【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
291 / 683
第十幕 転生歌姫と忍び寄る戦火

第十幕 11 『迎賓館』

しおりを挟む
 私達が宿泊する予定の迎賓館は敷地が学院に隣接しているが、直接は繋がっていないので一旦正門から出てから向かうことになる。

 学院自体の敷地が非常に広大なので、隣接すると言っても徒歩だと結構な距離がある。
 なので、案内の人は馬車を手配してくれようとしたのだけど、母様も含めてみんな歩いていきたいと言って断った。

 他国の王妃と王女に、ほんの僅かとはいえ街歩きさせるのは気が引けただろうけど、こちらの意を汲んでくれた。
 …ちょっと悪いことをしたかな。


 そんなわけで、私達は正門を出て学院の敷地沿いの街路を歩いている。
 案内の人の他に、学内では気を利かせて少し離れて付いてきていた護衛や付き人たちも一緒だ。




「本当はね、もっと街歩きもしたかったんだけど…流石にそれは皆反対するでしょうしね。学生の頃は気軽に出歩けたのにねぇ…」

「あら~、だったら変装でもすればいいじゃない~。大体~、カティアちゃんなんかいつも普通に出歩いてるわよね~」

「そうだね…父様も母様も特に何も言わないから……本当なら私だって気軽に出歩くような立場じゃないよね」

「ふふ…あなたと会う前にね、ユリウスと話したのよ。なるべくあなたに不自由な思いはさせないようにしよう…ってね。何せ、あなたたちは旅から旅への暮らしだったでしょう?お城に閉じ込めて束縛したら…嫌われちゃうと思ったの」

「母様……ありがとうございます」

 例えそう思っていても…王族としての立場を考えるなら、そう簡単に城から出すようなことはしないだろう。
 でも、私の気持ちを第一に考えてくれた。
 それが凄く嬉しいし、だからこそ王族としての務めもちゃんと果たしたいと思うのだ。


「でも…変装、良いじゃないですか。私も、母様と一緒に街歩きしてみたいです。ほら、お忍びで街の皆の普段の暮らしを見るのも大切だと思いますよ」

「そうね…それは良いかもしれないわ。民の普段の暮らしを知るのは、為政者として大切なことよね」

 まあ、父様も母様も、そんなことをしなくても常に民のことを考える人たちだけど。
 リアルな風景を見るのも重要だよね。




 そんな話をしているうちに目的地に到着する。
 訪問予定の賓客が徒歩でやってきたものだから守衛の人が凄く驚いていたが、そこはプロフェッショナルと言おうか、直ぐに気を取り直して丁重に迎え入れてくれた。




「うにゃ?リィナお姉ちゃん、どうしたの?」

「…え?え~と、ちょっと圧倒されたと言うか……お母さん、私もここに泊まっていいの?何だか場違いのような…」

 迎賓館は王族クラスの国費を迎えたりするので、当然ながら相当に立派な建物だ。

 歴史を感じさせる重厚な佇まい。
 それでいて華やかであり、しかし華美にはなりすぎないように調度品一つ一つが洗練されている。
 古い建物のようだが、手が行き届いていて、正に国賓を迎えるのに相応しい品格を持っている。

 …私は王城暮らしにだいぶ慣れてきてるけど、確かに一般市民感覚だと気後れしちゃうか…
 姉さんの出自的に、リィナも本当はお嬢様なんだけどね。

「そんなに緊張しなくても大丈夫よ~。遠慮しないで~寛がせてもらえばいいのよ~」

「そうよ、リィナちゃん。あまり緊張しすぎると、ここのスタッフも責任を感じてしまうわよ?」

 これまで縁がないのだから仕方がないよね。

「まあ、姉さんの実家だって貴族家なんだからここで少しでも慣れるといいよ」

「う、うん…(お母さんが貴族令嬢と言うのが一番ピンと来ないんだけど…)」

 







 中に通された私達は、一旦それぞれの部屋へ案内される。
 母様と私とミーティア、姉さんとリィナが同室となる。

 部屋の中は王城の私の自室にも劣らないくらいに広く快適そうである。


「母様と泊まるのは初めてですね」

「おばあちゃんといっしょ!」

「ふふふ…家族水入らずってわけね」

 ミーティアは早速母様の膝の上だ。

 そうして私達は、一先ず旅装を解いて旅の疲れを癒やすために、暫くまったりと部屋で寛ぐのであった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...