も使えますけど、冷気系統は苦手なんですよね…カティアさんて苦手な系統あるんですか?退魔も炎も冷気も使ってますし…」
「もちろん有りますよ。結界系統はそれほど得意じゃないです。バフデバフもそんなには…そのへんはリーゼさんが得意ですよね?」
「ええ、攻撃魔法よりはそちらの方が得意です。そう考えると、私達は二人でバランスが取れてるって事ですね」
そう、お互いを補完できるのがパーティーを組む最大のメリットだ。
そういう意味では前回の『エーデルワイス』並に今回のパーティーも非常にバランスが良いと思う。
いや、『エーデルワイス』はどちらかと言うと攻撃力に特化した感じだったので、守備力もある今回のパーティーの方がよりバランスが取れてるかも。
初っ端からBランクに遭遇したが、その後はそれほど強い魔物に遭遇することもなく進んでいく。
この階層も真っ直ぐ進むだけなので、さほど時間もかからずに第4階層へと続く階段に辿り着いた。
さあ、いよいよこれからは未知の領域に踏み込むことになる。
階下に降り立つと、これまでは一直線に先に続いていた通路は少し先のところでT字路になっている。
どうやらこの階層も【俺】の記憶にある構造と同じようだ。
さり気なく最短ルートに誘導したいが…どうしようかな?
「どうやらこれまでの階層とは勝手が違うようだな」
「そうみたいッスね。さて、先ずはどっちに進むべきか?」
「左に行きましょう」
記憶を頼りに正解と思しきルートを示す。
「ん?やけにハッキリしてるな。何かあるのか?」
「勘です!」
理由なんて思いつかないので、勘ということでごり押しすることにした。
…いけるかな?
「…まあ、他に判断出来る要素もないしそれでいいか。何だかカティアの勘なら合ってそうな気もするしな。リーゼ、マッピング頼むぞ」
「あ、はい。分かりました」
実はこれまでの階層も念の為リーゼさんがマッピングしていたりする。
この階層は今までよりも重要だろう。
そうやって、分岐点を『勘』で行く先を決めながら進んでいくと、何度目かの分岐を過ぎたところで新たな魔物に遭遇した。
「あの曲がり角の先に複数の気配があるッス。多分これは…」
「アンデッドですね。この禍々しさ…上位かもしれません」
確かに曲がり角の先に微かな気配を感じるが、私にはどの程度の魔物かは判断がつかない。
リーゼさんによると上位アンデッドかもしれないと言うことだが…
「『清浄なる気よ、此処に集いて聖なる衣となり、我らが清廉なる魂を守り給え』…[聖套]!」
リーゼさんが詠唱すると、青緑色の淡い光が私達を纏う。
上位アンデッドのライフドレインを防ぎ、精神系の攻撃からも守ってくれる上級結界魔法だ。
「念の為[聖套]をかけました。これである程度上位のアンデッドでも対応できるはずです」
「ああ、助かる。…来るぞ!」
角から姿を現したのは…
「レイス!…3体いるッス」
「Bランクが3体か…なかなか厄介な。『魔壁』!」
レイスは確か魔法攻撃が主体だ。
使用してくるのは中級程度までだったと思うけど、3体同時に攻撃されると危険だ。
「ルシェーラ、一体は頼む!」
「はい!任せてくださいまし!」
『…[氷葬]』
っと、早速攻撃して来た!
敵の魔法発動とともに床が光って冷気が吹き上がり、次いで氷塊が現れた。
標的にされたのはロウエンさんだけど、魔法発動の兆候を察知して難なく回避する。
「ちっ!前衛後衛関係なしッスね!」
ロウエンさんの言うとおり、あまりこちらの隊列には関係なく攻撃して来る。
動きも早く不規則なのでお嬢様も狙いが定めにくいようだ。
ああもう!鬱陶しいな!
「…『退魔』!」
相手の攻撃に注意を払いつつも詠唱を完了させたリーゼさんが魔法を放つが、退魔の光は縦横無尽に動き回るレイスを捉えることなく躱されてしまった。
もっとも厄介な攻撃は聖套で防いでくれるけど、あの動きを何とかしないと…
そうだ!
確か[絶唱]の歌の一つにアンデッドに効果がある聖歌があったはずだ。
ゲームの時は実際に歌ったりすることは無くて、単なるエフェクトで表現していただけだが、現実のこの世界でスキルを発動させるにはちゃんと歌う必要がある。
そして、この間印を発動してから、何となく対応する歌が分かるようになったのだ。
「みんな!敵の動きを止めるからその隙に!」
私は祈りを捧げるように両手を組んで歌い始める…
歌うのはこの世界でも一般的な鎮魂歌。
葬儀の際に歌われる、魂を輪廻に導くための歌だ。
シギル発動の時と異なり、歌い始めてすぐに[絶唱]効果が現れるのを感じる。
「!動きが鈍くなりましたわ!これなら…せやぁーっっ!!」
お嬢様が相手をしていた一体を仕留めたようだ。
「もう一体!はぁっ!!」
次いで、もう一体をも仕留める。
「…[退魔]!」
コゥッ!
リーゼさんが放った退魔の光がついに最後の一体を捉えて消滅させた。
皆がレイスを全て倒したのを見届けて、私も歌い終える。
「ふう…何とかなりましたわ。カティアさんのおかげですわね。今の歌は…?」
「あ、私のスキルで[絶唱]っていいます。歌を歌うことで色々な効果が発現できるんです」
「ああ、そう言えばお父様から聞きいてましたわ。何でも印を発動させるのにもそのスキルを使うとか」
「歌姫のカティアならではのスキルだな。何にせよ助かったよ。同じBランクとは言え厄介さはそれぞれ異なるな。パーティーとの相性が顕著に現れる」
「そうですわね。まだ対処出来てますけど、状況によっては撤退も考えないとですわね」
「そうだな。侯爵令嬢を過度な危険に晒すわけにもいかんしな」
「あら?私の事は自己責任ですわ。パーティー全体のことを考えてくださいまし」
お嬢様はちょっと拗ねているようだ。
自分を理由にされるのは納得行かないんだろうけど、でもやっぱりねぇ?
「ああ、すまない。言い方が悪かったな。何れにせよ危険と判断したら撤退する」
再び方針を確認してから、探索を再開する。
その後何度か接敵したが、レイス程には苦戦する相手も無く順調に進んでいった。
「次は…右で!」
多分これが最後の分岐だ。
角を曲がってしばらく進んでいくと…第5階層へと続く階段が見つかった。
「…まじッスか。一体どう言う勘をしてるんスかね?」
「…本当に勘なのか?」
ぎくっ!
だが、ここは勘で押し通すしかない!
「い、いや~、自分でもビックリです!凄いな~私の勘って」
じと~っ、と、お嬢様が怪しげな目で見ているが気にしない!
ここで目を合わせてはいけないのだ!
「はぁ、何か怪しいですけど…まあ、迅速に進めましたし助かりましたわ」
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