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第七幕 転生歌姫と王都大祭
第七幕 43 『王者』
しおりを挟む『さあ、ここからが武神杯の真の決勝戦!!今大会の優勝者と、前大会のディフェンディングチャンピオンによるエキシビションマッチです!!』
ウォーーーーーッ!!!
会場は今大会一番の盛り上がりを見せる。
きっと、この人の戦いを観たいがために来ている人も多いだろう。
『それではご登場頂きましょう!武神杯において10年以上不敗を誇る最強の戦士!絶対王者!ユリウス=イスパル国王陛下です!!』
ワァーーーーッッ!!
司会のお姉さんの紹介と観客の大歓声に合わせて入場するのは、戦装束を身に纏い威風堂々たる姿の父様。
ユリウス=イスパル。
イスパル王国国王にして、私の実の父親。
救国の『英雄王』。
そして…前世の【俺】がゲームで使用していたメインキャラクターでもある。
サブで使用していたカティアを大きく凌駕するステータスを持ち、トッププレイヤーの一人として名を馳せていた。
現実世界での力は如何程のものなのか。
身に纏う雰囲気から相当な強者である事は察せられたが…初めて父様に会って以来ずっと気になっていた。
今でもずっと鍛錬されてるようだし、手合わせをお願いしても良かったんだけど。
武神杯の話を聞いて、どうせなら本気で戦いたいと思ったのだ。
そして、ついに相対することになったのだが…
ただそこに立っているだけで感じる圧倒的な覇気。
普段親子として接する時とはまるで違う厳しい顔つき。
きっと、本気で戦ってくれるつもりなのだろう。
私のことをそれ程の強敵と認めてくれたんだと思うと、とても嬉しい。
「見事な戦いだったぞ、カティア。本気で相手をせねば…俺がそう思ったのは何年ぶりのことか。…いや、今年はお前以外にも素晴らしい戦士が多かったな」
「父様、ありがとうございます。私は父様と戦いたくて参加したので…ここに辿り着くことができて嬉しいです」
「そうか…では、これより俺はお前の父ではなく、戦士として全力を尽くすことを約束しようではないか」
「はい。それこそ望むところです」
そのためにここまで来たのだから。
私の言葉を聞くと父様は獰猛な笑みを浮かべる。
多分、私も似たような表情をしてると思う。
「ところでカティアよ。武器はそのままで良いのか?あのナギナタがお前の最も得意な武器なのだろう?」
「そうですね……いえ、このままで良いです。さっき掴んだ感覚をもう少し確実なものにしたいので」
多分、あの極意は薙刀であっても問題なく使えるとは思うが、出来る事ならあの感覚を覚えているうちにもう少し慣らしておきたい。
『さあ、いよいよ両雄が激突します!しかし、国王陛下と王女殿下がこの場で戦うことになろうとは…誰が想像できたでしょうか!?』
『流石は武神ディザール様の国だよな!』
『全くもって』
『お転婆娘、ここに極まれりだな』
お転婆…まあそうかもだけど。
この国の国民性なら大ウケだからオッケーでしょ。
歌って戦う王女様ってことで。
「ではお二人ともよろしいでしょうか?」
「ああ。始めてくれ」
「はい。いつでも大丈夫です」
「それでは…武神杯、王者決定戦…始め!!」
ついに、最終決戦の火蓋が切られた…!
さて。
ゲームキャラとしてのユリウスの能力…ステータスは力と速さに極振りした完全な物理アタッカーだった。
スキルもそれを十全に活かせるものを取得、攻撃される前に一撃必殺というスタイルだ。
果たして、現実世界でも同じなのか。
伝え聞く英雄王の逸話から察するに、おそらく同じだとは思うけど。
大群に単騎特攻しかけて蹂躙するとか…ゲームの○○無双イベントを思い出すよ。
それにしても、こうして相対するだけでも物凄いプレッシャーを感じる。
まだ何もしていないのにじっとりと汗ばんでくる。
だけど、私とて相当な場数を踏んでいるという自負がある。
それに先の試合で掴んだ極意。
あのプレッシャーに飲まれず、諦めずに全てを出しきれば勝利への道筋が見えてくるはず。
父様がぐっと身を屈める。
そしてバネのように一気に開放して神速で踏み込んでくる!!
ドンッ!!
ただの踏み込みとは思えない程の衝撃音を発して刹那のうちに目の前まで肉薄してきた!!
突進のスピードはティダ兄以上か!!
だが、ちゃんと見えてる。
ティダ兄との試合で到ったあの感覚。
時間が引き伸ばされたかのようにゆっくりと感じる。
私は、父様のすくい上げるように振るわれる逆袈裟斬りを、力で弾くのではなく剣で絡め取るように力の方向を反らして防ぐ。
その流れで前がかりになった父様の顎先を掠めるように回し蹴りを放つ!!
ガッ!!
それは左腕で防がれるが、今度はそこを起点に跳んで背後に回り込むように後ろ回し蹴りを放つ!!
だが父様は蹴りの起点、踏み台になっている左腕を大きく振って私を振り払う。
くるっと宙返りしながら着地…の瞬間を狙って間髪入れず間合を詰めた父様が突きを放ってくる!
「シッ!!」
キィンッ!!
「[炎弾]!!」
剣で弾くと同時に一瞬で魔法を放つ!!
だがそれは左手ではたき落とされる…っていくら威力が弱いとは言え攻撃魔法を素手で、ですか…
そのまま再び近接戦に移行。
至近距離で超高速の攻防が行われるが、お互いにクリーンヒットは無し。
丁々発止と打ち合い、お互いに一歩も引かない。
と、ある時、鍔迫り合いから一転、大きく間合が開いたところで…
あれは…!!
マズい、緊急回避!!
あれは広範囲に渡って衝撃波による斬撃を放つ剣術スキル[剣閃]だ!
居合のように右手に持った剣を左脇後方に向けた構えから一息に水平に薙ぎ払い、その剣閃が衝撃波となって私を襲う!!
私は青眼から大きく振りかぶって衝撃の到達に合わせて一気に振り下ろす!!
同じ衝撃波を放つ剣術スキルの[剛断]だ!
印を発動した時の『天地一閃』はこれの発展型と言える。
パァーーーンッ!!!
水平と垂直の衝撃波が衝突し、乾いた破裂音が響き渡る。
そして、私が防いだ真正面以外の衝撃波は私の両脇を通り過ぎ…
ドォーーーンッッ!!!
観客席の壁を破壊して、もうもうと土煙を上げる。
うひゃぁ……
なんつー威力…
こりゃ、リアルで一騎当千も出来るよなぁ…
「…よく初見で対処できたな?」
「アハハ…まあ直感で何とか…」
「そうか。やはり大したものだな」
いや、本当はそれが使えるのを知ってたからなんだけど。
やはりゲームキャラとしての性能は持ってるらしい。
『す、凄まじい威力の攻撃です!!そしてそれを防ぐカティア様も凄すぎる!!』
『あれが英雄王の力か…』
『次元が違うな』
『しかし、姫さんも負けちゃいねえぜ』
『…俺との戦いで断然レベルが上がったな』
あ、ティダ兄も解説席に行ったんだ。
そうだね、あの戦いを経験してなかったら、まともに戦えなかったかも。
ティダ兄には感謝だね。
『ん?何ですか…?え、伝言?…王妃様から?陛下に?…え~と、なになに?『あなたが会場を破壊したら、自分のポケットマネーで修理代を出すのよ』…だそうです』
『『『……』』』
「母様…」
「……」
つつー、と父様の額を冷や汗が伝った。
が、がんばれっ!!
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