【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
94 / 683
第五幕 転生歌姫ともう一人の転生者

第五幕 プロローグ 『旅の再開』

しおりを挟む
 リッフェル領の事件も無事に解決し、私達一行は王都に向けての旅を再開した。
 思いがけず足止めされてしまったが、別に急ぐ旅でもない。



 そうして旅を再開した私達に、道中を共にする仲間が増えた。


「護衛…ですか?」

「ええ。まあ、形だけのような気もしますが…」

「ですよね~。私なんてこの中じゃみそっかすですよ」

 私の問に、新たに道中を共にすることになったリュシアンさんが、一座の面々を見渡しながら答え、ケイトリンさんがそれに同意する。
 いや、みそっかすって…
 あなたも十分強いでしょう。


 …そう、リュシアンさんとケイトリンさんが王都まで一緒することになったのだ。

 しかし、護衛ね…
 私が護衛対象って事なんだろうけど、ウチの一座だけで事足りるからねぇ…
 そもそも私自身が自衛できるし。

 でも、リュシアンさんの立場としては王族(私)がプラプラしてるのを放っておけないのは理解できるし、旅の仲間が増えるのは単純に嬉しい。

 ちなみに、『リュシアン様』はやめてくださいと言われたので、『リュシアンさん』と呼んでいる。

 同じようにお嬢様も『ルシェーラ』と呼ぶ事になった。
 私としてはイメージ的に『お嬢様』なんだけど。
 まあ、もう既に友人だと思ってるし、それで良いかな。

 逆に私も『様』はやめてくれと言ってるので、『カティアさん』と呼ばれてる。

 ルシェーラには敬語も止めてくれと言われたので、普通に話すようにしてるのだけど…あなたも敬語じゃない?と言ったら『私はこれが普通ですわ』との事。



「でも、お嬢…ルシェーラに聞きましたけど、彼女よりもお強いんですよね。だったら形だけなんて事はないと思いますけど」

「そう言ってもらえると。ですが、しばらく会わないうちにルシェーラは随分と実力を伸ばしたようですね。もう、私とそれほど差はないと思いますよ。うかうかしてられませんね」

「本当ですか?嬉しいですわ」

 本当に嬉しそうだ。
 婚約者に褒められて喜ぶ姿は微笑ましいけど、内容は色っぽくないね。
 乙女としてどうなんですか、それは。

「やはり実戦に優る鍛錬はないという事ですね。事務仕事ばかりでは鈍る一方ですよ」

 実質的な騎士団のトップだものね。
 指揮はしても直接戦闘をする機会は少ないのかも。

「じゃあ、今度私と手合わせしません?」

「姫さ…カティアさんと、ですか?」

「これでもAランク冒険者ですから。鍛錬相手になれると思いますよ?私も強い人と戦ってみたいですし」

「あ、カティアさん、私も是非お願いしたいですわ」

 そこでルシェーラも食いついてくる。
 ブレないね。

「では、モーリス領に着いたら公爵邸の訓練場で…」

「ふふふ~、ディザール様に稽古もつけてもらったし、色々試したかったんですよね~」

「「え…?」」

「…カティアさん、ディザール様にもお会いしたのですか?」

「うん。カイトも一緒だよ」

 ちなみにカイトは、ミーティアに御者をやってみたいとせがまれて一緒に御者台の上だ。
 そう言えば、ミーティアに助けに来てくれた時のことを聞いたのだけど…あまり覚えていないらしい。
 シギルを発動したことも、転移魔法を使ったことも覚えておらず、リーゼさんがガックリしていた。


「ディザール様に稽古を…羨ましいですわ…」

「いや~、全く手も足も出なくて二人ともコテンパンにされたよ。最後の方は二人がかりだったのに…もう、全然駄目だった!」

「…何でコテンパンにされて嬉しそうなの?カティアちゃんてMなの?」

「ち、違いますよ!強い人と戦えばいい訓練になるじゃないですか!」

「…ケイトリン?不敬な発言は上司として見過ごせませんよ?」

「いいじゃないですか~、カティアちゃんだって変に気を遣われるのはイヤでしょ?」

「ふふ…そうですね。変わらなく接してくれる方が嬉しいです」

「ほら!何せ私達はガールズトークした仲ですからね!」

 やっぱりケイトリンさんは面白いね~。
 最初あった時とは全然イメージが違うよ。
 …演技とか向いてるのでは?






 そんな、相変わらずゆる~い話をしながら私達は街道を進んでいく。

 まだリッフェル領は出ていないが、もう盗賊には出会わない。
 領内の各町村に速やかに通達が巡ったのだろう。
 直ぐに元の生活に戻るのは難しいかもしれないけど、そこはもとに戻った領主様や、ヨルバルトさんが何とかしてくれるに違いない。


 やがて街道はゆるやかに傾斜し始め、登り道になっていく。
 これからリッフェル領とモーリス領の間、最高地点のフィラーレ峠までずっと登りだ。
 街道は馬車も通る広い道なので、なるべく勾配が緩やかになるルートになっているが、確実にスピードは落ちるだろう。
 それほど急峻な地形というわけではないが、ブレゼンタム~王都まででは一番の難所と言える。

 今日の宿泊予定地はフィラーレ峠の少し手前にある、フィラーレの町だ。
 人口千人程度の小さな町なのだが、難所の宿場であるという事と、とある理由で町の規模以上に賑やかであると言う。
 その理由とは…

「いや~、楽しみだなぁ。フィラーレ温泉と言えば王国でも屈指の保養地だからね!こっちに来るときは素通りだったから、帰りは絶対よって行こうと思ってたのよ」

 そう。
 ケイトリンさんが言った通り、フィラーレの町は温泉街…所謂リゾート地という事だ。

 この世界では入浴の習慣もあるし、温泉地をリゾートとして楽しむ文化もある。

 前世日本人としても非常に楽しみである。

「…でも、ウチはそんなに高級ホテルには泊まれませんよ?リュシアンさんとかはもっと相応しいところに泊まったほうが…」

 ルシェーラはお忍び名目で私達と一緒の宿に泊まったりしてたけど、あの閣下の娘だしなぁ…って、そこまで気にはしてなかった。
 でも、流石に公爵子息が普通の宿に泊まるってのはどうなんだろ?

「お気遣いありがとうございます。ですが、その心配は無用ですよ。私は騎士ですから、遠征で野宿も慣れてますし、軒先を借りて雨風を凌いだこともあります(それに、姫を差し置いてそのような事ができるはずも無い)」

 と、話が聞こえたのか、父さんがこちらにやって来て言う。

「おう、それなんだがな。今回は一座の慰労も兼ねて、結構奮発しようと思ってる。そこそこのグレードのところにしようか、って話をしてたところだ」

「ほんと!?じゃあ私、『フィラーレ・ロイヤルリゾートホテル』がいいな!」

「バカ言うな。そりゃあ、『そこそこ』じゃなくて最高級じゃねぇか。流石にそんなとこ泊まれるわけねえだろ。…まあ、そこは無理だが、高級ホテルと言ってもいいくらいのとこにはしようかと思ってる」

「やったね!…でも、ミディット婆ちゃんの許可は取ってるの?」

「ああ。と言うかババァが言い出したことだ。…何か天変地異の前触れじゃなきゃいいんだが」

「何言ってるの。婆ちゃんは厳しいけど、いつも皆のことを考えてくれてるよ」

「…お前たちに向ける優しさの十分の一でも俺らに向けてくれりゃあ言うことねえんだがなぁ」

 それだけ気のおけない関係ってことでしょ。




 段々勾配もきつくなり、木々の緑も濃くなって山道の様相を呈して来た街道を進むこと数時間。
 一座の一行は日が落ちる前には今日の宿泊地であるフィラーレの町に到着するのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...