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幕間

幕間6 『レティシア』

 私の名前はレティシア=モーリス、15歳の女の子だ。

 突然だが、私には前世の記憶がある。
 いわゆる転生者と言うやつだ。
 それも、異世界転生だ。

 何言ってんだ、頭大丈夫か?
 そう言われるのは分かってるけど、事実だからしょうがない。

 自分が転生したと気づいたのは、5歳の時だが…
 まあ、その時の話は別の機会で。


 ともかく私はこの世界に転生し、それから色々あったわけだが…今は夢の実現のために頑張っている。

 この世界に鉄道を開通させる。
 それが今の私の夢だ。

 荒唐無稽とも思えたその夢は、少しづつ協力者も増えて…あともう一歩のところまで来た。
 既に基礎的な技術は確立され、国家事業としても認可を受けて…あとは初の開業路線区間であるイスパルナ~王都間の工事と、営業に向けた細かな調整を行なうのみとなっている。

 彼女と出会ったのはそんな時だった。


 不思議な色合いの美しい髪に菫色の瞳の女神の如き美貌の少女。
 事前に父に聞いていた話では彼女は15年前に行方不明になっていた王族の娘…つまりはこの国の王女と言う事だったのだが、それよりも衝撃的なことがあった。

 王族の方ということなので少しアピールしておこうかな、と思って私のこれまでの活動の集大成である魔導機関車を見せようと機関庫に案内したのだが…

「これは…まさか、『蒸気機関車』?」

 魔導機関車を見た彼女が呆然とした様子でつぶやいたのだが、その言葉の中にありえない単語が混じっていた。

 『蒸気機関車』だって!?
 いや、私の聞き間違いか…?
 鉄道車両を開発する過程で蒸気機関も検討したのだが、それは断念している。
 私が知る限り、この世界には蒸気機関はまだ存在しないはず…

 そう思っていると、今度ははっきりと間違いようもなく彼女は言った。

『レティシアさん、これは蒸気機関車なんですか?』

 !!
 聞き間違いなんかじゃない!

 この世界に転生したと分かったときから、もう二度と聞くことはないと思っていた言葉、日本語だ。
 つまり、彼女は私と同じ…

『!!…いえ、機関車には違いないけど、蒸気で動くものではないですよ。私達は魔導力機関車と呼んでます』

 私は呆然としかけたが、かろうじて返事をする。
 もう二度と話すこともないと思っていた日本語は、自分でも意外なほどスムーズに口にする事ができた。

 私のその言葉で、彼女も私が転生者であることを確信したようだった。


 彼女ともっと話がしたい…!

 だが、その場では他の人もいたのでそれ以上の話をすることはできなかったので、後で二人きりで話ができるようにこっそり約束をした。


 最初は驚きが大きく、とにかく話がしたいという気持ちしか無かったが…
 改めて二人きりになって、お互いが日本からの転生者であることをハッキリと確認したとき…抑えることのできない想いが急激に湧き上がってきた。
 その感情に突き動かされて思わず彼女に抱きついて泣いてしまった。

 うう…恥ずかしい…

 だけど、それで素直な気持ちを吐露したおかげで、私とカティアはすぐに打ち解けることができたと思う。


 もう、すっかり吹っ切れたと思ってたけど、やはりそう簡単に忘れることなどできないと言うことなのだろう。
 今まで家族に支えられて、この世界での生き甲斐も見つけて…ただ眠っていただけの前世の世界への思慕が呼び起こされた…そして、私と同じ転生者がいることに、これ以上ないくらいの喜びを感じだんだ。


 それから、いろいろと話をした。
 彼女はとても気さくで話しやすく、私とも気が合ってすぐに仲良くなることができた。
 転生の経緯は少し違うものの、私と同じく前世が男だという事も気が合う要因だったのかもしれない。
 その事でアドバイスを貰ったりもしたが、まあ自分自身はなるようにしかならないと達観してたりもする。

 彼女は彼女で、自分が王族である事と旅芸人一座の歌姫でもあることの板挟みで悩んでいるようでもあったので、私からもアドバイスさせてもらった。
 急に自分が王族であると知ってもその責務を果たそうと考えるあたり、すごい生真面目なんだな~、と思った。

 結局、遅い時間まで盛り上がってしまったが、最後の彼女の一言で新たにやることが出来てしまい、慌ただしく彼女の部屋を退出した。

 営業開始までに、駅弁の計画を進めねば…!
 先ずはウチの料理長にメニューの相談に乗ってもらわないと…それから業者選定の手はずとかも。
 いろいろ検討し始めたら結局日が昇るまで考え込んでしまった…
 前に徹夜したときにリディーに怒られてしまったし、少しでも寝ておくことにした。



 カティアはこれから王都に向かうらしいし、今日ここで別れてもまた会うことができる。
 だけど何だか離れ難く、いろいろと興味もあったので今日一日彼女に付き合うことにした。

 列車の準備はリディーに伝言してお願いすることにした。
 もう私が細かく指示しなくても色々なことが回るようになってきてるし、なんの心配もないだろう。


 鍛錬場では彼女たちの実力の一端を見ることができた。
 美貌の歌姫で凄腕の冒険者で大きな街一つを救う程の活躍を見せた英雄で…この国のお姫様って、転生チートを地で行ってるわ。
 と思ってたら、そのあとに私も十分チートでしょって言われることになったのだが。


 その後はディザール様の聖剣を借りるとかで総本山へ。
 改めて聞くと凄い話なんだけど、それだけの難敵を彼女たちは相手してるってことなんだね。

 神殿では私も試練に挑むことに。
 少しでも彼女の力になりたくて、自然に口にしてたのだが役に立てただろうか?
 ちょっと魔法には自信があったのだが、私がいなくても彼女たちならきっと問題なかっただろうな、と思ったのだが…

 カティアとカイトさんの印シギルの力は凄まじく、ドラゴン相手に肉弾戦を挑めるほどのものだった。
 ミーティアちゃんも剣も魔法もかなりの腕前だし、一座の他の皆さんも猛者揃いと言う事だし…
 やっぱり私には冒険者は無理だな~、って結論に達したよ。




 そして、出発のとき。

 これで一旦お別れかと思うと少し寂しいけど、またすぐに会うことができる。

 カティアも学園に誘ったのだが、ほんとに一緒に学生生活ができたら凄く楽しそうだと思う。
 何とか考えてくれないかな?


 そんな、未来への希望を乗せて、私の…いや、私達の列車は出発したのだった。
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