【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
62 / 683
第三幕 転生歌姫の新たなる旅立ち

第三幕 エピローグ 『告白』

しおりを挟む
 ついに王都へ旅立つ日がやって来た。

 カイトさんのことは吹っ切れたとは言い難いけど、お酒を飲んで愚痴ったら少しは気が晴れた…らしい。
 まあ、覚えてないんだけど。
 次の日に起きたらちょっとスッキリしてたのは確かだ。

 その日のことをロウエンさんに聞いても「かんべんしてほしいッス」としか言わないし、父さんに聞いても「まあ、甘える相手がいなかったからな。普通の絡み酒だったぞ」だって。
 普通の絡み酒って何なのさ…
 気になるけど、怖いので深くは聞かないことにした。



 今は一座の皆揃って東門外の馬車発着場に集まっている。
 小道具大道具などを積んだ荷馬車が3台。
 その他にも乗り合い馬車のようなものが3台あって徒歩と馬車を交代しながら旅していく。
 一座の総勢は、その家族も含めれば50名を超える大所帯だ。

 それぞれが挨拶回りした相手や、噂を聞きつけて集まった住民が見送りに来ているので早朝にも関わらず随分と賑やかだ。

 私も見送りに来てくれたユリシアさん、プルシアさんと別れの言葉を交わしている。

「ユリシアさん、プルシアさん、お世話になりました。つぎお会いするとしたら王都ですね」

「こちらこそ、贔屓にしていただきありがとうございました」

「そうそう、私なんかカティアちゃんのお陰で技術が上がったしね。感謝してもし足りないわ」

「そうだ、カティアさん、これを…」

「?手紙…ですか?」

「父の商会への紹介状です。何かご入用なものがありましたら、融通してくれると思いますよ」

「え!?いいんですか?」

「ふふ、こちらとしても、カティアさんと取引があるのはメリットがあるのでお気になさらずに」

「そうそう、歌姫カティアは王都でも話題をさらうこと間違いなし!だからね。有名人とコネが持てるのはウチとしてもありがたいのよ」

「そう言う事でしたら…ありがとうございます」

 メリットがあると言うのは本当の事だと思うけど、純粋な好意からだと言うのが伝わってくる。
 有り難く好意を受け取ることにする。



「カティアちゃん!」

「あ!レイラさん!皆さんも!」

 結局挨拶が出来なかったレイラさんたち元『鳶』の面々が見送りに来てくれていた。

「良かった、なかなか会えなくて挨拶できないと思ってました」

「ごめんなさいね、ちょっと長めの依頼を受けてたのよ」

「俺たちもだ。帰ってきたら噂を聞いたんでな。間に合って良かった」

「カティアさん、王都に行っても頑張って下さいね」

「レダさんとザイルさんもお元気で!」

「王都の近くには有名なダンジョンがあるからね。私達も何れはチャレンジするかも知れないわ」

「あ、そうなんですか?その時は是非会いに来てくださいね」

「もちろん、真っ先に会いに行くわよ!」







 さて、名残は尽きないがそろそろ出発だ。

 …って、ミーティアはどこ行ったんだろう?
 私と一緒に集合場所に来たはずなんだけど…
 私がユリシアさんたちと話し込んでいる間にどこかに行ってしまった。

 ん~…もう馬車に載せてもらったのかな?


「お~い!ママ~!!」

 ああ、いたいた。
 やっぱりもう馬車に…って!?

「か、カカカ、カイトさんっ!?」

 ここ数日姿を見かけなかったカイトさんが、ミーティアと一緒に御者台に座っているではないか!?

「ああ、挨拶は終わったか?」

「ママ、おそ~い!」

「え!?なんで!?どうしてカイトさんがここに!?」

「…聞いてないのか?」

「何を!?」

「いや、俺も王都に行くんだが。一座のメンバーとして」

「はあっ!?」

「おうっ!どうしたお前ら、何か揉め事か?」

 と、そこに父さんがやって来た。
 すかさず、どういう事かと詰め寄る。

「ちょっと!!父さん、どういう事!?」

「あ?何がだ?」

「カイトさんが!一座って!!」

「ああ…言ってなかったか?」

「聞いてないよっ!?」

「わりぃわりぃ。実はな、王都にって話があって直ぐにスカウトしてたんだ」

「はぁ!?じゃあ最初っからじゃない!!」

「おう。せっかくだからウチも楽団を充実させようと思ってな。カイトのリュートの腕前は知ってんだろ」

「えっ?えっ?じゃあ、最近街にいなかったのは?」

「…ダードさん、それも伝えてないんですか?」

「あ~、すまん、忘れてたわ」

「と~う~さん!?」

「…俺もこの街は長いんだがな、近隣の町村にも知り合いがいるから挨拶に周ってたんだよ」

「…それで街にいなかったの…?」

「あ~、どうやら行き違いがあったようだな…すまん…」

「うっ…うっ……うわ~~~んっ!!」

 私は感極まって思わずカイトさんに抱きついた。
 感情が溢れ出て制御出来ないよ…

「お、おい!?」

「うぇ~~~んっ!!」

「カティア…」

 子供のように泣きじゃくる私の背中を、カイトさんはポンポン、と優しく叩く。

「ママ、どうしたの?」

「ん~?パパに久しぶりに会えて嬉しいんだろ」

「そっか~!よかったね~!」

 ミーティアと父さんが何か話してるが、それも頭に入ってこない。
 驚き、喜び、怒り、安堵、いろいろな感情が綯い交ぜになってもう訳がわからない。

「ぐすっ…ひっく…カイトさん…ひっく…カイトさぁん…」

 カイトさんの胸に顔をうずめて嗚咽をこらえる。
 ああ…こうしてると何だか安心するな…
 遠慮がちに背中に回されていた腕が力強く私を抱きしめる。

「カイトさん…私…カイトさんとずっと一緒に居たいよ…離れたくないよ…」

「カティア…」

「私は…カイトさんの事が好きです…」

 怖くて言葉に出せなかった想いが、自然と口を衝いて出てくる。

「カティア…俺は…」

「ううん、いいの。まだ、答えは出せないんでしょう?」

 カイトさんが何かを抱えてるのは分かってる。
 でも、もう私の気持を伝えるのを、抑える事なんてできなかった。

「約束したよね。いつか、カイトさんの悩みを聞かせてくれるって」

 あの星空の下で交わした約束を、私は覚えている。

「だから、私、カイトさんの力になりたいな…それで、悩みごとが解決したら、答えを聞かせてほしい…」

「…ああ、必ず。その時が来たら、必ずお前の想いに応えよう」

「はいっ!!」

 私は満面の笑みを浮かべて、抱きついた腕に力を込めて精一杯抱きしめた。






ーー ダードレイ、アネッサ、ミーティアのコソコソ話 ーー


(…もう、答えなんて出てるだろーに。ホント、くそ真面目なヤツだぜ。まぁ、カイトの事情も複雑だろうし、今はしょうがねぇか…)

(本当よね~。あれでまだ付き合ってないなんて、おかしな話よね~。でも、カティアちゃんが嬉しそうだし~、これでよかったのかしら~)

(ねえ、おじいちゃんたち、なにをこそこそおはなししてるの~?)

(そうね~、パパとママが仲良くて良かったわ~、って事よ~)

(パパ、ママ、なかよし!うれしい!)

(でも、ダードさん?カティアちゃんの怒りの矛先が向くんじゃないかしら~?)

(…まあ、結果が良かったんだからいいじゃねぇか。そもそもアイツがうじうじしてたのが悪い)

(開き直りね~。…ところで、いつまでああしてるのかしら~?皆の注目の的になってるけど、二人とも自分たちの世界に入って気づいてないわね~)

(…ああ。この後羞恥に身悶えするんだろうな。それで俺への怒りが吹き飛んでくれりゃあいいんだがな)

(ダードさんは反省した方がいいわ~)

(おじいちゃん、めっ!なの)



ーーーーーーーー



 パチパチパチパチ、と言う拍手の音で我に返る。
 ふと周りを見ると、一座の面々と見送りに来ていた人たちの視線を一身に集めている。

 …
 ……
 ………みぎゃーーっ!?

 見られてた!?
 聞かれてた!?

 …そりゃそうだ、最初から皆いたんだもの。

 うわ~~~っ!?
 は、はずかしぃ~~~っっ!!
 公衆の目の前で子供みたいに泣きわめいた挙げ句、愛の告白を聞かれるなんて!?


「あ、あぅあぅ…」

「…これは恥ずかしいな…」

 あ、カイトさんも赤くなってる。
 いつも冷静なのに、何だか新鮮だ。

 すっごく恥ずかしいけど…ちゃんと素直な気持ちを伝えることが出来て、心は晴れやかだ。

 まだ答えは聞けないけど、彼の気持ちも伝わっている。
 後は、私がカイトさんの力になって、彼の悩み事を一緒に解決するんだ。






 ああ…あんなにも憂鬱だった旅立ちが、今は希望に満ち溢れている。
 我ながら現金なものだ。



 きっとこの道の行く先には色々なことが待ち受けているだろう。
 出会いや別れ、喜びや悲しみ、人生は山あり谷あり、旅のようなもの。
 その旅をともにしてくれる人がいてくれるなら、こんなに心強いことはない。
 血の繋がりはなくても、強い絆で結ばれた家族のような仲間たち。
 そして、愛しい人…



 私はこれからも、彼らと共に人生という長い旅路を歩んでいくんだ。



ーー 第三幕 転生歌姫と新たなる旅立ち 閉幕 ーー
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...