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第十一幕 転生歌姫と迷宮の輪舞曲〈ロンド〉
第十一幕 34 『樹海の試練』
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どこからともなく響いた声が告げる。
先に進みたくば試練を乗り越えよ…と。
そして、周囲一体が騒めき始めた。
まるで嵐に吹かれたかのように枝葉が揺れ、静寂に包まれていた森の中は一転して騒がしくなる。
「何が起こるんですの!?」
「分からない!でも、ただ事じゃないよ!戦闘態勢を!!」
私が言うまでもなく、皆既に不意の攻撃に備えて戦闘態勢をとっている。
「(魔力の高まり!?)皆さん!!魔法攻撃が来ます!!」
リーゼさんがそう警告を発した瞬間、猛烈な風が私達を襲った!!
「くっ!![魔壁]っ!!」
咄嗟に魔法結界を張るが、詠唱する余裕も無かったので初級が精一杯だった。
しかも本来は自分自身に展開するものをパーティメンバー全員を対象にしたので、効果も雀の涙ほどだ。
殆ど風の威力を殺せず吹き飛ばされないようにするのが精一杯で、私達は身動きが取れなくなってしまった。
「ぐっ!」
「うきゃぁ!?」
「ミーティア!?」
強烈な気圧差によって生み出された鎌鼬によって肌が切り裂かれ、飛び散った血が風に舞う。
まだ表面を浅く切るだけだが……段々と威力が強まってきてる!
このままじゃマズい、早く何とかしないと!
しかし、焦る私とは対照的に素早く冷静に詠唱していたリーゼさんの魔法が発動する!
「[輪転回帰]!!」
魔法を打ち消す結界魔法だ。
それほど広い範囲に展開できないが、猛威を振るっていた風の刃が見る見るうちに減衰する。
多少のダメージは受けたが、何とか致命傷になる前に危機を脱することができた。
「リーゼ、助かったぞ」
「リーゼお姉ちゃんありがとう!」
「でも、これは一時凌ぎです!風の魔法を使ってる敵を何とかしないと…!」
「しかし敵と言っても……一体どこに?」
結界の外では今も暴風が吹き荒れて、一向に止む気配がない。
[輪転回帰]は強力な魔法結界だが…それ故に、いかに結界魔法が得意なリーゼさんでも、長時間の維持は難しいはずだ。
何とか敵の居場所を突き止めなければ押し切られてしまう。
「ロウエンさん、敵の居場所は分からないですかっ?ケイトリンも」
「う~ん……やっぱりあの奇妙な気配をここら一帯に感じるッスね……そのせいでハッキリと分からないッス」
「私も同じです…」
熟練の斥候をも欺く隠形…?
……いや、違う。
気配は感じてるんだ。
そうだ……ミロンは何で言っていた?
確か、『今目の前の風景にこそ答えがある』って………まさかっ!?
「[炎槍]!!」
閃くと同時に、私は反射的に魔法を行使して、手近な樹に放つ!
「カティアさん!?何を!?」
突然の奇行とも思える私の行動に、ルシェーラが驚きの声を上げるが……
それを掻き消すように、炎の魔法を受けて燃え上がる樹から悍ましい絶叫が上がった!!
グギョォーーーッッ!!!
やっぱりか!!
「皆!!魔物は…この森の樹々だよ!!」
私達はずっと魔物の群れの真っ只中にいたんだ。
まさしく目の前に答えはあった。
試練とはつまり……魔物の擬態を看破して打倒する必要があると言う事か!
「まさか…森の樹々全てが魔物だと言うのですか!?」
「分からない……けど、相当な数に囲まれてるのは間違いないよ!」
そして、擬態がバレたのを悟った魔物たちが一斉に正体を現して動き始めた。
根が脚となり枝が手となってこちらに襲いかかって来ようとする。
これが全てなのか、まだ擬態しているのが残っているのか……?
樹木に擬態する魔物は確か、『樹人』だったか?
だが、こんな巨木だなんて聞いたことがない。
「ゼアルさん!ブレスをお願いできませんか!?」
『まだ前回程の威力は出せねぇぜ?』
「構いません!今は少しでも数を減らさないと……!」
『よし来た』
私の願いに応えてゼアルさんは人間形態から竜の姿に変じる。
以前見たときよりは少し透けて見え存在感が薄いが、それでも強大な力を感じさせる姿だ。
そして、大きく息を吸い込み……次の瞬間には灼熱のブレスを放った!!
ブォーーーッッ!!
以前のような超高熱の光線ではなく、燃え盛る火炎のブレスだ。
周囲を焼き払うように首を巡らせると、私達に襲いかかろうとしていたトレントたちに火が着いて燃え上がる!
うひゃあ~……凄い自然破壊をしてるみたいで罪悪感が半端ないよ。
そうして、私達の周囲の魔物は尽く焼き払われて、黒焦げになった巨木も暫くすると消え去ってしまった。
幾つか燃え残るところを見ると、どうやら本物の樹もあったようだ。
やはり罪悪感が……
だが、まだまだ多くの魔物に取り囲まれている状況に変わりは無い。
果たして、私達はこの状況を切り抜けることは出来るのか…!?
先に進みたくば試練を乗り越えよ…と。
そして、周囲一体が騒めき始めた。
まるで嵐に吹かれたかのように枝葉が揺れ、静寂に包まれていた森の中は一転して騒がしくなる。
「何が起こるんですの!?」
「分からない!でも、ただ事じゃないよ!戦闘態勢を!!」
私が言うまでもなく、皆既に不意の攻撃に備えて戦闘態勢をとっている。
「(魔力の高まり!?)皆さん!!魔法攻撃が来ます!!」
リーゼさんがそう警告を発した瞬間、猛烈な風が私達を襲った!!
「くっ!![魔壁]っ!!」
咄嗟に魔法結界を張るが、詠唱する余裕も無かったので初級が精一杯だった。
しかも本来は自分自身に展開するものをパーティメンバー全員を対象にしたので、効果も雀の涙ほどだ。
殆ど風の威力を殺せず吹き飛ばされないようにするのが精一杯で、私達は身動きが取れなくなってしまった。
「ぐっ!」
「うきゃぁ!?」
「ミーティア!?」
強烈な気圧差によって生み出された鎌鼬によって肌が切り裂かれ、飛び散った血が風に舞う。
まだ表面を浅く切るだけだが……段々と威力が強まってきてる!
このままじゃマズい、早く何とかしないと!
しかし、焦る私とは対照的に素早く冷静に詠唱していたリーゼさんの魔法が発動する!
「[輪転回帰]!!」
魔法を打ち消す結界魔法だ。
それほど広い範囲に展開できないが、猛威を振るっていた風の刃が見る見るうちに減衰する。
多少のダメージは受けたが、何とか致命傷になる前に危機を脱することができた。
「リーゼ、助かったぞ」
「リーゼお姉ちゃんありがとう!」
「でも、これは一時凌ぎです!風の魔法を使ってる敵を何とかしないと…!」
「しかし敵と言っても……一体どこに?」
結界の外では今も暴風が吹き荒れて、一向に止む気配がない。
[輪転回帰]は強力な魔法結界だが…それ故に、いかに結界魔法が得意なリーゼさんでも、長時間の維持は難しいはずだ。
何とか敵の居場所を突き止めなければ押し切られてしまう。
「ロウエンさん、敵の居場所は分からないですかっ?ケイトリンも」
「う~ん……やっぱりあの奇妙な気配をここら一帯に感じるッスね……そのせいでハッキリと分からないッス」
「私も同じです…」
熟練の斥候をも欺く隠形…?
……いや、違う。
気配は感じてるんだ。
そうだ……ミロンは何で言っていた?
確か、『今目の前の風景にこそ答えがある』って………まさかっ!?
「[炎槍]!!」
閃くと同時に、私は反射的に魔法を行使して、手近な樹に放つ!
「カティアさん!?何を!?」
突然の奇行とも思える私の行動に、ルシェーラが驚きの声を上げるが……
それを掻き消すように、炎の魔法を受けて燃え上がる樹から悍ましい絶叫が上がった!!
グギョォーーーッッ!!!
やっぱりか!!
「皆!!魔物は…この森の樹々だよ!!」
私達はずっと魔物の群れの真っ只中にいたんだ。
まさしく目の前に答えはあった。
試練とはつまり……魔物の擬態を看破して打倒する必要があると言う事か!
「まさか…森の樹々全てが魔物だと言うのですか!?」
「分からない……けど、相当な数に囲まれてるのは間違いないよ!」
そして、擬態がバレたのを悟った魔物たちが一斉に正体を現して動き始めた。
根が脚となり枝が手となってこちらに襲いかかって来ようとする。
これが全てなのか、まだ擬態しているのが残っているのか……?
樹木に擬態する魔物は確か、『樹人』だったか?
だが、こんな巨木だなんて聞いたことがない。
「ゼアルさん!ブレスをお願いできませんか!?」
『まだ前回程の威力は出せねぇぜ?』
「構いません!今は少しでも数を減らさないと……!」
『よし来た』
私の願いに応えてゼアルさんは人間形態から竜の姿に変じる。
以前見たときよりは少し透けて見え存在感が薄いが、それでも強大な力を感じさせる姿だ。
そして、大きく息を吸い込み……次の瞬間には灼熱のブレスを放った!!
ブォーーーッッ!!
以前のような超高熱の光線ではなく、燃え盛る火炎のブレスだ。
周囲を焼き払うように首を巡らせると、私達に襲いかかろうとしていたトレントたちに火が着いて燃え上がる!
うひゃあ~……凄い自然破壊をしてるみたいで罪悪感が半端ないよ。
そうして、私達の周囲の魔物は尽く焼き払われて、黒焦げになった巨木も暫くすると消え去ってしまった。
幾つか燃え残るところを見ると、どうやら本物の樹もあったようだ。
やはり罪悪感が……
だが、まだまだ多くの魔物に取り囲まれている状況に変わりは無い。
果たして、私達はこの状況を切り抜けることは出来るのか…!?
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