149 / 683
幕間
幕間7 『ケイトリン』
しおりを挟む
私は今、目の前に繰り広げられている光景を感慨深く眺めている。
ステージの上に立つ彼女は圧倒的な存在感で見る者を魅了してやまない。
誰もが彼女の一挙手一投足に目を離せない。
私は代々続く騎士の家系の次女として生まれ、幼い頃より訓練を重ねてきた。
明確な目標に向かって努力し、頑張れば頑張るほどにどんどん力が付く。
挫折らしい挫折もなく、思えばその頃が一番充実していたと思う。
だから騎士になったのは自然な流れだったし、そこに疑問を抱いたことはなかった。
だけど、実際に騎士団に入団してみると、何となく思い描いていた華やかなイメージとは違って、日々の地味な訓練、なんの意味があるのかもよく分からない事務仕事ばかり。
たまに出動があっても喧嘩の仲裁とか…せいぜい近郊に迷い込んだ魔物の駆除くらい。
いや、実際には何回か大きな任務もあって、そこで自分の実力も示せたし、同僚や先輩たちの信頼も得ることが出来たと思うけど…そんな事は早々あるものではない。
戦争なんて起きて欲しいなどとは微塵も思わなかったけど、こう…もう少し日々の刺激が欲しいなぁ、と。
そんな贅沢な悩みを抱えていた。
他の人からすれば、そんなのは悩みなんて言うほどのものでは無いと思うのだけど。
そんなわけで、入団当初の頃こそ真面目に取り組んでいたものの新たな目標も見い出せず…モチベーションが下がるのにそれ程時間はかからなかった。
同期のオズマも結構気が合うと思ったのだが、早々に騎士を辞めてしまった。
まあ、彼の場合はモチベーション云々ではなくて、家族の面倒を見るために時間の融通があまり効かないのがネックだったみたい。
私も騎士を辞めて冒険者にでもなろうかな?なんて思いながらも、決定的な理由があるわけでもなく…結局ズルズルと辞められずにいた。
カティア様に初めて出会ったのはそんな時だった。
リッフェル領の不穏な噂の真実を確かめるために潜入捜査をする事になったのだが、私に白羽の矢が立った。
…いや、そう言うのってフツー暗部の仕事じゃね?
そう思ったけど、リュシアン様たってのお願いだったので引き受けることにした。
リュシアン様は私の実力を高く評価してくださり、私が中々辞められないのは、彼に恩を感じているからでもある。
私は自分で言うほど自分が優秀だなんて思っておらず(いや、ホントに!)、でもそんな私を必要としてくれるのは純粋に嬉しかった。
そして、リッフェルにレジスタンスとして潜入してしばらく経ったある日、王都に向かう旅の途中で立ち寄ったダードレイ一座に接触を図った。
その時カティア様に初めてお会いしたのだが…
まず最初の感想は、何て綺麗な娘なんだろう…と。
そして、ただ綺麗なだけではなく目を惹きつけてやまない不思議な魅力を感じたのだった。
今思えば、その時から既に王家のカリスマの様なものを備えていたのだろう。
そんな、ともすれば気後れしそうなオーラを持った彼女も、話をしてみればそんな事は吹き飛んでしまい、ますます彼女の魅力に惹き込まれることになるのだ。
結局、彼女の出自がイスパルの王家にあると知って妙に納得したものだ。
そして、私にとって初めての感情が芽生えた。
即ち、私はこの方にお仕えするために騎士になったのだ、と。
…気恥ずかしいのでそんな素振りは見せてないんだけど、私はすっかり彼女に魅了されてしまったのだ。
そして、それはその後も一緒に行動するうちに更に大きなものになるのだった。
今、私の目の前には民の歓声に応えて笑顔で手を振るカティア様の姿が。
少し薄暗い劇場の中、照明に照らされて煌めくステージ衣装と、それに劣らぬ星の光の如く輝く長い髪。
ため息が出るほどの美しい姿に見惚れそうになるが、自分の職務を思い出して改めて気を引き締める。
幼馴染のマリーシャからは肉壁になってでもお守りしなさい!なんて言われたが…そんな事は言われるまでもない。
彼女を狙う不穏な者がいる。
疑惑はあっても、まだ確証にまでは至っていない。
だが、誰が黒幕であろうとも決して思い通りになどさせない。
あの方はきっとそんな事は望まないと思うけど、例え命に代えてでも、あの方をお守りするのは私の役割だ。
そんな決意を胸に秘め…少し恥ずかしそうに、でもしっかりと笑顔で手を振って応えるカティア様を視界の端に収めつつ、私は会場に目を光らせるのだった。
ステージの上に立つ彼女は圧倒的な存在感で見る者を魅了してやまない。
誰もが彼女の一挙手一投足に目を離せない。
私は代々続く騎士の家系の次女として生まれ、幼い頃より訓練を重ねてきた。
明確な目標に向かって努力し、頑張れば頑張るほどにどんどん力が付く。
挫折らしい挫折もなく、思えばその頃が一番充実していたと思う。
だから騎士になったのは自然な流れだったし、そこに疑問を抱いたことはなかった。
だけど、実際に騎士団に入団してみると、何となく思い描いていた華やかなイメージとは違って、日々の地味な訓練、なんの意味があるのかもよく分からない事務仕事ばかり。
たまに出動があっても喧嘩の仲裁とか…せいぜい近郊に迷い込んだ魔物の駆除くらい。
いや、実際には何回か大きな任務もあって、そこで自分の実力も示せたし、同僚や先輩たちの信頼も得ることが出来たと思うけど…そんな事は早々あるものではない。
戦争なんて起きて欲しいなどとは微塵も思わなかったけど、こう…もう少し日々の刺激が欲しいなぁ、と。
そんな贅沢な悩みを抱えていた。
他の人からすれば、そんなのは悩みなんて言うほどのものでは無いと思うのだけど。
そんなわけで、入団当初の頃こそ真面目に取り組んでいたものの新たな目標も見い出せず…モチベーションが下がるのにそれ程時間はかからなかった。
同期のオズマも結構気が合うと思ったのだが、早々に騎士を辞めてしまった。
まあ、彼の場合はモチベーション云々ではなくて、家族の面倒を見るために時間の融通があまり効かないのがネックだったみたい。
私も騎士を辞めて冒険者にでもなろうかな?なんて思いながらも、決定的な理由があるわけでもなく…結局ズルズルと辞められずにいた。
カティア様に初めて出会ったのはそんな時だった。
リッフェル領の不穏な噂の真実を確かめるために潜入捜査をする事になったのだが、私に白羽の矢が立った。
…いや、そう言うのってフツー暗部の仕事じゃね?
そう思ったけど、リュシアン様たってのお願いだったので引き受けることにした。
リュシアン様は私の実力を高く評価してくださり、私が中々辞められないのは、彼に恩を感じているからでもある。
私は自分で言うほど自分が優秀だなんて思っておらず(いや、ホントに!)、でもそんな私を必要としてくれるのは純粋に嬉しかった。
そして、リッフェルにレジスタンスとして潜入してしばらく経ったある日、王都に向かう旅の途中で立ち寄ったダードレイ一座に接触を図った。
その時カティア様に初めてお会いしたのだが…
まず最初の感想は、何て綺麗な娘なんだろう…と。
そして、ただ綺麗なだけではなく目を惹きつけてやまない不思議な魅力を感じたのだった。
今思えば、その時から既に王家のカリスマの様なものを備えていたのだろう。
そんな、ともすれば気後れしそうなオーラを持った彼女も、話をしてみればそんな事は吹き飛んでしまい、ますます彼女の魅力に惹き込まれることになるのだ。
結局、彼女の出自がイスパルの王家にあると知って妙に納得したものだ。
そして、私にとって初めての感情が芽生えた。
即ち、私はこの方にお仕えするために騎士になったのだ、と。
…気恥ずかしいのでそんな素振りは見せてないんだけど、私はすっかり彼女に魅了されてしまったのだ。
そして、それはその後も一緒に行動するうちに更に大きなものになるのだった。
今、私の目の前には民の歓声に応えて笑顔で手を振るカティア様の姿が。
少し薄暗い劇場の中、照明に照らされて煌めくステージ衣装と、それに劣らぬ星の光の如く輝く長い髪。
ため息が出るほどの美しい姿に見惚れそうになるが、自分の職務を思い出して改めて気を引き締める。
幼馴染のマリーシャからは肉壁になってでもお守りしなさい!なんて言われたが…そんな事は言われるまでもない。
彼女を狙う不穏な者がいる。
疑惑はあっても、まだ確証にまでは至っていない。
だが、誰が黒幕であろうとも決して思い通りになどさせない。
あの方はきっとそんな事は望まないと思うけど、例え命に代えてでも、あの方をお守りするのは私の役割だ。
そんな決意を胸に秘め…少し恥ずかしそうに、でもしっかりと笑顔で手を振って応えるカティア様を視界の端に収めつつ、私は会場に目を光らせるのだった。
11
あなたにおすすめの小説
異世界で一番の紳士たれ!
だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。
リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。
リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。
異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる