【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
91 / 683
第四幕 転生歌姫の世直し道中

第四幕 エピローグ 『特別公演』

しおりを挟む
 神界で思う存分に稽古をつけてもらって、私達は現実世界に帰ってきた。
 肉体的な疲労はないが、流石に精神的な疲れを感じる。
 だが、とても有意義な時間だった。

「いや~、まさかディザール様に稽古をつけてもらえるとは思わなかったね」

「そうだな、貴重な経験をさせてもらった」

「カイトはやっぱり攻撃面を意識してたんだよね?」

「ああ、今後のことを考えるとな。神聖武器の入手は目処が付きそうだし、あとは自分自身の攻撃力の強化が必要だ」

「聖剣か~。すんなり入手できると良いんだけど」

「そうだな…俺も、神託があるとはいえ伝説級の武器をそう簡単に渡して貰えるかは少し心配だ」

 まあ、そこはイスパルナに行ってからだね。







 さて…もう用事は終わったし領主邸に戻ろう、ということで帰路に就く。
 その途中、街の中央広場で何やら人集りが見えた。

 街全体がお祭り騒ぎで浮かれている中でも、とりわけそこは盛り上がっている様子。
 時折歓声が上がって、随分と楽しそうな雰囲気だ。

「なんだろう?随分と盛り上がっているけど」

「そうだな。ここからだと何をやってるのかは分からないが…」

「行ってみよう!」

 楽しそうな雰囲気だし、何だか面白そうだ!
 カイトは苦笑してるけど、やっぱり気になるじゃない?



「カティア!」

「ママ~!パパ~!」

「へっ?あ、婆ちゃん!ミーティアも!」

 人集りに向かっている途中、誰かに声をかけられたと思ったらミディット婆ちゃんとミーティアだった。
 ここで何してるんだろ?

「おや、カイトも一緒かい」

「ええ、こんにちは、ミディットさん。ミーティアも起きたんだな」

「ミーティア、身体は大丈夫なの?」

「うにゅ?大丈夫だよ?」

 うん、問題ないみたいだね。
 十分寝て今日も元気一杯のようだ。

「いきなり大きくなってたから、私ゃ驚いて腰が抜けたさね」

 そうだろうね…
 昨夜と同じく、今のミーティアは5歳くらいの大きさに成長した姿のままだ。

「私を助けようとして、こうなったみたい。ミーティア、ありがとうね。助けに来てくれて嬉しかったよ」

 と、頭をナデナデしながらお礼を言うと、嬉しそうに目を細める。
 こうして見ると、少し大きくなっても変わらないね。

「えへへ~」



「そう言えば、婆ちゃん達はここで何してたの?」

「ああ、アレさ」

 と言って婆ちゃんが指差したその先には…

「あ!そういう事かぁ…」

 そこには即席の舞台が作られていて、ウチの一座の面々が劇を演じているところだった。

「ダードがね、町が解放された事を記念して特別公演だ!とか言ってね」

「へぇ…流石は父さん、粋だね」

「ふん、散々面倒を掛けておいて調子のいいこった」

 やれやれ、といった感じで言ってるけど、婆ちゃんの顔には嬉しそうな笑みが浮かんでいる。

「でもさ、何だか懐かしいね…」

「ん?…ああ、そうだねぇ。昔はこうして広場の一角でやったもんだね」

 今でこそ一座の規模も大きくなって、ちゃんとした劇場やホールを使って、スケジュールもきっちり組んで公演するようになったけど、昔は街を転々としながらこうした街角で気軽にやっていたんだよね。

「今も凄くやりがいがあるけど、昔のこうした雰囲気も好きだったな…」

「そうかい…そう思ってくれてたのなら私も何だか嬉しいねぇ…」

 今演じてるのも、その頃の演目だ。
 ぶっつけ本番で皆よく覚えてるもんだね。
 あの頃はまだまだ荒削りで洗練されてなかったけど、今みたいに盛り上がっていたし、何より観客が近くて一体感があったよね。

 うん、たまにはこういうのも良いね。
 私も混ざりたいなぁ…

 そう思っていると、カイトが私の手を引く。

「カティア、俺達も行こう」

「え?」

「もうすぐ劇もクライマックスだ。次は俺たちがやらないか?あそこにリュートも置いてある」

「!…うん!もしかして、カイトはこれがデビューになるのかな?」

「ふふ、いきなり大舞台に出るよりは良いかもしれん」

「ミーティアも行く!」



 やがて劇はクライマックスを迎え、観客からは惜しみない拍手が贈られる。
 その中に私達は飛び込んでいく。

「おお、カティアか!」

「父さん、ずるいよ!こんな楽しそうなイベントに私達を呼ばないなんて!」

「あら~、デートの邪魔したら悪いでしょ~」

「もう!変な気を使って…次は私達の番だよ、カイト!」

「ああ、いつでもいいぞ、なんの曲だ?」

 もうすでにリュートを構えてスタンバイしているカイトが問う。
 観客たちは再び始まる何かに期待して、私達に注目する。

 う~ん、何にしようかな?
 やっぱり明るい曲だよね。

 長い冬が終わり、暖かな春の到来を告げる歌。
 少し遅い春の訪れを祝福しようじゃないか。

 私のリクエストに応えて、カイトがリュートを弾き始める…

 始めはゆっくりと、静かに…柔らかな日差しに少しづつ雪解けが始まるイメージ。

 私もそれに合わせてゆっくりと歌声を紡いで行く。

 やがて花が芽吹き、その香りを優しい風が運び、命あふれる季節が訪れる。



 私の歌声に合わせて、ミーティアもら~ら~ら~、と歌い始めた。

 小さな可愛い子が一緒に歌う姿に観客達は一層盛り上がる。








 辛く苦しいときを耐え忍び、ようやくこの解放の日を迎えた。
 もう、リッフェル領は大丈夫。


 思えば、ここに来てから人の様々な側面を見た。

 弱者に理不尽を強いる残酷さ。
 理不尽に立ち向かう強さ。
 自分が苦しくても他の人を思いやれる優しさ。
 愛する人を失って、何もかもを失った弱さ。

 そして、人の弱さに付け込み野望を成そうとする者たちがいる。
 断じてそれを許すことは出来ない。


 私は、この人々のささやかな幸せを守りたい。
 私の歌で皆を笑顔にしたい。

 そのためにも、歴史の裏で暗躍する者たちを阻止しなければならない。

 例え神から授かった力があっても、私一人で成せることはそれほど多くはない。
 でも、私は一人じゃない。
 いかな強大な敵であろうとも、力を合わせればきっとなんとかなる。

 先ずは自分のできる事をする。
 成すべきことを成す。

 そう、決意を新たにするのであった。





ーー 第四幕 転生歌姫の世直し道中 閉幕 ーー
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...