【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
71 / 683
第四幕 転生歌姫の世直し道中

第四幕 5 『非道』

しおりを挟む
 不思議な夢を見た。

 やけにリアルだったが、あれは本当にあった出来事なんだろうか?
 本当にあった事だとして、なぜ私がそれを夢に見るのか?

 …考えても分からない。
 これは、やっぱりリル姉さんに相談かな。

 いつになるか分からないけど、折を見てエメリール神殿を訪ねよう。






 さて、私達一行は再び王都を目指すべく出発をするが、別れて宿泊していたので、待ち合わせ場所となるこの街の中央広場へと向かう。


 しかし、その道すがら事件が起きた。

「きゃあーーー!!いや!!放してぇっ!!」

「ま、まってくれ!!む、娘を連れてかないでくれ!!」

 突然あがった大きな悲鳴と、それに続く懇願の声。
 何事かと思い振り返ってみてみると…

「うるさいっ!!税を払えぬならば、それ相応のものを差出さねばならん!家を差押えられないだけでも有り難いと思え!!」

「いやーっ!!お父さんっ!!」

「アンナ!!やめてくれーっ!!」


 どうやら、税を納められない人に対して取り立てが行われて…という状況のようだ。
 噂で聞いていた通り、衛兵によって非道が行われようとしている。
 …本当に、胸糞悪い!


「ママ…お姉ちゃんが…」

 ミーティアも心配そうに見ているが…
 私は返事をすることができない。

 周りの人たちも黙って見ていることしかできず、ただ悔しそうに俯くだけだ。

 例え、今後国の介入によって解決されるのだとしても、今この場で連れ去られてしまったら彼女に襲いかかる不幸を避けることはできないだろう。
 何とか出来ないものか…


「お待ちなさいっ!!」

 !
 ル、ルシェーラ様!?

「お、おい、ルシェーラ…」

 父さんが止めようとするが、怒りに震えるお嬢様を止めることはできない。

「我がイスパル王国では人身取引は重罪のはず!!例え納税義務違反だとしても、このような暴挙は赦されません!!」

「何だあ?貴様は…?いいか!このリッフェル領においては領主様の意向こそが法だ!それに従えぬ者は誰であろうと罪人として捕らえるだけだ!」

「…その発言、問題ですわよ。つまり、リッフェル領は国に対して反逆の意思がある、と言うことですね?」

「う、うるさい!!領主様に従わねば俺も家族が…!!」

 …なるほど。
 誰もが好きで従ってるわけでは無いよね。
 平気で民を殺すような人もいれば、彼のように仕方なく従ってる人もいる。

「そう、あなた達も本意ではないのね。ですが、こんなことは早晩国に伝りますわ。このままでは、あなた達は反逆者に与した者として裁かれることになるでしょうね」

「うう…だが、だからと言ってどうすれば…」

 …どうやら、取り込む方向にしたみたいだ。

 父さんも黙って成り行きを見ている。
 ドライな事を言ってるようで、本当は父さんだってなんとかしたいと思ってたはずだからね。
 もちろん、私も。

「なぜ一致団結して立ち上がらないのです!たとえ領主と言えど民に非道を働いて良い理由などありません!ましてや、法を犯しているのは明らかなのです!」

「だが、平民が貴族に逆らえば、裁かれるのは我々の方だ!いくら正義が民にあったとしても、貴族に逆らった以上は極刑は免れない!!」

「そんな事は…!」

「それに、領主様…いや、領主代行のマクガレン様には不思議な力がある。逆らいたくても逆らえないんだ…」

 不思議な力?
 それは、いったい…?

「その力とは…」



「何をしている!!」

 と、さらに話を聞こうとしたところで大きな声が割り込んできた。

「た、隊長!!」

 どうやら衛兵の隊長らしく、10人ほどを従えてこちらにやって来る。


「これは一体何事だ!職務を遂行できなければ、我々もただでは済まされんぞ!!」

「す、すみません!差し押さえの執行中にこいつらが邪魔だてして…」

「何だと…?ならば公務執行妨害で引っ捕えろ!!」

「は、はっ!!」


 まずい!
 こちらの話を聞く耳も持たず捕らえようとしている!
 流石に衛兵相手に戦いを挑むわけにはいかない…!

「ルシェーラ!ずらかるぞ!」

「くっ!」

 衛兵が私達を捕らえようとするのを見ると、父さんはすかさず逃げるようにお嬢様を促して、自分も逃走体制に入る!

「ミーティア!こっちだ!カティアも!」

「パパ!ママ!」

「う、うん!!」

 カイトがミーティアを抱っこして走り出し、私もそれに続く!


「待て!!逃がすな!!」

 まあ、待てと言われて待つ人はいない。

 しかし、こう街中だと通行人が多くて走りづらく、なかなか引き離すことができない…!

 なんとか引き離そうとしている時…

「こっちよ!」

 と、誰かの声がした。
 声の方を見ると、横合いの路地から手招きする人物が。
 フードで顔を隠していてとても怪しい感じだが…

「父さん!」

「ああ!あそこに入るぞ!!」

 そう言って、手招きする人物がいる路地に入っていく。



 人一人通るのがやっとの裏路地を、謎の人物を先頭にして全力で駆け抜ける。

「おい!あんた!このあとどうすんだ!?」

「いいから!ついてきて!!」

 この声は…女の人?

「信用できるんですの!?」

「今は信じるしかねえだろ!」

 路地を抜けて裏通りに入り、さらに別の路地に入る。
 何度かそうして、追跡を撒くようにして走っていき、最後にたどり着いたのは一軒の民家だった。

「入って」

 促されて中に入ると、そこはいかにも普通の民家といった感じだった。



 謎の人物は、扉を閉めて外の様子を窺っている。
 しばらくそうしていたが、やがて追手が来ないのを確認したのだろう、私達に向き直る。

「ふぅ…どうやら追手は撒いたようね」

 そう言いながらフードを取り払うが、やっぱり女の人だった。
 赤い髪を肩口で切りそろえた、やや気が強そうな感じの美人さん。
 歳は結構若いが…私より少し上くらいだろうか。


「助かったぜ、礼を言う」

「ああ、いいよ。あいつらには私も腹が立ってるからね」

「おじさま、皆さん、申し訳ありません…私、どうしても我慢ができず…」

 お嬢様が謝るが、父さんは気にした風もなくお嬢様の頭をポンポン、と優しく叩いて言う。

「なに、気にすんな。俺だって頭にきてたからな。よくぞ言ってくれた、てところだな。それに、お前の親父もきっと黙ってらんねぇと思うぞ」

「そうそう、あんたの言葉には私もスカッとしたね!だから、助けようって気になったんだし」

「ところで、あなたは一体…」

「そうだ、自己紹介がまだだったね。わたしはケイトリンよ、よろしくね」

「ああ、よろしくな。俺たちは…」

「ダードレイ一座…でしょ?」

 父さんが名乗ろうとすると、ケイトリンさんはそれを遮って、私達の素性を言い当てた。

「…確かにそうだが、どうしてそれを?」

 少し警戒して父さんが聞き返す。

「ああ、警戒しないで。実はね、ダードレイ一座がこの街に入ったって情報を聞いてね。協力をお願いしようと思って声をかけるタイミングを伺ってたのよ。そしたら、そちらのお嬢さんがね」

「なるほどな。お前にとっちゃ声をかける理由ができて良かったと言うわけだ。ルシェーラの言葉を聞いたから助けた、なんて言ってたが、よく言うぜ」

「お嬢さんの言葉に感銘を受けたのは本当よ」

「協力…とは、どういう事ですの?」

「その前に、あんたたちこの街の…いや、この領のことどこまで知ってる?」

 そう聞かれて、私達はこれまで知り得た事を彼女に話した。



「へえ…よく知ってるじゃない。まあ、ようするに、この領は今最悪の状態って訳ね」

「だが、こんな状態がいつまでも続くわけは無え。すでに国も動こうとしているはずだ」

「そうね。だけど、それを待ってる間にどんどんこの領はボロボロになって行く。犯罪に手を染めるものや盗賊に堕ちる者が後を絶たない。そして、そのような者たちは容赦なく殺される。無理な取り立てで住む場所を失ったものは日々の生活もままならず、飢え死にする人だっている。一刻も早くどうにかしないといけないのよ」

「…つまり、協力というのは」

「そう、打倒領主…いえ、領主代行マクガレンを倒すのを手伝って欲しいのよ、私達…レジスタンスと共に」



 そうして、彼女は自分の素性を話し始めるのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...