【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

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第十幕 転生歌姫と忍び寄る戦火

第十幕 50 『魔軍の将』

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 戦場の空を舞う。

 眼下には今尚魔軍との激しい戦いが繰り広げられている。
 上空まで剣戟の音や双方の雄叫び、怒号が聞こえてくる。

 既に私の[絶唱]は途切れ、その効果は徐々に減少しているはずだ。
 リリア姉さんの加護の力による能力上昇は残るとは思うのだけど……それでも、急がなければこれまでよりも犠牲者は増えてしまうだろう。

 どうか、あともう少し耐えて…生き延びてほしい。

 祈るような気持ちで見下ろしながら、激戦の場を飛び越えていく。




「ボスの場所はどこかな?プレッシャーの出どころは……」

 強大な力の波動は既に感じられるので、大まかな方向に向けて飛んでいるところだ。

 魔物の軍勢は既に全軍が渓谷を脱したようで、その全容が上空からだとよく分かる。
 もう相当数を打倒したにもかかわらず、なお辺り一面を覆い尽くすほどの軍勢。
 改めて、私達の責任は重大だと思い知らされる。


「あそこだな」

 テオが指差す方向…最後列のところから、確かに強烈な波動が発せられてるようだ。


「場所が分かったのなら早く行こう。どうも地に足がついてないと落ち着かないよ…」

 私とともにロコちゃんに同乗していたお義母さまが、やや青い顔をしながらそう言う。
 どうやら高所が苦手のようだ。

 今まで豪快なところばかり見てたから、少し意外だ。


「よし。ロコ頼むぞ!」

『キュア~!』

 いざ、決戦の地へ!!

















「ロコ、ブレスしながら降下だ!」

『キュオッ!!』

 ブオオォーーーッッ!!!


 ボスがいると思しき場所に急行した私達は、決戦に望むべく降下を開始した。
 その際に無防備とならないよう、飛竜たちから一斉にブレスが放たれて、周囲の敵を一掃する。
 十数もの飛竜が放つブレスの攻撃は相当な威力で、私達が降り立つ場所は問題なく確保された。

 私達を下ろしたあとも、竜騎士達が周りの敵を牽制して決戦に邪魔が入らないようにしてくれる手筈となっている。






 そうして、ついに私達は今回の魔軍のボスと対峙するのだった。


「こいつぁ…また骨が折れそうだな」

「群れの規模から、前回のオーガ程度では済まないとは思ってはいたがな。やはり禍々しさが更に上だ」

「ありゃあ、何ですか?俺は見たことが無いっすね」

「…面妖な」


 私達の前に立ちはだかったのは…一見して美しい女性型の魔物だった。
 しかし、三対六本もの腕があること。
 そして、下半身は大蛇になっていて、人型とは到底呼べない異形であった。

 確かこいつは…

「ラミア……に似ているけど、ちょっと違うみたいだね。仮称、ラミアクイーンとしましょうか」

 ラミアはあんなに沢山の腕は生えてなかったと思う。


「何だっていいさ。倒す相手に違いは無ぇんだからな!」

「同意だね。さすがカティアちゃんの父親だ、気が合いそうだよ」

 何だか父さんとお義母さまが意気投合してるよ。
 確かに似た者同士な雰囲気はするね。


「…テオとはあまり性格は似てないみたいだな」

「ん~?表面的にはそうかもだけど…」

 ティダ兄はそう言うけど、根っこのところは似てると思うんだよね。


「おいおい、みんな随分余裕だな……俺は鳥肌が収まらないんだが。流石は実戦経験豊富なヤツは違うな」

 と言うのはイスファハン王子だ。
 だけど、言葉とは裏腹にまるで気負いは見られず落ち着き払っている。



「竜騎士達が周りの魔物たちを近づけないようにしてくれている。今のうちに、畳み掛けて倒してしまおう!このメンバーなら、必ず勝てる!!」

 そして、テオがみんなを鼓舞する。

 敵も既に臨戦態勢で待ち構えているようだ。
 既に彼我の距離は、そのまま戦闘開始となってもおかしくない程に近付いている。


「…『奇術師』は失敗したのね」

「!!……そうか、前回も会話が出来たって言っていたね」

「あん時の奴よりは、幾分か知的に見えるけどな」

「確かに」

 挑発したら直ぐキレて、早々に言葉も通じなくなったんだっけ。
 まぁ、父さんも容赦なく煽りまくるからねぇ…


「ねえ、念の為に確認するけど……あなた達の目的は何なの?」

「目的…?魔物の目的など、人を蹂躙して喰らい尽くす以外に何があるというのかしら?」

 首を傾げながら、心底不思議そうにそんな事を言う。
 異形にさえ目を向けなければ、その仕草は可愛らしくすらあり、むしろそれが不気味さを増すのであった。

「…いくら言葉が通じようとも、所詮は相容れぬ相手ということか」

 そう言うイスファハン王子は既に何時でも斬りかかれる体勢だ。
 いや、他の皆もそれは同じ。
 もちろん私も。

 根本的に価値観が異なるのは分かっていたこと。
 会話が出来るなら念の為…と思っただけで、甘い考えを持っていたわけではない。


「人々の脅威となるなら排除するだけ。さあ、覚悟しなさい!!」


 こうして、魔軍襲来の最後の戦いが始まるのだった。
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