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第四幕 転生歌姫の世直し道中
第四幕 18 『事後処理』
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事件から一夜明けて…
いや、終わった時には既に夜は明けていた。
正しくは事件が終わって一眠りしてから、だ。
ともかく、今はもうすぐ昼時という時間だ。
本来であれば私達一座はとっくにこの街を出ているはずなのだが、もう滞在5日目ということになる。
今日は事後処理のための聴取に参加することになったので、出発は早くても明日以降になってしまう。
ここ数日会っていないけど、ミディット婆ちゃんの怒りは如何ばかりのものであろうか?
幸いにも、一座の滞在にかかる費用はリッフェル伯爵家が負担してくれてるので、その怒りも幾分か和らいでいると良いのだけど。
マクガレンが打倒され、先代領主のマクガイア様が再び領主に返り咲いたことは、朝一番にマクガイア様自らが街に赴いて宣言された。
その時の街の歓声は私が宿泊していた領主邸まで聞こえてきたのだから、現地の興奮度合いが如何程のものだったのかは想像に難くない。
マクガレンについては、偽物がなりすましていて本人は既に害されていた、という説明がなされた。
真実ではないが嘘というわけでもないその話は、特に疑われる事もなく受け入れられたとのこと。
もともとマクガレンさんは清廉潔白な人柄で知られていた事もあって、その話を聞いた住人たちは彼が死んだことを悲しんでくれたそうだ。
実際、彼も被害者だったと言える訳だし、彼の名誉が守られたのは純粋に嬉しいと思えた。
もちろん、これまで課されていた無茶苦茶な税率については即日撤廃。
これまで不当に徴税されたり、差し押さえられたものについても返還されることが約束された。
領主邸に囚われていた女性達も家に帰ることになった。
彼女達に対する賠償についてはこれから協議されることになるが…どのような償いがなされても、そうそう心の傷が癒やされることは無いだろう。
それでも、いつかは前向きに生きて行ける日が来ると信じたい。
リタさんたち三人とは、邸を去っていく際に話をすることができた。
私達が事件解決のために乗り込んできたのを知ると、涙を流しながら感謝してくれた。
女性達の心の傷を思うと素直に事件解決を喜べなかったのだが、それで幾分かは心が軽くなった。
直近の対応はこれくらいで、リッフェル家の処遇や積極的に悪事に関わっていた者に対する処断などは、これから国も入って調査した上で決定される。
何もかもが万事解決…とはならないけど、とにかくこれでリッフェル領は以前の活気を取り戻すことができるだろう。
現在は事件のあらましについて、私達も含めた関係者から聴取が行われているところだ。
取り纏めはリュシアン様。
マクガイア様は領内の事後処理にあたっているため不在であるが、先に一通りの聴取はされたとのこと。
「さて、皆さんには時間を取っていただいて感謝いたします。早速ですが、順を追って事件のあらましを確認させてください。とは言っても、昨日に至るまでのことはケイトリンから報告を受けてますので、主には潜入作戦が開始されてからの事を中心にお聞かせ頂ければ、と思います」
「その前にお聞きしたいのですけど…よろしいでしょうか?」
「ええ、私にお答えできることでしたら何なりと」
ちょっと気になる事があったので聞いてみると、許可を貰えたので続けて質問してみる。
「今回の事件…国で把握したから騎士団が動いたと思うのですけど、どれくらい前から情報を押さえていたのですか?」
「そうですね…兆候を察したと言う意味でしたら一月ほど前でしょうか。国が派遣している官僚も情報操作に加担していたらしく、報告書などでは判明しませんでしたが…人の口に戸は立てられませんから」
「でも、噂だけで騎士団を動かすなんて出来ないからね。私が内偵のため先行してリッフェル領に入ったんだ。それが三週間ほど前かな」
リュシアン様の言葉を引き継いでケイトリンさんが説明する。
「で、レジスタンスの存在を知ってね。差押えで住む場所を失った可愛そうな町娘を演じて参加したんだ。情報収集するには手っ取り早いと思ったし」
ふむふむなるほど。
まあ分かる話かな。
「でも、ヨルバルトさんはなんか気付いてたっぽいね?」
「確信はしてませんでしたけど。…ケイトリン、あなた騎士の癖がたまにでるんですよ。敬礼とか」
「…」
「まあ、国が動いてくれてるなら…と、乗っかることにしたのですけど」
「…結果オーライ!」
「…減俸」
「何でですっ!?…ま、まあ、とにかく。そんな訳でレジスタンスに入ったんだけど、正直それも必要ないくらいすぐに状況証拠が出るわ出るわ…という事で割とすぐに派遣要請を出したのよ。だけど…」
「いくら国と言えども状況証拠だけで自治権を持つ領に対して騎士団を派遣するとなると、慎重にならざるを得ないのです」
「まったく…そんなのリュシアン様があとで始末書書けば良いだけの話でしょーが」
「はぁ…簡単に言ってくれますね。もちろん、それくらいの覚悟でかなり無理を通したんですよ」
「それでも間に合わなければ意味がないですね!」
「…ふむ。上司に対する度重なる暴言。これはやはり減俸を…」
「いや~、素早い判断で迅速な派遣。流石はリュシアン様です!」
う~ん…この二人、やっぱり面白いなぁ…
ケイトリンさんもかなり言いたい放題だけど、それも信頼関係があるからだろうし。
お嬢様が嫉妬するのも少し分かるかな?
あ、チラっと見たら、ぷくーっ、て頬を膨らませてむくれてる。
なんか可愛いなぁ…
「でも、最終的に事態を収めるのにレジスタンスのメンバーだけでは難しかったでしょうから、そういう意味では丁度よいタイミングで助かりました」
と、ヨルバルトさんがフォローする。
まあ、実際その通りだったのだろう。
レジスタンスなんて衛兵の立場からしてみれば反乱分子なんだから。
「そう言っていただけると、我々も急いだ甲斐があるというものです。…さて、我々の事情はこれくらいで良いですかね?」
「あ、はい。ありがとうございます」
「では、本題に入りましょう」
そうして、私達やヨルバルトさんたちレジスタンスの面々は今回の事件に関して色々と聴取されるのだった。
とは言っても、私達一座はたまたま成り行きで関わっただけなので、説明の主体は自ずとヨルバルトさんと言うことになる。
ただ、邸に潜入してからの話は私やお嬢様が補足することになった。
一通り話し終えると、リュシアン様は少し考える素振りを見せてから話を始めた。
「…なるほど、今回の事件の黒幕はその『異界の神』を信奉する教団だった…と。仮に『邪神教団』としましょうか。その者たちの目的は正確には不明ですが、『実験』と称して人間に『異界の魂』を取り憑かせる。それは人為的に行えるらしい、と」
「そうです。実際にマクガレン…さんに取り憑いたソレは、異能の力を得て恐怖でこのリッフェル領を支配した」
リュシアン様の総括に私が答える。
「異能の力とは?」
「一つは闇を伸ばして魂を喰らう力。これは、かつてスオージの森に現れた個体も有していた…おそらく基本とも言うべき力です。もう一つは…その…」
「女のコにイケない事をするための力よね」
私が言い淀んでいると、あっけらかんとケイトリンさんが言う。
…いや、そうだけどさ。
もう少しオブラートに包もうよ。
「多分ですが、強力な魅了のようなものだったのでは無いかと。ただ、ケイトリンさんに[聖套]をかけてもらっていたのですが、まったく効果が無かったように思います」
「…また何かドジを踏んでるのでは無いでしょうね?」
「失礼な!バッチリ発動してましたし、効果も切れて無かったですよ!」
疑わしげに確認するリュシアン様に、ケイトリンさんは憤慨して答える。
確かに、[聖套]の効果は切れていなかったと思う。
「異能の力というのは、取り憑かれた個体の性質…欲望や妄執などによって変わってくるらしいです」
「…?それの情報源は何です?」
あ、しまったな…
この話はリル姉さんから聞いたんだった。
う~ん、どうしよう?
リュシアン様だけなら別に話しても良いんだけど…
「カティアさん、その情報はもしかして?」
あ、お嬢様は察してくれたみたい。
「ええ、そうです」
「なるほど…。リュシアン様には?」
話してもいいか?って事だね。
「いいですよ」
「では。リュシアン様、ちょっとよろしいですか」
といって、お嬢様はリュシアン様に耳打ちする。
すると、彼は目を見開いて驚きを顕にする。
「それは…確かにおいそれと公にできる話ではありませんね。カティアさんの事情は私も少しは聞いてるのですが…」
ああ、私の事を聞いてるということは、国王陛下の信任が厚いという事なんだろうね。
国のトップに近い人は結構知ってる人は多いのかな?
…というか、この人の立場を聞いてなかった。
「…あの~、今更なんですけど、リュシアン様って公爵家の方で…え~と、騎士団の…?」
「…これは失礼しました。当たり前のようにご存知だと思うのは傲慢でしたね。申し遅れましたが、私はイスパル王国第一騎士団で副団長を努めておりますリュシアン=モーリスと申します」
「副団長!?」
「第一騎士団の長は国王陛下ですから、実質的なトップですのよ。リュシアン様は史上最年少でその地位についたのですわ。もちろん実力で」
あ、お嬢様が嬉しそう。
うんうん、自慢の婚約者なんだね。
でも、最年少っていっても見た感じ二十歳半ばくらいだよね。
お嬢様は確か十三歳だから…結構年の差があるね。
…ロ○コン?
「…何だか失礼なことを考えてません?」
「いえいえ、そんなことはないですよ?……すみません、話が逸れてしまいましたね。どこまで話しましたっけ」
「異能の力は取り憑かれた者が持つ妄執に起因する、と」
「そうでした。今回のマクガレンさんの場合は、奥さんを亡くしたことが妄執となり…『妻』と称して女性たちを思うがままにするための能力を得た、と思うのです。あくまで、私の予想ではありますが」
「ふむ…辻褄は合っているように思いますね。実は…彼が日中潜伏していたであろう地下の隠し部屋が見つかった…と言うかマクガイア様に教えていただいたのですが…」
ああ、そういえばマクガレンさんの昼間の居場所は分からずじまいだったっけ。
そんな隠し部屋があるんじゃ、そうそう見つかるはずもないか。
ヨルバルトさんも知らなかったんだろうね。
「その部屋は本当にただ眠るだけの殺風景なところだったのですが…唯一、彼の奥方の肖像画だけが飾られてました」
…そうなんだ。
もはや当人の意識など殆ど無かったと思ってたけど。
マクガイア様たちを害さなかった事と言い、例え乗っ取られていたのだとしても、きっとずっと抗っていたのだろう。
彼の行為を正当化することは出来ないけど、最後の最後で彼の魂を救うことが出来て本当に良かった。
「とにかく…スオージの森でも、今回の件でも…身を持って体験しましたが、異能の力は非常に厄介です」
「何れにせよ、『邪神教団』に対する警戒が必要ですね。異界の魂に関しては関係各所、各国に対する注意喚起はすでに行われてますが、追加でこの件も通達せねば…急ぎ陛下にはお知らせするとしましょう」
こうして、今回の件についての報告はあらかた終わったのだが…私にとって重要な話がまだ残っている。
いや、終わった時には既に夜は明けていた。
正しくは事件が終わって一眠りしてから、だ。
ともかく、今はもうすぐ昼時という時間だ。
本来であれば私達一座はとっくにこの街を出ているはずなのだが、もう滞在5日目ということになる。
今日は事後処理のための聴取に参加することになったので、出発は早くても明日以降になってしまう。
ここ数日会っていないけど、ミディット婆ちゃんの怒りは如何ばかりのものであろうか?
幸いにも、一座の滞在にかかる費用はリッフェル伯爵家が負担してくれてるので、その怒りも幾分か和らいでいると良いのだけど。
マクガレンが打倒され、先代領主のマクガイア様が再び領主に返り咲いたことは、朝一番にマクガイア様自らが街に赴いて宣言された。
その時の街の歓声は私が宿泊していた領主邸まで聞こえてきたのだから、現地の興奮度合いが如何程のものだったのかは想像に難くない。
マクガレンについては、偽物がなりすましていて本人は既に害されていた、という説明がなされた。
真実ではないが嘘というわけでもないその話は、特に疑われる事もなく受け入れられたとのこと。
もともとマクガレンさんは清廉潔白な人柄で知られていた事もあって、その話を聞いた住人たちは彼が死んだことを悲しんでくれたそうだ。
実際、彼も被害者だったと言える訳だし、彼の名誉が守られたのは純粋に嬉しいと思えた。
もちろん、これまで課されていた無茶苦茶な税率については即日撤廃。
これまで不当に徴税されたり、差し押さえられたものについても返還されることが約束された。
領主邸に囚われていた女性達も家に帰ることになった。
彼女達に対する賠償についてはこれから協議されることになるが…どのような償いがなされても、そうそう心の傷が癒やされることは無いだろう。
それでも、いつかは前向きに生きて行ける日が来ると信じたい。
リタさんたち三人とは、邸を去っていく際に話をすることができた。
私達が事件解決のために乗り込んできたのを知ると、涙を流しながら感謝してくれた。
女性達の心の傷を思うと素直に事件解決を喜べなかったのだが、それで幾分かは心が軽くなった。
直近の対応はこれくらいで、リッフェル家の処遇や積極的に悪事に関わっていた者に対する処断などは、これから国も入って調査した上で決定される。
何もかもが万事解決…とはならないけど、とにかくこれでリッフェル領は以前の活気を取り戻すことができるだろう。
現在は事件のあらましについて、私達も含めた関係者から聴取が行われているところだ。
取り纏めはリュシアン様。
マクガイア様は領内の事後処理にあたっているため不在であるが、先に一通りの聴取はされたとのこと。
「さて、皆さんには時間を取っていただいて感謝いたします。早速ですが、順を追って事件のあらましを確認させてください。とは言っても、昨日に至るまでのことはケイトリンから報告を受けてますので、主には潜入作戦が開始されてからの事を中心にお聞かせ頂ければ、と思います」
「その前にお聞きしたいのですけど…よろしいでしょうか?」
「ええ、私にお答えできることでしたら何なりと」
ちょっと気になる事があったので聞いてみると、許可を貰えたので続けて質問してみる。
「今回の事件…国で把握したから騎士団が動いたと思うのですけど、どれくらい前から情報を押さえていたのですか?」
「そうですね…兆候を察したと言う意味でしたら一月ほど前でしょうか。国が派遣している官僚も情報操作に加担していたらしく、報告書などでは判明しませんでしたが…人の口に戸は立てられませんから」
「でも、噂だけで騎士団を動かすなんて出来ないからね。私が内偵のため先行してリッフェル領に入ったんだ。それが三週間ほど前かな」
リュシアン様の言葉を引き継いでケイトリンさんが説明する。
「で、レジスタンスの存在を知ってね。差押えで住む場所を失った可愛そうな町娘を演じて参加したんだ。情報収集するには手っ取り早いと思ったし」
ふむふむなるほど。
まあ分かる話かな。
「でも、ヨルバルトさんはなんか気付いてたっぽいね?」
「確信はしてませんでしたけど。…ケイトリン、あなた騎士の癖がたまにでるんですよ。敬礼とか」
「…」
「まあ、国が動いてくれてるなら…と、乗っかることにしたのですけど」
「…結果オーライ!」
「…減俸」
「何でですっ!?…ま、まあ、とにかく。そんな訳でレジスタンスに入ったんだけど、正直それも必要ないくらいすぐに状況証拠が出るわ出るわ…という事で割とすぐに派遣要請を出したのよ。だけど…」
「いくら国と言えども状況証拠だけで自治権を持つ領に対して騎士団を派遣するとなると、慎重にならざるを得ないのです」
「まったく…そんなのリュシアン様があとで始末書書けば良いだけの話でしょーが」
「はぁ…簡単に言ってくれますね。もちろん、それくらいの覚悟でかなり無理を通したんですよ」
「それでも間に合わなければ意味がないですね!」
「…ふむ。上司に対する度重なる暴言。これはやはり減俸を…」
「いや~、素早い判断で迅速な派遣。流石はリュシアン様です!」
う~ん…この二人、やっぱり面白いなぁ…
ケイトリンさんもかなり言いたい放題だけど、それも信頼関係があるからだろうし。
お嬢様が嫉妬するのも少し分かるかな?
あ、チラっと見たら、ぷくーっ、て頬を膨らませてむくれてる。
なんか可愛いなぁ…
「でも、最終的に事態を収めるのにレジスタンスのメンバーだけでは難しかったでしょうから、そういう意味では丁度よいタイミングで助かりました」
と、ヨルバルトさんがフォローする。
まあ、実際その通りだったのだろう。
レジスタンスなんて衛兵の立場からしてみれば反乱分子なんだから。
「そう言っていただけると、我々も急いだ甲斐があるというものです。…さて、我々の事情はこれくらいで良いですかね?」
「あ、はい。ありがとうございます」
「では、本題に入りましょう」
そうして、私達やヨルバルトさんたちレジスタンスの面々は今回の事件に関して色々と聴取されるのだった。
とは言っても、私達一座はたまたま成り行きで関わっただけなので、説明の主体は自ずとヨルバルトさんと言うことになる。
ただ、邸に潜入してからの話は私やお嬢様が補足することになった。
一通り話し終えると、リュシアン様は少し考える素振りを見せてから話を始めた。
「…なるほど、今回の事件の黒幕はその『異界の神』を信奉する教団だった…と。仮に『邪神教団』としましょうか。その者たちの目的は正確には不明ですが、『実験』と称して人間に『異界の魂』を取り憑かせる。それは人為的に行えるらしい、と」
「そうです。実際にマクガレン…さんに取り憑いたソレは、異能の力を得て恐怖でこのリッフェル領を支配した」
リュシアン様の総括に私が答える。
「異能の力とは?」
「一つは闇を伸ばして魂を喰らう力。これは、かつてスオージの森に現れた個体も有していた…おそらく基本とも言うべき力です。もう一つは…その…」
「女のコにイケない事をするための力よね」
私が言い淀んでいると、あっけらかんとケイトリンさんが言う。
…いや、そうだけどさ。
もう少しオブラートに包もうよ。
「多分ですが、強力な魅了のようなものだったのでは無いかと。ただ、ケイトリンさんに[聖套]をかけてもらっていたのですが、まったく効果が無かったように思います」
「…また何かドジを踏んでるのでは無いでしょうね?」
「失礼な!バッチリ発動してましたし、効果も切れて無かったですよ!」
疑わしげに確認するリュシアン様に、ケイトリンさんは憤慨して答える。
確かに、[聖套]の効果は切れていなかったと思う。
「異能の力というのは、取り憑かれた個体の性質…欲望や妄執などによって変わってくるらしいです」
「…?それの情報源は何です?」
あ、しまったな…
この話はリル姉さんから聞いたんだった。
う~ん、どうしよう?
リュシアン様だけなら別に話しても良いんだけど…
「カティアさん、その情報はもしかして?」
あ、お嬢様は察してくれたみたい。
「ええ、そうです」
「なるほど…。リュシアン様には?」
話してもいいか?って事だね。
「いいですよ」
「では。リュシアン様、ちょっとよろしいですか」
といって、お嬢様はリュシアン様に耳打ちする。
すると、彼は目を見開いて驚きを顕にする。
「それは…確かにおいそれと公にできる話ではありませんね。カティアさんの事情は私も少しは聞いてるのですが…」
ああ、私の事を聞いてるということは、国王陛下の信任が厚いという事なんだろうね。
国のトップに近い人は結構知ってる人は多いのかな?
…というか、この人の立場を聞いてなかった。
「…あの~、今更なんですけど、リュシアン様って公爵家の方で…え~と、騎士団の…?」
「…これは失礼しました。当たり前のようにご存知だと思うのは傲慢でしたね。申し遅れましたが、私はイスパル王国第一騎士団で副団長を努めておりますリュシアン=モーリスと申します」
「副団長!?」
「第一騎士団の長は国王陛下ですから、実質的なトップですのよ。リュシアン様は史上最年少でその地位についたのですわ。もちろん実力で」
あ、お嬢様が嬉しそう。
うんうん、自慢の婚約者なんだね。
でも、最年少っていっても見た感じ二十歳半ばくらいだよね。
お嬢様は確か十三歳だから…結構年の差があるね。
…ロ○コン?
「…何だか失礼なことを考えてません?」
「いえいえ、そんなことはないですよ?……すみません、話が逸れてしまいましたね。どこまで話しましたっけ」
「異能の力は取り憑かれた者が持つ妄執に起因する、と」
「そうでした。今回のマクガレンさんの場合は、奥さんを亡くしたことが妄執となり…『妻』と称して女性たちを思うがままにするための能力を得た、と思うのです。あくまで、私の予想ではありますが」
「ふむ…辻褄は合っているように思いますね。実は…彼が日中潜伏していたであろう地下の隠し部屋が見つかった…と言うかマクガイア様に教えていただいたのですが…」
ああ、そういえばマクガレンさんの昼間の居場所は分からずじまいだったっけ。
そんな隠し部屋があるんじゃ、そうそう見つかるはずもないか。
ヨルバルトさんも知らなかったんだろうね。
「その部屋は本当にただ眠るだけの殺風景なところだったのですが…唯一、彼の奥方の肖像画だけが飾られてました」
…そうなんだ。
もはや当人の意識など殆ど無かったと思ってたけど。
マクガイア様たちを害さなかった事と言い、例え乗っ取られていたのだとしても、きっとずっと抗っていたのだろう。
彼の行為を正当化することは出来ないけど、最後の最後で彼の魂を救うことが出来て本当に良かった。
「とにかく…スオージの森でも、今回の件でも…身を持って体験しましたが、異能の力は非常に厄介です」
「何れにせよ、『邪神教団』に対する警戒が必要ですね。異界の魂に関しては関係各所、各国に対する注意喚起はすでに行われてますが、追加でこの件も通達せねば…急ぎ陛下にはお知らせするとしましょう」
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