189 / 683
第七幕 転生歌姫と王都大祭
第七幕 37 『武神杯〜準決勝 決着』
しおりを挟むーーーー 観客席 ーーーー
カティアvsラウル
二人の戦いは前評判通りのハイレベルな激戦となり、観客たちはその熱い戦いにあらん限りの声を上げる。
あるいは一進一退の攻防に固唾を飲んで見守っている。
何れにしても目が離せない戦いだ。
特にカティア姫の、舞を踊るかのように華麗な格闘術は彼女自身の容姿も相まって多くの観客を魅了していた。
一方のラウルの豪快な技の数々は見応えがあり、カティアに負けず劣らず観客の声援を受けている。
貴賓席で観戦している者たちは大声を上げることこそ無いものの、夢中になって見ているのは一般席の観客と変わらない。
「カティアさん、格闘も凄いのですわね…」
これまで何度もカティアの戦いを見てきたルシェーラも驚きの表情で呟く。
「本当、カッコいいわね~。おおっ!そこだ!行けっ!!」
「…レティ、はしたないですよ」
シュッシュッ!と身振りを混じえながら応援するレティシアを兄のリュシアンが嗜める。
「いいじゃないこれくらい。本当はもっと大声で応援したいんだから。ねえ、カイ…テオフィルスさん?」
「ん?ああ…そうだな。一般席の方が楽しめたかも知れないな」
「ですよね!でも、ミーティアちゃんやクラーナちゃんは関係なしって感じかな」
レティシアの言うとおり、ちびっ子二人は貴賓席の際、柵にかじりついて大声で応援している。
「ママ~!がんばれ~!!」
「おねえさま!がんばってください!!」
二人の一生懸命な様子を、大人たちは微笑ましげに見守っている。
「イスファハン王子。あのラウルと言う者はそなたの護衛との事だったな」
ユリウス国王が来賓のカカロニアの王子に聞く。
「ええ、カカロニアからアクサレナの道中の護衛ということで、Aランク冒険者の何名かに指名依頼を出したんですよ。ここに滞在中は自由行動なんですけどね…まさか大会に参加してるとは」
「ふむ…なかなかの強者だな。今のところカティアとは互角だが、少しづつ彼の方が押して来ているように見える」
「そうですね、ヤツはカカロニアでも一、ニを争う猛者ですから。ですが…カティア姫もこのまま押されるだけじゃ無いのでしょう?」
「どうだろう?私もカティアの戦いをそれほど見たことがあるわけではないからな…テオフィルス殿はどう見る?」
「私も格闘戦を見るのははじめてですが…イスファハン王子の言う通りこのまはまでは終わらないでしょうね。ダードさんも言ってましたが、なんせ彼女は戦いの引き出しが多いですから」
「なるほど。とにかく目が離せんな」
ーーーーーーーー
ラウルさんの攻撃はいよいよ苛烈さを極めてきている。
今のところ何とか捌いて有効打を貰うことは無いが、このままペースを上げて行かれると手が付けられなくなる。
ここらで仕掛けさせてもらうよ!
隙らしい隙など無いが、比較的大振りの拳をかいくぐって懐に飛び込み、双掌打を叩き込む!!
それはもう片方の腕で防がれるが構わずに無理やり吹き飛ばす!
ドゴォッ!!
『おおーっと!カティア選手、ラウル選手を大きく吹き飛ばしました!!』
『いや。あれはダメージ無ぇだろ』
そうだろうね。
衝撃を逃がすように自分から後に跳んだのだろうから。
だけど今のは間合いを離すのが目的だ。
私自身も後退して距離を更に離しながら…詠唱を開始する!
「今更魔法か!それは効かねえぞ!!」
そう言って拳に魔法封じの光を纏わせながら猛然と距離を詰めてくるが、構わずに詠唱を継続する。
そして、彼が到達する前に完了し、私はその引き金を引いた!!
「[天雷]!!」
落雷の魔法が発動し、天から一筋の雷が地に落ちる!!
ラウルさんはそれを迎撃すべく光る拳を天に突き上げた!
「無駄だ!!」
だが、私の狙いはラウルさんでは無い!
ラウルさんに向かっていくと思われた雷は、途中でその軌道を変え…近くに突き刺さっていた薙刀に落ちる!!
「なにっ!?」
薙刀を伝って炸裂した雷は舞台を破壊し、飛礫と細かな電撃を周囲に撒き散らす!!
「ぐあっ!?」
よし!
思った通り、魔法の核を狙わなければ無効化は出来ない!!
副次的に発生した電撃では殆ど本来の威力は無いとはいえ、僅かでも痺れを与えるはず…!
ここが千載一遇のチャンスだ!!
私はこの機を逃すまいと一気に距離を詰め、無防備になったラウルさんの鳩尾に渾身の掌底を叩き込んだ!!
「うぐぅっ!!…ま、まだだっ!!」
まだ致命判定されず、ラウルさんは耐える。
だが…!
私は傍らに突き刺さったままの薙刀を引き抜く!
「せりゃあーーーっ!!」
掌底のダメージでまだ防御体勢が取れないところに駄目押しの斬撃を見舞う!!
「う、うぉーーーっ!!!」
ラウルさんは裂帛の気合を発してそれを防ごうとするが…!
それよりも早く刃が彼の身体に吸い込まれる!
そして、今度こそついに致命判定となったラウルさんは、舞台外に弾き出されるのだった。
『そこまで!!勝者、カティア選手!!』
ウォーーーーーーーッ!!!
ワァーーーーッッ!!
勝利宣言と共に歓声が爆発する!
私はその声に突き動かされて、思わず両手を天に突き上げた。
ふぅ…何とか勝てた。
疲れた…
でも、それ以上に充実感で満たされている。
『カティア選手の勝利です!!全くの互角と思われた戦いでしたが、決着は正に一瞬の出来事でした!』
『武器、格闘、魔法…あらゆる手札を見事活かしきったな』
『あんな近接戦闘の最中に~上級魔法を入れるんだもの~。凄い度胸よね~』
『それもあるが…上手いことあの位置に誘導したもんだ』
そうなんだよね。
ちょうど薙刀を突き刺したところの近くをラウルさんが通るような位置取りをして、魔法を放つタイミングもかなりシビアだったんだけど、何とか上手くいって良かったよ。
「ふう…負けた負けた!完敗だ!」
「あ、ラウルさん」
「強えな、姫さん。格闘はほぼ互角な上に武器も魔法も凄えんだからよ。ありゃあ勝てねえわ」
「そんなことないですよ、ギリギリでした」
「へっ!謙遜すんなって!次はティダのアニキか、あのイーディスってヤツだが…勝ってくれよ!」
「はい、ベストを尽くします!」
私とラウルさんは固く握手を交わした。
『さあ、準決勝に相応しい素晴らしい戦いを見せてくれました両選手に盛大な拍手をお願いします!!』
ワァーーーーッッ!!!
パチパチパチパチッ!!
カティアさまーーっ!!ステキーーっ!!
ラウルーーっ!!強かったぞーーっ!!
私達の健闘を皆が讃えてくれる。
それに応えて手を振りながら、私は舞台を下りるのだった。
11
あなたにおすすめの小説
異世界で一番の紳士たれ!
だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。
リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。
リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。
異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる