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第十幕 転生歌姫と忍び寄る戦火
第十幕 39 『魔軍侵攻』
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私とテオの婚約式典から数日。
ついにその報せがやってきてしまった。
調査依頼の結果報告が王城に上がったのと、エメリール神殿、リヴェティアラ神殿のそれぞれに神託が降りたのは殆ど同時だったと言う。
魔軍の襲来。
王都レーヴェンハイムより東、徒歩で数日という所に『ウォレスタ大森林』と言う魔境がある。
レーヴェラント王国の中央部のかなりの範囲を占める広大な森林地帯だが、そこから魔物が溢れ出し、軍団となってこちらに向かっていると言う。
その数、およそ……
「ご、5万!?」
「そんなに……」
想像以上の数に、会議室のそこかしこで驚愕の声が上がる。
現在は魔物の軍勢が現れたとの報告を受けて、緊急の軍議が行われているところだ。
「想像以上だな……王都に進軍しているということで間違いないのだな?」
ハンネス様は渋い顔で、改めてそう確認する。
「はい。このままのペースで行けば、3日後には王都に到達する見込みかと」
「……国境の軍は既にこちらに戻ろうとしているが、間に合わないな。そうすると、今王都にある戦力だけで迎え撃たねばならぬか」
現在王都にいる正規軍がおよそ1万。
予備役を入れても1万5千がやっととの事。
ギルドの緊急招集により冒険者を集めても、もう数百人が精々だろう。
数の上では圧倒的に不利な状況だ。
「広域殲滅魔法の使い手は?」
「宮廷魔導士の中でも数人程度かと」
「あ、私も使えます。あと、姉さ……ブラバント公爵家のアネッサ様も。ブレゼンタムの魔軍襲来の際に戦っています」
ハンネス様の確認に、私も発言する。
勝手に姉さんの名前も出してしまったけど、王都に危機が及ぶとなれば放ってはおけないだろう。
「おお、そうだ。カティア姫はその戦いで英雄になったのだな」
「勇敢に戦った者の全てが等しく英雄であったとは思いますが……ともかく、あのときと同じように初撃と[絶唱]での支援はお任せください。それで数の不利はある程度解消できると思います。……それでよろしいですよね、母様?」
「ええ。今からではイスパルの加勢も間に合わなそうだし…同盟国としてできるだけのことはやらないといけませんからね。私は大規模戦闘ではあまり役に立てませんが…治癒魔法が使えるので、救護班に加わろうかと思います」
私達は他国の王族で賓客の身ではあるが、参戦することに迷いはない。
同盟国の危機を見過ごすわけにはいかないし、武神の国イスパルの王族としての矜持もある。
そして何より…大切な婚約者の故郷は絶対に守らないと!
「私と配下のカロニア軍も参戦します。5千ほどですが、何れ劣らぬ選りすぐりの精鋭揃いと自負しております」
イスファハン王子もそのように参戦の意思を表明した。
「御三方のご助力、真に感謝する。…国境に兵力を割いてるこの状況では、正直に言って我らレーヴェラントだけでは厳しいものがあっただろう」
どこかホッとしたような表情でそう言うハンネス様。
ある意味ではタイミングが良かったと言えるだろう。
そうして、ある程度の戦力の目処がつき、具体的な作戦について協議を始めようとしたときだった。
『我も力を貸してやるぞ』
突如響いたその声は、聞き覚えのあるものだった。
「だ、誰だ!?」
この会議室には防音の結界が張られている。
中から外、外から中の双方について音が遮断されるのだ。
ということは…
「ミーティア!?」
いつの間にか、扉の前にはミーティアが立っていた。
いや、彼女だけでなく、傍らに佇む半透明の姿。
やはり、先程の声は…
「あのね、ゼアルおじちゃんが行こうって…」
『ミーティアよ、おじちゃん…は止めてくれねぇか…』
やはり、ゼアルさんだった。
明らかに普通ではないその存在に、私とテオ以外は驚きのあまり唖然としている。
そんな中、いち早く正気を取り戻したハンネス様が質問してきた。
「カティア姫、彼はいったい…?」
「え~と……ディザール様の友人?で地脈の守護者、古龍のゼアルさん……の思念体ですね」
と、それだけではよくわからないと思うので、彼がミーティアに憑く事になった経緯を説明することにした。
ついにその報せがやってきてしまった。
調査依頼の結果報告が王城に上がったのと、エメリール神殿、リヴェティアラ神殿のそれぞれに神託が降りたのは殆ど同時だったと言う。
魔軍の襲来。
王都レーヴェンハイムより東、徒歩で数日という所に『ウォレスタ大森林』と言う魔境がある。
レーヴェラント王国の中央部のかなりの範囲を占める広大な森林地帯だが、そこから魔物が溢れ出し、軍団となってこちらに向かっていると言う。
その数、およそ……
「ご、5万!?」
「そんなに……」
想像以上の数に、会議室のそこかしこで驚愕の声が上がる。
現在は魔物の軍勢が現れたとの報告を受けて、緊急の軍議が行われているところだ。
「想像以上だな……王都に進軍しているということで間違いないのだな?」
ハンネス様は渋い顔で、改めてそう確認する。
「はい。このままのペースで行けば、3日後には王都に到達する見込みかと」
「……国境の軍は既にこちらに戻ろうとしているが、間に合わないな。そうすると、今王都にある戦力だけで迎え撃たねばならぬか」
現在王都にいる正規軍がおよそ1万。
予備役を入れても1万5千がやっととの事。
ギルドの緊急招集により冒険者を集めても、もう数百人が精々だろう。
数の上では圧倒的に不利な状況だ。
「広域殲滅魔法の使い手は?」
「宮廷魔導士の中でも数人程度かと」
「あ、私も使えます。あと、姉さ……ブラバント公爵家のアネッサ様も。ブレゼンタムの魔軍襲来の際に戦っています」
ハンネス様の確認に、私も発言する。
勝手に姉さんの名前も出してしまったけど、王都に危機が及ぶとなれば放ってはおけないだろう。
「おお、そうだ。カティア姫はその戦いで英雄になったのだな」
「勇敢に戦った者の全てが等しく英雄であったとは思いますが……ともかく、あのときと同じように初撃と[絶唱]での支援はお任せください。それで数の不利はある程度解消できると思います。……それでよろしいですよね、母様?」
「ええ。今からではイスパルの加勢も間に合わなそうだし…同盟国としてできるだけのことはやらないといけませんからね。私は大規模戦闘ではあまり役に立てませんが…治癒魔法が使えるので、救護班に加わろうかと思います」
私達は他国の王族で賓客の身ではあるが、参戦することに迷いはない。
同盟国の危機を見過ごすわけにはいかないし、武神の国イスパルの王族としての矜持もある。
そして何より…大切な婚約者の故郷は絶対に守らないと!
「私と配下のカロニア軍も参戦します。5千ほどですが、何れ劣らぬ選りすぐりの精鋭揃いと自負しております」
イスファハン王子もそのように参戦の意思を表明した。
「御三方のご助力、真に感謝する。…国境に兵力を割いてるこの状況では、正直に言って我らレーヴェラントだけでは厳しいものがあっただろう」
どこかホッとしたような表情でそう言うハンネス様。
ある意味ではタイミングが良かったと言えるだろう。
そうして、ある程度の戦力の目処がつき、具体的な作戦について協議を始めようとしたときだった。
『我も力を貸してやるぞ』
突如響いたその声は、聞き覚えのあるものだった。
「だ、誰だ!?」
この会議室には防音の結界が張られている。
中から外、外から中の双方について音が遮断されるのだ。
ということは…
「ミーティア!?」
いつの間にか、扉の前にはミーティアが立っていた。
いや、彼女だけでなく、傍らに佇む半透明の姿。
やはり、先程の声は…
「あのね、ゼアルおじちゃんが行こうって…」
『ミーティアよ、おじちゃん…は止めてくれねぇか…』
やはり、ゼアルさんだった。
明らかに普通ではないその存在に、私とテオ以外は驚きのあまり唖然としている。
そんな中、いち早く正気を取り戻したハンネス様が質問してきた。
「カティア姫、彼はいったい…?」
「え~と……ディザール様の友人?で地脈の守護者、古龍のゼアルさん……の思念体ですね」
と、それだけではよくわからないと思うので、彼がミーティアに憑く事になった経緯を説明することにした。
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