301 / 683
第十幕 転生歌姫と忍び寄る戦火
第十幕 21 『王都レーヴェンハイム』
しおりを挟む
メルゲンの街を出発して二日後、私達一行はレーヴェラント王国の王都、レーヴェンハイムの目前まで来ていた。
「い、いよいよ到着するんだね」
「…何だ、緊張してるのか?」
「ちょっとだけ……」
昨日から何だかソワソワして落ち着かない。
やっぱり第一印象は良く見られたいと思うとアレコレ考えてしまって…
「カティアは自然体でいるのが一番だと思うけどな」
「私もそう言ったのだけど。まあ、緊張する気持ちは分かるわ」
「母様もそうだった?」
「どうだったかしらねぇ……私とユリウスの場合は周りから外堀を埋められたって言うのもあるしね。あまり考える余裕は無かったわ」
ああ…父様と母様は純粋な恋愛結婚ではないんだよね…
そうとは思えないくらい仲は良いのだけど。
当時は色々複雑な想いもあったんだろうね…
王都に近付くにつれて徐々に建物が多くなってくる。
あいにくと雪がちらついて視界があまり良くないので遠くまでは確認できないが、多分もうすぐ王都に入るのだと思う。
レーヴェンハイムはアクサレナほどではないけど一国の王都なので当然ながらかなりの大都市であり、人口規模は十万人を超えるということだ。
それから程なくして、王都の外壁が見えてきた。
既に街中と言っても良いくらいに建物は密集しているが、厳密に王都と言えば外壁内であるのはアクサレナと同様だ。
外壁の周りにはお堀が巡らされていて、中々に防御力がありそう。
外壁の上から…あるいはお堀にかかる橋の上など、あちこちで雪をお堀に捨てている光景が目に入る。
「あの堀は王都防衛の一端を担うだけでなく、ああして除雪した後の雪捨て場にもなるんだ」
「へえ~、やっぱり国が違うと文化も違うね~。そういうのを見るのも旅の醍醐味だよ」
「一座でレーヴェラントに来たことはないのか?」
「え~と…確か私がまだ小さい時に…でも、王都には来たことないと思う。大きな街で公演するようになったのは割と最近の事だから」
「そうか。…レーヴェンハイムの住人にも劇団の公演を見せてあげたいものだな」
「そだね。出張公演もいいかも。みんなずっと旅してきた人たちだからね…たまにはアクサレナの外に出たいかもしれないし……」
アクサレナではすっかりウチの劇団も定着したけど、今回みたいに公演の期間が開くこともあるので出張公演も可能だろう。
あまり遠くまでは行けないだろうけど、レーヴェラントなら割と近いので実現する可能性は高いと思う。
「あら、良いじゃないの。あなた達が結婚したら『ご成婚記念公演』とかどう?本人が出演するんだから話題性抜群よね」
「ご、ご成婚記念?……ちょっと恥ずかしいけど、それもいいかも…」
少しその光景を思い浮かべると、それは魅力的な提案のように思えた。
「でも……はぁ…つくづくグラナ帝国が恨めしい…」
幸せな未来を夢想するが、頭の痛い問題も多々ある。
そう思って私は顔をしかめるが、テオは優しく微笑んで言う。
「…未来に希望が持てるなら、苦難は乗り越えられる。そうだろう?」
「…うん!そうだね!」
「お前に出会わなければ俺は今だ燻っていたかもしれない。俺に希望をくれたのはお前だ」
「あ、あぅあぅ……」
「あらあら真っ赤になっちゃって…好きな人にそう言ってもらえるなんて羨ましいわねぇ…」
か、母様が見てる前でサラリとそんなことを言ってのけるなんて…テオ、恐ろしい人……
「ママ、街の中に入ったの!」
「そうだね、雪が降ってても賑やかなものだねぇ~」
雪がちらつく寒空であっても、王都の街中はとても活気に満ちていた。
私達はこのまま王城に向かうが、ティダ兄、姉さん、リィナは門前広場のところで姉さんの実家から迎えが来ていたのでそこで別れた。
父さんは私達と一緒に王城に向かうのだが、「こんなボロ馬車で王城に入っちまっていいのか?」なんて言ってた。
だったら馬車は預けてこっちに乗れば良いのに…って言ったんだけど、それは嫌みたい。
まったく…
そうして私達は綺麗に除雪されたメイン通りを進んで行く。
活気に溢れた商業地区…閑静な住宅街…貴族街を抜け、いよいよ王城に到着するのであった。
「い、いよいよ到着するんだね」
「…何だ、緊張してるのか?」
「ちょっとだけ……」
昨日から何だかソワソワして落ち着かない。
やっぱり第一印象は良く見られたいと思うとアレコレ考えてしまって…
「カティアは自然体でいるのが一番だと思うけどな」
「私もそう言ったのだけど。まあ、緊張する気持ちは分かるわ」
「母様もそうだった?」
「どうだったかしらねぇ……私とユリウスの場合は周りから外堀を埋められたって言うのもあるしね。あまり考える余裕は無かったわ」
ああ…父様と母様は純粋な恋愛結婚ではないんだよね…
そうとは思えないくらい仲は良いのだけど。
当時は色々複雑な想いもあったんだろうね…
王都に近付くにつれて徐々に建物が多くなってくる。
あいにくと雪がちらついて視界があまり良くないので遠くまでは確認できないが、多分もうすぐ王都に入るのだと思う。
レーヴェンハイムはアクサレナほどではないけど一国の王都なので当然ながらかなりの大都市であり、人口規模は十万人を超えるということだ。
それから程なくして、王都の外壁が見えてきた。
既に街中と言っても良いくらいに建物は密集しているが、厳密に王都と言えば外壁内であるのはアクサレナと同様だ。
外壁の周りにはお堀が巡らされていて、中々に防御力がありそう。
外壁の上から…あるいはお堀にかかる橋の上など、あちこちで雪をお堀に捨てている光景が目に入る。
「あの堀は王都防衛の一端を担うだけでなく、ああして除雪した後の雪捨て場にもなるんだ」
「へえ~、やっぱり国が違うと文化も違うね~。そういうのを見るのも旅の醍醐味だよ」
「一座でレーヴェラントに来たことはないのか?」
「え~と…確か私がまだ小さい時に…でも、王都には来たことないと思う。大きな街で公演するようになったのは割と最近の事だから」
「そうか。…レーヴェンハイムの住人にも劇団の公演を見せてあげたいものだな」
「そだね。出張公演もいいかも。みんなずっと旅してきた人たちだからね…たまにはアクサレナの外に出たいかもしれないし……」
アクサレナではすっかりウチの劇団も定着したけど、今回みたいに公演の期間が開くこともあるので出張公演も可能だろう。
あまり遠くまでは行けないだろうけど、レーヴェラントなら割と近いので実現する可能性は高いと思う。
「あら、良いじゃないの。あなた達が結婚したら『ご成婚記念公演』とかどう?本人が出演するんだから話題性抜群よね」
「ご、ご成婚記念?……ちょっと恥ずかしいけど、それもいいかも…」
少しその光景を思い浮かべると、それは魅力的な提案のように思えた。
「でも……はぁ…つくづくグラナ帝国が恨めしい…」
幸せな未来を夢想するが、頭の痛い問題も多々ある。
そう思って私は顔をしかめるが、テオは優しく微笑んで言う。
「…未来に希望が持てるなら、苦難は乗り越えられる。そうだろう?」
「…うん!そうだね!」
「お前に出会わなければ俺は今だ燻っていたかもしれない。俺に希望をくれたのはお前だ」
「あ、あぅあぅ……」
「あらあら真っ赤になっちゃって…好きな人にそう言ってもらえるなんて羨ましいわねぇ…」
か、母様が見てる前でサラリとそんなことを言ってのけるなんて…テオ、恐ろしい人……
「ママ、街の中に入ったの!」
「そうだね、雪が降ってても賑やかなものだねぇ~」
雪がちらつく寒空であっても、王都の街中はとても活気に満ちていた。
私達はこのまま王城に向かうが、ティダ兄、姉さん、リィナは門前広場のところで姉さんの実家から迎えが来ていたのでそこで別れた。
父さんは私達と一緒に王城に向かうのだが、「こんなボロ馬車で王城に入っちまっていいのか?」なんて言ってた。
だったら馬車は預けてこっちに乗れば良いのに…って言ったんだけど、それは嫌みたい。
まったく…
そうして私達は綺麗に除雪されたメイン通りを進んで行く。
活気に溢れた商業地区…閑静な住宅街…貴族街を抜け、いよいよ王城に到着するのであった。
11
あなたにおすすめの小説
異世界で一番の紳士たれ!
だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。
リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。
リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。
異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる