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第十幕 転生歌姫と忍び寄る戦火
第十幕 53 『千変万化』
しおりを挟む「……テオ?アイツに何を見せられてたのかな?」
ニッコリ。
「い、いや……それより今は戦闘中だ。立て直すぞ!!」
誤魔化した。
まあ、それもそうだ。
……後で追求するけどね!
「だけど、どうする?決め手が無い上に、多彩な状態異常攻撃…ここまで苦戦するとは」
大技を使うにしても、準備するために支援を切らすと危険だし…
「……状態異常は何とか出来るかも知れん」
と、何かを考えてる様子だったイスファハン王子がそう言う。
「本当ですか?どうするんです?」
「俺の印の力を使えば、あるいは……」
「イスファハン王子の……オキュパロス様の?」
カカロニアの王子である彼が受け継ぐのは、『うつろいし神』の異名を持つオキュパロス様のものだ。
その効力がどのようなものなのかは知らないが、何れにしても強力なものには違いないとは思うけど…
「オキュパロス様の印の力は『千変万化』だ」
「『千変万化』…?」
「そうだ。あらゆるものは不変ではいられず移ろい行く……その力の一端で、状態異常の効力を持続させないような空間を作り出せる……と思う」
「『思う』って…使ったことは無いんですか?」
「そりゃあな。機会が無かったから。それも懸念といえばそうなんだが、他にも……敵の状態異常だけじゃなく味方の支援魔法なんかも無効になってしまうのが欠点だな」
ふむ…メリットデメリットを考えなければ、という事だね。
「いや、あの厄介な歌が封じられるならそっちの方が助かるだろ。幸いにもヤツの素の能力による攻撃はそれほど苛烈なわけでは無えからな。そこまで支援魔法を必要としてるわけじゃねえ」
とは父さんの弁。
因みに会話しながらも戦闘は継続中である。
「…そうだね。歌を封じることが出来れば、後は如何に強固な防御を突破するかという戦いに専念できる、か。イスファハン王子、お願いできますか?」
「分かった。発動するのに集中が必要だから、暫く護りを頼む」
「ああ、それは私に任せておきな」
そして、イスファハン王子は印を発動するべく、目を閉じて集中し始める。
お義母さまは無防備になった彼を守護する。
「あらゆるものはそこに留まること能わず……発動!」
集中し始めてから暫くの後、イスファハン王子が、カッ!と目を見開くと…彼の身体から真紅の光が溢れ出す!!
そして、彼の前には魔法陣のような複雑な輝く紋様が現れた!!
あれがオキュパロス様の印か…!
そして、彼の身を覆っていた真紅の光は周囲に拡散していき、この戦いの場を覆い尽くすほどの巨大な結界となった。
ちょうどそのタイミングで、ラミアクイーンが再び『歌』を歌う。
一瞬だけ眠気が襲ってくるが、直ぐにそれも治まった。
「……よし、何とも無さそうだ」
「効果そのものを無効化するんじゃなくて、効果が持続するのを阻むものだからな。その点は注意してくれ!!」
「十分です!助かります!」
状態異常攻撃に対する対策が取れた私達は、再び猛攻を開始する!!
「よし!!こうなりゃ防御をブチ抜くまで何度でも叩き込んでやらぁ!!」
「皆!!大きい魔法の準備するから!!合図で後退ね!!」
「「「応!!」」」
そして私は再び大魔法の準備に取り掛かる。
さっきは中断してしまったけど、今度こそ!
私は意識を集中して詠唱を開始する。
先程は冷気系を…と考えていたが、この寒風吹きすさぶ中で行動してるところを見ると、冷気系は弱点足り得ないと思い直したので、今回詠唱するのは雷撃系統だ
最初に撃った[雷蛇]は、少なくとも直撃を避けるように回避していたから、全く効かないということは無いだろうと思っての選択だ。
そして程なく完了するが、味方の攻撃が続いているため発動タイミングを見計らう。
息をもつかせぬ攻防。
しかし、僅かに切れ間が生じたところで警告を発する!
「総員退避!!撃つよ!!」
私の声に反応して、皆一斉にラミアクイーンから大きく距離を取った。
今だ!!
「くらえっ!![滅雷・散]!!」
聖杖を前に突き出しながら魔法を発動!
その瞬間、複雑な軌道を描く幾筋もの雷光が刹那の間に敵へと殺到する!!
かつてメリエルちゃんがウパルパ様に放っていたのと同じアレンジバージョンだ。
そして、強烈な雷撃は狙い違わずに全てが直撃する!!
「うぐぁーーーっ!!??」
凝集された高エネルギーの光線が穿ち貫き、次いで高圧電流がバチバチバチバチッ!!とラミアクイーンの全身駆け巡った。
手応えは十分。
相当なダメージを与えたのは間違いないはずだ。
だが、ボロボロになりながらも敵はまだ生きている。
そして、既に再生し始めているのが遠目でも確認できた。
「みんな!!一斉攻撃!!」
「「「応!!」」」
前回のオーガエンペラーと同じなら、再生能力は尋常じゃ無いレベルのはずだ。
完全に再生してしまわないように、常に攻撃をし続けなければならない。
そして……止めを刺すのは私の役割だ。
そのために選ばれたのだから。
最後の決着の時は、もう目前まで迫っている。
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