【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
191 / 683
第七幕 転生歌姫と王都大祭

第七幕 39 『武神杯〜準決勝 奇剣vs奇策』

しおりを挟む
 準決勝第二試合は両者互角の戦いを繰り広げ、一進一の攻防が続く。

 広大な間合いを持つイーディスさんの攻撃を、彼が捕捉しきれない程のスピードで掻い潜って双剣を叩き込むものの、堅牢な防御を崩すに至ってはいない。

 そんな事が何度も繰り返されている。

 だが、徐々にスピードに慣れてきたのか、蛇剣の迎撃のタイミングが少しずつ合ってきている気がする。

 それが分からないティダ兄じゃないだろうし、あの一見単調な攻撃も何か狙いがあっての事だとは思うけど…



 キィンッ!!


 あ!?

 何度目かの攻防を経て、遂に蛇剣がティダ兄の動きを捉えた!

 直撃こそ剣で弾いて防いだものの、完全にタイミングが合っていた。



『おーーっと!?イーディス選手!遂にティダ選手の動きを捉えた!!』

『ああ、何度も繰り返されて目が慣れたな』

『ま、まだまだよ~!』


 キィンッ!

 キンッ!

 キキィンッ!


 …もう完全に掴んだみたいだね。
 懐に飛び込めなくなったよ。

 ティダ兄…ここからどうするの?
 何かを確かめているみたいだけど…


「…もう動きは把握した。今度はこちらが行く」

 !
 イーディスさんが何か仕掛けるみたいだ。


 ティダ兄の姿が再び消える。

 そして…!

「双蛇咬牙」

 前後から挟み込むように双蛇剣がティダ兄に襲いかかる!!

 「!!」

 キィンッ!!

 前方の攻撃は剣で弾き、後方の首筋を狙った攻撃は身体を捻ってギリギリで躱すが…


『…掠めたな』

 ダメージは無いけど、確かに僅か皮一枚掠めたのだ。


「双蛇旋牙」

 今度は直線ではなくティダ兄を取り囲むように斬撃が襲いかかる!

 完全に囲まれる前にかいくぐってその場を脱するが、またも攻撃は掠めている。


「双蛇波斬」

 波打つ斬撃は弾き飛ばすのが困難だ。
 これも皮一枚ギリギリで躱した。


 完全に攻撃の主導権は入れ代わり、イーディスさんが一方的に攻撃、ティダ兄はそれをギリギリで躱すという図式になった。



『さあ!攻守が入れ替わりました!!イーディス選手の攻撃が徐々にティダ選手を捉えてきています!』

『むぅ~~~っ!!』

『むくれんな。だが、あいつがこのままってこたぁねぇな。多分何か狙ってやがる』

『ダードさん、それ言っちゃだめよ~!!』

『いや、当然イーディスだって警戒してんだろ』

 父さんの言うとおりだね。
 ティダ兄のこれまでの戦いは多分、あくまでも下準備のような気がする。

 そして姉さんの依怙贔屓には誰も突っ込まなくなったね。
 慣れってコワイね。



 そして、再び攻防は続き、一見してイーディスさんが優勢、ティダ兄は何とか皮一枚で躱す…と言うように観客も思っているだろう。

 事態が動いたのはそれからしばらく経ってから。



 これまでと同じくイーディスさんの攻撃を紙一重で躱し…
 いや!貫いた!?

 と思った瞬間、ふっ、とティダの姿が掻き消えた!

 残像を残して超高速で躱したのか!


「そっちか」

 それも目に捉えていたイーディスさんは冷静に剣を振るうが…

 ティダ兄の停止と加速、緩急を織り交ぜた変幻自在の動きを捉えきれない。

 ティダ兄は縦横無尽に残像を残しながらイーディスさんの懐に近づいていく。

 あの残像…超高速の動きによるだけじゃ無く、闘気や魔力を瞬間的に発することで、より人の目を欺くようにしてるんだよね。
 たしか『残影』と言うスキルだ。


「双蛇結界陣」

 もはや捕捉は困難と察したイーディスさんは、双蛇剣で自分の周りを二重螺旋で囲って、攻防一体の防御陣を敷く!


「それを待っていた!![隆地]!!」

 えっ!?
 まさかティダ兄が魔法を!?

 地面を瞬間的に隆起させる初級の地魔法だ。
 ティダ兄が魔法を使ったのは驚いたが…なるほど、イーディスさんが防御体勢になって足を止める瞬間を狙ってたんだね。
 やはり魔法は門外漢ということなんだろう。
 確実に当てられるように策を練ったんだ。


 それが功を奏する。
 突然地面が隆起したことによってイーディスさんは足を取られてバランスを崩し、鉄壁と思われた防御陣に綻びが生じた!

 その僅かな間隙を縫ってついにティダ兄は懐に飛び込む!

 しかし、真正面から繰り出された斬撃は篭手で防がれた!

 だが…!

「秘剣…朧月影!」

 正面の一撃が防がれたときには既に残像を残して体ごと背後に回り込んで、そのまま首筋の鎧と兜の隙間に本命の一撃が叩き込まれた!!

 ザシュッ!!

 初めてのクリーンヒットは致命の一撃となり、戦闘不能判定となったイーディスさんは、舞台外に弾き出された。



「そこまで!!勝者ティダ!!」


 ウォーーーーーッ!!!

 きゃあーーっ!!
 ティダ様ーーっ!!
 ステキーーーっ!!


 歓声が爆発する!!





『ティダ選手、一時は劣勢かと思われましたが一気に形勢を逆転し勝利しました!』

『きゃあーーーっ!!ティダーーっ!!やったわ~!!ステキよーーっ!!』

 姉さんも大喜びだが…解説なのに依怙贔屓が酷すぎる…

『でも~、ティダが勝ったのは嬉しいのだけど~…身の程知らずのメスどもがいるわね~』

 あ、あれだけ牽制してたのに黄色い声援が上がったものだから…姉さんが黒くなってるよ。
 やめなさいよ…会場中がドン引きしてるじゃないの…

『おいこら、不穏な発言は止めねえか……しかし驚いたぞ。あいつが魔法を使えるなんて知らなかったが…アネッサ、あれはお前が教えたのか?』

『そうなのよ~、初級だけだけど~ティダは凄いのよ~!愛の力で覚えたのよ~』

 私もティダ兄が魔法を使えるなんて知らなかったけど…姉さんが教えたんだね。
 初級だけでも攻撃の幅が広がるし、大きな武器になるだろう。
 愛の力はよく分かんないけど。



 場外に弾かれていたイーディスさんが再び舞台に上がり、ティダ兄に声をかける。

「見事だ」

 そう言いながら、イーディスさんは兜を脱ぐと…
 現れたのは三十代前後くらいの男性。
 シブい声から想像していたとおりの美丈夫だった。

『な!?に、兄さん!?』

 アネッサ姉さんが、イーディスさんの顔を見て驚きの声を上げる。
 …兄さん?


「兄さん…?あなたはアネッサの兄なんですか?」

「…ああ。本名はイースレイと言う。…ここでは何だから決勝が終わった後で話をしよう」

「…はい」


 おお…何だか意外な展開だ…

 アネッサ姉さんは駆け落ち同然にティダ兄についていったとは聞いてたけど、家族の話は聞いたことがない。
 これは気になる…私も妹分としては話を聞いておきたいところだ。


『え、え~と…何だかよく分かりませんが…』

『準決勝は終わりだ。プライベートの話は気にしないで、取り敢えず進行したらどうだ?』

『そ、そうですね…さあ!これで準決勝第二試合は決着が付きました!!素晴らしい戦いを見せてくれた両選手に盛大な拍手をお願いします!!』

 ワァーーーーッッ!!

 パチパチパチパチッ!!!

 
 こうして、準決勝第二試合はティダ兄の勝利で終わった。
 ちょっと気になる話もあったが…
 休憩を挟んだらすぐに決勝だ。

 相手はティダ兄…気心が知れている相手とは言え、試合となれば本気でやるよ!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...