【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
146 / 683
第六幕 転生歌姫の王都デビュー

第六幕 30 『疑惑の邪神教団』

しおりを挟む

「…どう思う?」

 自室に戻り、ケイトリンも中に招いて意見を聞いてみる。

 …当面は引き続き彼女が専任で私の護衛についてくれるらしい。
 申し訳ないと思ったのだが、本人は面倒な訓練とか事務仕事から解放される、とか喜んでいた。
 多分に私に対する気遣いがあるような気もするけど…やっぱり素で喜んでるのかも、とも思ったり。
 まあ、それ以上は気にしないことにした。


「個人的にはクロだと思ったんですけどね~。…でも、確かに不可解ではあります。穴だらけの計画の割に黒幕との繋がりを示す物証が何も出ない。実行指示はどうやら口頭のみで、侯爵家の人間にそれを行ったらしき人物も見つかっていない。だから幾つもの証言が得られていても、侯爵を黒と断定するには至らない…計画の杜撰さと比べて、伝達ルートの秘匿は徹底していて…もしかしてミスリードを誘ってるのでは?とも思えます」

 そうなんだよね。
 結局、末端と黒幕の繋がりを示す明確な確証は得られず…証言者も侯爵本人に直接会った者はいない上に、指示してきた人間の名前も顔も分からない。杜撰な計画の割にそこは徹底してるのが何ともアンバランスな気がして、ケイトリンの言うとおりミスリードを誘っているのでは?という疑念が湧くのだ。

 それに、アグレアス侯爵もよく分からない人だった。
 父様は可もなく不可もなく、温厚で野心的な人物ではなかったと聞いていたが…私の印象としては、とらえどころのない人物、と感じた。
 それが疑念に一層の拍車をかける。


「何れにせよ、暫くは捜査協力…という名目の実質的な監視が付くのです。仮に侯爵が黒幕とすれば、その間はそうそう身動きはできません。その間に何か黒幕に関する情報が得られれば良いのですが…」

「そうだね…あと、護衛に関してはケイトリンが専任で付いてくれるってことだけど…」

「そこはカティア様が気詰りしないようにとの配慮みたいですね。もちろん、私が休暇を頂くときなどは別の者が付くこともあるとは思いますが。私としましても訓練がさぼ…やりがいがあります!」

 …ぽろっと本音がでたね?
 いや、本当は私が気にしないようにとの彼女なりの気遣いだと思ってる。
 いや、半分くらいは本音かもしれないが。

「はぁ…でもこれからは気軽に外に出られないよねぇ…」

「そんなこと無いですよ。陛下もなるべくカティア様を束縛するようなことはしたくないと仰ってましたし、暗殺を防ぐのに城内だから絶対安全ってわけでもないですしね…どこまでもお供しますよ!」

「ふふ…ありがと。まぁ、暫くは冒険者の活動は控えるよ。あと心配なのは…劇団の皆に危険が及んだりするかも…」

「…あそこに喧嘩売るのは流石に自殺行為だと思いますけど」

「父さんたちはそうだけど、非戦闘要員だって大勢いるもの。…ばあちゃんとかは返り討ちにしそうだけど」

「…そうですね。騎士団の巡視ルートを強化するとか進言しておきます」

「私からも父さんに伝えておくよ。というか、今回の件、話ししておかないとね…」

「あ、それなら昨日のうちに伝わってますよ」

「…みんなの反応は?」

 聞くのがコワイ…

「…『ウチの姫に何さらしとんじゃあ~!!野郎ども、討ち入りだ!』って侯爵邸に殴り込みに行くのを止めるのが大変だった、と。中でも地味にカイトさんがブチ切れしてて怖かったって言ってましたよ…いや~、愛されてますねぇ!」

 …えへ。
 もう、カイトったら!

 …じゃなくて!!
 何やってんの!?

「…よく止められたね」

「一個中隊総動員だったと。ウチの中ではダードレイ一座…いえ、エーデルワイス歌劇団は取り扱い注意になってるから、どういう反応をするかは事前にシミュレーションしていたって。だけど、一応王命だから伝えない訳にはいかないけど、誰が行くかで相当揉めたらしいですね」

「何だかゴメンナサイ…」

 まるっきり腫れ物扱いじゃないか…
 止めるのに騎士団一個中隊が必要になる劇団ってなんなの…

「じゃあ、今日は早く顔を出して安心させたほうが良いかな…」

「そうですね、今も結構な数の団員が見張ってるので…そうしてあげて下さい」

 本当にスミマセン…


















「カティア!!」

「あ、カイト、ただいま~」

「パパ、ただいま~」

 あのあと、今日もクラーナと一緒に遊んでいたミーティアと、マリーシャ、ケイトリンと共にエーデルワイス歌劇団の邸の方にやって来た。

 帰ってきて早々にカイトが出迎えてくれたのだが…かなり心配をかけちゃったね。

「大丈夫だったのか!?怪我は!?」

「だ、大丈夫だよ、落ち着いて。心配をかけてごめんね」

「…いや、無事ならそれで良い」

「う、うん、ありがと」

(…こりゃ、オズマのこと話したら血の雨が降りますね~)

(…黙っておきましょう)

「どうした?」

「う、ううん、何でもないよっ!」

 と、誤魔化しておく。
 オズマさんは利用されただけだし、私を害するつもりは殆どなかったし…でも、カイトの剣幕を見ると、下手なことは言わないほうが良さそうだ。


「お?カティア、帰ったか」

「あ、父さん、皆、ただいま!…カイトもだけど、稽古は?」

 父さんや、他のメンバーも邸にいたらしく、私とカイトが話しているところにぞろぞろとやって来た。
 今日も、王都での初回公演に向けての稽古をやっていて、この時間はまだ不在だと思ったんだけど。

「あ~…お前の話を聞いてから皆殺気立っちまってな。一旦は収まったんだが、稽古どころじゃなくてな」

「う…ご、ごめんなさい」

「お前のせいじゃないだろ。で?そのナントカってぇ侯爵はクロだったのか?」

「あ、立ち話も何だし、詳しい話は広間でするよ」

 そう言って、私達は邸の広間で事の経緯を話す。
 騎士団からある程度は伝わっているみたいだけど、今日の査問の内容なども含めて詳しい話をした。






「…と言うわけなんだ」

「…何でぇ、思いっきり怪しいじゃねえか」

「そうなんだけどね…でも、私もアグレアス侯爵には初めて会ったんだけど、よく分からなくて。怪しくもあり、利用されただけにも見える…そもそも動機がよく分からない」

「それは…お前の妹の婚約者になるメリットが無くなるからじゃねえのか?」

「そうなんだけど…余りにも短絡的すぎるし、そもそも何人もいる婚約者候補ってだけで確実な話でもないのにリスクをとる意味が見いだせない。でも、それ以外に動機になりそうなことも思いつかない…母様も、私が王位継承権を持つにあたって横槍を入れる者はいてもそれは調整できる範囲だし、ましてや暗殺なんて手段を取るような者は思いつかない…って言ってたよ」

「はぁ…やっぱりお貴族様の世界は面倒ごとで一杯だな…しかし、話を聞く限りは確かに動機が分からんな?」

「…なあ、カティア。今のところお前がこの国の王女だと知ってるのは国でも限られた者だけなんだよな?」

 カイトが何か気になるのか、そう質問してくる。

「私のことを知っているのは…先ずウチのメンバーでしょ。それから、ブレーゼン侯爵家、リッフェル伯爵家、モーリス公爵家。それ以外だと国の上層部の重鎮たちだけだって事だけど。あ、騎士団員も護衛の関係である程度は伝わってるんだよね?」

「そうですね、第一騎士団の一部の者は知っているはずですが…何れも身辺調査は事前にされているので身元は確かです」

「…でも、挙げてみると結構いるね。まぁ、何れ公にする事だからそこまで厳密に秘密にしてるってわけではないのかもしれないけど。でも、動機がありそうな人がいるのかは、やっぱり分からないね…」

「…もう一人、と言うかもう一団体…動機がありそうな奴らがいるぞ」

 と、最初にこの話を始めたカイトが言う。

「え…?何かあったっけ?」

「あのリッフェル領での事件のとき、裏で暗躍していた者たちがいただろう?」

「…邪神の教団?」

「そうだ。あの時、空から事の経緯を見ていたらしき人物は倒したと思ったが…実は逃げ延びていたのか、あるいは他に監視していた者がいたのか。それは分からないが、もしお前の存在が教団に知れているとすれば、アイツ等の成そうとしていることを考えると…」

「つまり…イスパルの王女としてではなく、エメリール様のシギルを受け継ぐ者だから狙われた…?」

「推測ではあるが。…あるいは、エメリール様のものに限らずシギル持ちが狙いなのかもしれん」

「え…?……あっ!!まさか!?」

 この場には、暗殺の標的になったことがある王族がもう一人いる。
 そして、共通するのはシギル持ちということ。

「まさか、繋がっているというの…?」

「分からない。あくまでも推測の一つに過ぎないからな。だが、可能性としては考えておいたほうが良いかもしれん」


「あの~…つまりはどういう事なんですかね?」

 あ、ケイトリンはカイトのことは知らないか。
 ウチのメンバーも父さんやティダ兄はカイトがシギル持ちだと知ってるから何となく流れで察したみたいだけど、他のメンバーは分からないだろう。

 でも、カイトの事を話すわけには行かないし。
 と思っていたら…

「俺もシギル持ちで、かつて暗殺者に狙われたことがあるんだ。動機がいまいち分からないと言う点も似ている」

 と、あっさりカミングアウトしてしまった。

「カイト!?…良いの?」

「ああ。ここにいるメンバーなら構わんさ」

「…つまり、カイトさんは?」

「レーヴェラントの王族だ。あんたの上司は知ってるみたいだったけどな」

 ケイトリンの質問に答えてこれまたあっさりと素性をバラす。
 いや、シギル持ちという段階で基本的に王族は確定なんだけど。

「あ~、なるほど。他国の王族の方が国内にいるならその情報は押さえてますか…。しかし、邪神教団…アグレアス侯爵の動機よりは有り得そうな気がしますね~」

 確かに…あの得体のしれない男(?)がもし生き延びていたのなら、私は邪魔者以外の何者でもないだろうね。
 確証が無いのは同じだけど、動機の面ではそっちの方がしっくりくる…気がする。



 しかし…仮に推測が当たってるとして、これからどうすれば良いのか?


 現状は受け身にならざるを得ないのが何とも歯痒い…
 そう、暗鬱たる気分がまとわりつくのを、頭を振って無理やり振り払うのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...