【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
449 / 683
第十二幕 転生歌姫と謎のプリンセス

第十二幕 32 『手土産』

しおりを挟む

 アグレアス侯爵の意外な正体には驚いたが、彼の話はあくまでも話の流れの上での事だ。

 ただ、仕えていたアルマ王家を滅ぼした帝国の皇族と親交を持った、という点が気にはなったけど……色々と複雑な事情が絡んでいるのだろう。
 エフィメラさんは当時の経緯は分からないと言ったが、もしかしたらリシィ……シェラさんが知ってるのかもしれない。






「では、本題に入らせてもらいますね。とは言っても……これまでの話の流れで、私の願いについて大体は察せられたとは思いますが」

「……黒神教の打倒、ですか?」

「その通りです。もはやグラナ帝国は黒神教の思うがまま。このまま放置しておけば、やがてカルヴァードの国々にも再び侵攻を始めるのは火を見るよりも明らかです」

「既にその兆しはありましたね」

 レーヴェラントとの国境付近に大規模な軍が展開されたのは、つい最近の事だ。

「ええ。あの時はカティア様のご活躍もあって、計画に綻びが生じたようですが……」

 多分、あの時のグラナの計画としては、レーヴェラントが大規模な魔軍襲来に対処して疲弊したところで国境に待機していた軍勢が本格的に侵攻を開始……しかし、おそらく作戦の指揮官だったであろう『奇術師』が倒されたため、計画の変更を余儀なくされた。
 そんなところだったのではないかと考えられている。

「そもそもなんですが、なぜ黒神教はカルヴァード大陸に侵攻しようとするのです?」

「……私も詳しい事は分からないのですが、彼らの目的……と言うか、教義の一つは『人類の進化』を目指すと言うものです」

 人類の進化……?
 それって、まさか……

「もしかして、進化したその先の姿が『魔族』……とか?」

「はい。彼らはそのように考えてるようです。人が魔族になるには、『黒き魂』をその身に取り込む必要があります。そして、その『黒き魂』こそがカルヴァードに侵攻する理由のようなのです。それが、どう結び付いた結果なのか、までは分からないのですが……」

 黒き魂がカルヴァードに侵攻する理由?
 それはいったい……

 いや、以前地脈の守護者ウパルパさまに聞いた話……『異界の魂』がこの世界に迷い込む要因の一つは、地脈の流れが乱れ【界】が曖昧になる事。
 そして、その上で地脈の流れが滞り【陰】の気を帯びると、異界に通じる『扉』が開きやすくなる、と。
 【陰】の気を帯びる、とは……生きとし生けるものの負の想念に染まると言うこと。

 負の想念……もし、大きな戦争が勃発して世が乱れれば、人々の嘆き、悲しみ、怒り……そういった負の感情は計り知れないものになるだろう。


 そのようなことを、エフィメラさんに伝えると、彼女は合点がいった様子である。

「なるほど……確かに黒神教の狙いと合致しているように思えます。何としてもその野望は阻止しければ……」

「既にカルヴァードの各国は協力体制にあります。ただ……これまではグラナの情報に乏しく、有効な手立てが取れないでいたのです。エフィメラ様、どうか我々に力をお貸しください」

「もちろんです。そのためにこうしてカティア様と話ができる場を設けたのですから……。いきなり王城に行って話をしようとしても信じてもらえるとは思えなかったのですが、ガエルからあなたの人となりを聞いて……この方なら、と思ったのですよ」

 ガエル君から?
 ……いったいどんな話をしたのだろうか?
 非常に気になる……
 後で聞いてみよう。


「分かりました。私の方から国王とうさまに話を伝えて、正式に協力体制が取れるように場を整えてもらいましょう」

「ありがとうございます。では、信頼を得るための手土産、と言ってはなんですが……一つ有用な情報をお伝えしましょう」

「情報?……確かに、父様や親しい者たちならともかく、他の者には何らかの材料があれば説得しやすいですね」

 グラナの皇女が協力したいと願い出ている……と言っても疑う者も多いだろうから。
 私がいくら「信頼できる人だ」なんて言っても……まぁ、ある程度は信用してくれるとは思うけど、何も無いよりは納得できるだろう。


「それで、その情報とは?」

「ある組織の情報です。以前より、カティア様を始めとしたシギルを持つ王族の方が狙われていたでしょう?」

「!……ええ。レーヴェラントの情報によれば、それは『黒爪』という暗殺集団だと言うことまでは掴んでましたが……」

 今もレーヴェラントでは捜査が行われているらしいけど、どうやら拠点を移したらしく成果が上がっていないと聞いた。

「そこまでは掴んでるのですね。流石です」

「でも、それ以上は行き詰まっているのが現状です」

「でしたら、こちらの情報はお役に立てそうです。『黒爪』の現在の拠点……それは、ここアクサレナにあります。証拠も抑えておりますので、今が壊滅させるチャンスです」

「ええ!?」

 それが事実なら……いくらレーヴェラントで捜査しても進展するはずがない。

 ……手土産どころの話ではないね。

 そうして、私はエフィメラさんが語る詳細な話に耳を傾けるのであった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...