【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
132 / 683
第六幕 転生歌姫の王都デビュー

第六幕 16 『テンプレ』

しおりを挟む
 午前中の稽古が終わって、私とミーティア、ケイトリンはギルドに向かう。

 ルシェーラは侯爵邸に帰って行った。
 …一人で。
 相変わらずの放任主義ですな。

 王都のギルドには転入手続きのため一度訪れている。
 場所は第一城壁大西門にほど近い広場に面したところ。
 劇場からは結構遠いから辻馬車を使っても良いのだけど…徒歩とそれほど時間が変わるわけではないし、散策がてらには丁度いい距離だ。
 これが王城を挟んで反対側だったりすると、さすがに徒歩ではゲンナリするけど。
 レティの鉄道が成功すれば路面電車とかも出来るかもね。


「カティアさま、ギルドには何の用事で?」

「『様』付けじゃなくてもいいよ?」

「いや~…マリーがうるさいし、咄嗟に切り替えできなさそうだし、普段から慣らしておかないと」

「そう…じゃあしょうがないね。で、ギルドなんだけど、どうやら指名依頼があるみたいで連絡が来てたんだ」

「指名依頼…ですか?」

「うん。まあ、予定も色々詰まってるから受けるかどうかは分からないのだけど、話だけでも聞いておこうかと思ってね」

 個人を名指しで依頼する指名依頼は、通常よりも報酬が割高になるので冒険者にとっては積極的に受けたいものだろう。
 当然、実力があって名が売れているという事が前提になる訳だが。

 私はこう見えてもAランク…事によったらSになるかも知れないし、ブレゼンタムの軍団レギオン襲来の一件で名前も売れている。
 …あの二つ名と共にね。

 だから、私宛に指名依頼が来ることはそれほど不思議なことではない。
 私がダードレイ一座の歌姫である事、その一座が王都に本拠を移したことを知られているというのも関係があるのだろう。

「なるほど~。さすがはカティアさま。冒険者としても一流で、もはやその名を知らぬ者は無し!ですもんね」

「いや、そこまでじゃないと思うけど」

「そんなこと無いですよ!ブレーゼン領の事件の話はこっちでもニュースになりましたし、『聖光の歌姫ディーヴァ・アストライア』の活躍も伝わってますから。あとは、吟遊詩人が挙って詩にしてますね」

「…それ、どんなの?」

 聞くのが怖い…

「曰く、戦場に轟く神の怒槌の如き雷撃をもって万の敵軍勢を尽く屠り阿鼻叫喚の地獄絵図と化し、ひとたび歌えば万軍を死をも恐れぬ地獄の軍勢に変える…と」

 表現が物騒すぎる!?
 どこの魔王の所業なの、それは…
 敵も味方もだいぶ水増しされてるし。

「大袈裟すぎるよ。雷撃の魔法で削れたのはせいぜい千くらいだし、そもそも敵軍勢は5千、味方はそれより少ないくらいだったし」

「まあまあ、そう言うのは誇張されるもんだし、民衆にはその方がウケますしね。そもそも魔法で千の敵を倒すのは『せいぜい』ってレベルじゃないと思いますけど…。まあ、国には正確な情報がちゃんと伝わってますし、心配はいりませんよ」

「はぁ…」

 公演とかに変な影響が出なければいいけど…






 暫く街中を歩いて、第一城壁大西門の近傍にあるギルドまでやって来た。
 請負人相互扶助組合イスパル王国統括本部、と言うのが正式名称だ。
 もちろんそんな長ったらしい名前で呼ぶ者は皆無だが、その名の通りイスパル王国内のギルドを統括しているところだ。
 因みに全ギルドを統括する総本部はアスティカントにある。

 国内の取りまとめを行ってると言うだけあってブレゼンタムよりもかなり大きい建物だが、雰囲気は似たような感じだ。
 開放されている大きな扉から中に入ると、既にピークは過ぎているにも関わらず随分多くの人がいる。

 一先ず指名依頼の話を聞くためにカウンターの受付の一つに向かう。
 それなりに人が多いとは言えカウンターに並ぶほどではないので、待つことなく受付へ。

「こんにちは、本日はどのような御用でしょうか?」

「はい、私宛に指名依頼が来ていると連絡を受けまして…」

 と、ギルド証を提示しようとしたとき、隣の窓口にいた冒険者の男が話しかけてきた。

「おいおい、何の冗談だ?こんな細っこい嬢ちゃんに指名依頼だとよ!子守の依頼か何かか?」

「「「ははははっ!!」」」

 ?
 ああ…今の私の格好は確かに冒険者には見えないだろうね。
 ミーティアも連れてるし、子守というのも間違ってないかも。

 まあ、そんな周りの反応も気にせずにギルド証を取り出して受付のお姉さんに渡す。

「!…カティア様ですね、確認いたします」

 ギルドカードを見て一瞬驚いた表情を見せたお姉さんは、しかし直ぐに気を取り直して確認を始めた。

 周りも私の金色のギルド証を見てざわつき始める。
 と言うかそんなにジロジロ見て、この人達暇なの?

「Aランクだと!?てめえみてえなガキが何で!?」

 いや、何でって。
 大体この世界って見た目じゃ実力は測りにくいんだし、あんたこそ何でそんなに驚くのさ。
 …ミーティアみたいなのは流石に例外だろうけど。

「おい、お前ぇ、どんなズルしたんだ?ああ?」

「はいはいそこまでね。それ以上この人に絡むようだと私も黙っちゃいられないよ?」

 しつこく絡もうとする男に向かってケイトリンが警告する。
 彼女は略装だが騎士の出で立ちなので、男もその素性は即座に理解したらしい。

「けっ!何でぇ、騎士様が護衛についてるってこたぁお貴族様ってことかい。やっぱ金かなんかでランクを買ったんだな」

 周りの冒険者たちの何人かも、男に同調するようにニヤニヤ笑って眺めてる。

「はぁ…王都のギルド員には随分レベルが低いのがいるんだね」

「んだとぉっ!?てめえ!!」

 あ、思わず本音がポロッと出てしまった。
 馬鹿はほっときゃいいと思って無視してたのに、あまりのおバカっぷりに、つい…

「お金でランクなんて買えるわけ無いでしょ。そんな事大声で喋ってたら、ギルドから怒られるよ?ねえ、お姉さん」

「え?え~と……そうですね。確かに今の発言はギルドと言う組織そのものを侮辱しているとも受け取られかねません。度が過ぎれば処罰の対象になりますよ」

 お?
 話を振った私が言うのもなんだけど、荒くれにも萎縮せずに毅然と言い放つとは…なかなかやるもんだね。

「はっ!信じられるかよ、こんなガキがAランクになんかなれるわけねーだろが」

「「「そうだそうだ!!」」」

 うるさいな~…
 もう面倒だからまとめて…

「ね~、ママ…このおじちゃんたちあんまり強くないのにぼうけんしゃなの?危なくないの?」

「ミーティア、冒険者の仕事は討伐だけじゃないよ?採取依頼とか街中の雑用だって…大事な仕事はたくさんあるの」

「あ、そっか~」

「うわ~…この母娘おやこ、なんてナチュラルに煽るんだろ…恐ろしい」

 やだなぁ、ケイトリン…煽るだなんて人聞きの悪い。
 事実を言っただけだよ。


「ふ、ふ、ふ…」

 あれ?
 身体を震わせて…笑ってる?

「ふざけんなぁーーっ!!!」

 違った。
 突然、男は激昂して殴りかかってきた。
 ……おっそ。

 何か風呂に入ってるのかも怪しげだったので、間合いは詰めながらも極力触らないように体捌きを駆使しつつ服を掴んでフワッと投げ飛ばす。
 隅落すみおとし…空気投とも言われる、投げ技の極意の一つだ。

 男は呆気なくコロッと地面に転がった。
 何が起きたのか分からずにキョトンとした表情を晒す。

 地面に叩きつけられないように一応気を使ったので、怪我もしてないし痛くもないはずだ。

「お見事!いや~、物凄くキレイな投げ技でしたよ。カティア様、無手でも強いですよね」

「ふふ、ありがと。…護衛なんじゃないの?」

「いや、今のは別に必要なかったでしょう?」

「まあ、そうだけど」

「ママ!かっこいいの!」

 投げられた男は毒気を抜かれて呆けている。
 これ以上絡まれても面倒なので、もうひと押ししておくか。

 私は少しだけ意識を戦闘モードにして…いわゆる『闘気』とか『剣気』とでも言うようなものを男に浴びせる。
 何なら魔力も込める。
 それを受けた男は、ビクッとなり…転がったままこちらを見上げる。

「…一つ忠告を。見た目で侮るようでは長生きできませんよ?魔物相手でも、人間相手でも」

 コクコクと男は何度も頷いて後退りし、慌てて立ち上がってそそくさと立ち去っていった。
 周りで一緒に馬鹿にしていた一部の冒険者たちも同様だ。




 しかし、定期的にあんなのに絡まれる気がするよ。
 まあ、何度も繰り返されるのがテンプレのテンプレたる所以ということか。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...