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第六幕 転生歌姫の王都デビュー

第六幕 18 『エメリール神殿総本山』

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「はい、これがミーティアちゃんのギルド証ね」

「うわぁ~!ありがとう、おねえさん!」

 受付のお姉さん…名前はレミアさんと言うらしい…にギルド証を渡されて、ミーティアは目をキラキラさせて喜んでいる。

「ふふ、どういたしまして。頑張ってね」

「うん!」

 登録したてなので当然のことながらランクは最下級のH、ギルド証は鉄だ。
 だけどそんなのは関係なく、貰ったギルド証を宝物のように大事そうに両手で持ちながらとても嬉しそうに眺めている。

 さて、これでギルドの用事は終わったかな…と思ったら、オズマさんが再び話しかけてきた。

「なあ、あんた…カティアさん。さっき受けていた依頼はソロでやるつもりかい?」

「え?え~と、ミーティアも連れて行こうかと。あとは…」

 チラッとケイトリンを見る。
 冒険者の活動は別に父様たちからも止められてないから普通に依頼を受けちゃったけど…私の護衛ってどうするんだろ?

「もちろん、私も行きますよ。護衛ですからね!」

「大丈夫なの?今日も急にお願いしちゃったし…」

 問題ないとは言っていたけど、騎士団の仕事だってあるよねぇ?

「問題ないですって。カティア様の護衛以上に重要な仕事は今はありませんから。リュシアン様も許可…と言うか誰かは必ず付けますよ」

「何だか私の我儘につきあわせてるみたいで申し訳ないな…」

「いえいえ、気にしないでくださいよ。城で訓練とか書類仕事してるよりよっぽど有意義ってもんです。ど~せ休みくれないならカティア様と一緒の方が楽しいですし」

「そう、それなら良かったのだけど…。という事でオズマさん、この三人で行く事になりそうです」

「そうか……もし良かったら、俺も一緒に依頼を受けさせてもらえないか?」

「え?オズマさんと…ですか?」

「ああ。かの名高いAランク冒険者『星光の歌姫ディーヴァ・アストライア』の仕事ぶりに興味がある」

「うぐっ…その二つ名はちょっと…。私のことご存知なんですか?」

「あんたみたいな若い女でAランクなんてのはそうはいないからな。外見の特徴も噂になってるし、ちゃんと情報収集してるやつなら分かるだろ」

 なるほど。
 じゃあ、さっきの連中はろくに情報収集もしていないおバカさんだと。

「分かりました。では一緒に行きましょう。ケイトリンもいいよね?」

「(ふむ?ちょっと気になるけど…)はい、いいですよ~」

 …?
 何だろ、今の間は?
 ま、いっか。

 ともかく、オズマさんも一緒に依頼を受けることになったのだが、出発は明後日にするつもりなので待ち合わせの場所と時間を決めて今日は別れた。










 ギルドを後にして、次の目的地はエメリール神殿総本山だ。
 場所は第二城壁内、王城から見て南側の地域になる。
 少し遠いが、やはり散策がてら徒歩で向かっている。

 この街には主要街路が交わるところに数多くの広場が形成されているのだが、特に大きな広場がいくつかある。
 そのうちの一つが今向かっている南大広場だ。




「やっぱり王都は広いね。流石の大都会だよ」

「辻馬車に乗ります?」

「ん~…徒歩と余り変わらないしなぁ…ミーティアは大丈夫?疲れてない?」

「大丈夫だよ!」

「そっか。じゃあやっぱり歩いていきましょ。早くこの街にも慣れたいし、土地勘を身につけるには歩くのが一番でしょ」

「りょ~かいです。いや~、普通はお姫様がこんなに歩くことはないですよね」

 そうかもね。
 私はまだそのへんの感覚はよく分からないな。
 そもそもあんなゴテゴテした馬車じゃ好きなところにも行けないでしょ。
 ここはやっぱりレティに期待かな。





「ママ~…おなかが空いたの…」

「あ、そうだね。結構ギルドで時間食っちゃったけど、お昼ごはんまだだったよね。ちょっと遅くなっちゃったけど、何か食べようか?」

 丁度目的の南大広場までやってきたところで、ミーティアが空腹を訴える。

「ん~、この辺は余り飲食店は無いですね~…屋台とかは結構出てますけど」

「あ、いいじゃない。別にお店じゃなくても…何か買ってあそこのベンチで食べましょ」

 広場は観光客と思しき人達で賑わっていて、その人たちをターゲットにしているのであろう、様々な屋台が出店している。

 食いしん坊ミーティアは早速屋台を見回って、何が売られているのかチェックに駆けずり回る。

「ふふ…普通の姫様はこういう所では食べない、かな?」

「そうですねえ…でも、カティア様はそう言う飾らないところが魅力だと思いますよ」

「そ、そうかな…」



「ママ!あれが食べたいの!」

 と、ミーティアが選んだのは…ハンバーガーか。
 ボリュームも丁度良さそうだし、何よりも美味しそうな匂いが食欲をそそる。

「よし、じゃあここにしようか。おじさん、ハンバーガー3つ下さい!」

「あいよ!お?嬢ちゃんたち、別嬪さん揃いだな~。よし!オマケして半銀貨3枚のとこ、2枚でいいぜ!」

「うわ~、ありがとうございます!」

「あ、カティア様、私の分は…」

「あ、いいっていいって。今日は突然付き合ってもらったんだし、これくらいは奢らせてよ」

「そうですか?じゃあ、遠慮なく!いや~、カティア様に奢ってもらえるなんて…あとでリュシアン様に自慢しよっと!」

 いや…それは怒られたりしない?


「はいよ!バーガー三つ!冷めねえうちに食べてくれ!」

「ありがとう!うわ~美味しそう!」

 お金を渡してハンバーガーを受け取る。
 肉厚でじゅわっとたっぷりの肉汁が溢れ出るパテに瑞々しい野菜もふんだんに、それらを挟むバンズはこれまた肉厚でふわふわと柔らか。


 広場にあるベンチに腰掛けて、早速頂くことにする。

 かなりボリュームがあってちょっと食べにくいが、大きく口を開けてかぶりつく。
 お行儀が悪いけど、これはそういう物だからね。
 姫様っぽく無いとか関係ないよ。

「ん~!おいひい!」

「あむあむ…」

「おお、なかなか美味しいですね。屋台の食事も侮れないな~」

 見た目に違わず肉汁たっぷりの肉は柔らかく、噛めば噛むほどジューシーな旨味が口いっぱいにひろがる。
 濃いめの味付けでややもすればしつこくなりそうなものだが、瑞々しい野菜や柔らかなパンと合わせるとそのバランスが絶妙で、ボリュームたっぷりでも飽きが来ない。

 と、思わず食レポしてしまったが、これで半銀貨1枚は安いと思うよ。
 王都は競争も激しいだろうから、自然と食のレベルが上るのかもしれないね。

「あ~、美味しかった。ごちそうさまでした。…あ、ほらミーティア、ソースが口の周りに付いてるよ」

 ミーティアの口には大きすぎる気がしたけど、やっぱりソースがあちこちに付いてる。
 ハンカチで綺麗に拭ってあげる。

「ママ、ありがとう!美味しかったの!」

「ボリュームも十分でしたね。もうお腹いっぱい。カティア様、ごちそうさまでした!」

「どういたしまして。…さて、ごはんも済んだし、神殿に行きましょうか」

 と言っても、もう目の前に見えている。

 神殿の大きさや意匠はイスパルナのディザール神殿総本山とそう大差ない。
 広場を見下ろすような高い位置に建てられていて、入り口まで幅の広い階段が続く。
 腹ごなしにはちょど良い運動かも。



 さて、今日はリル姉さんに会えるかな…?
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