461 / 670
第十二幕 転生歌姫と謎のプリンセス
第十二幕 44 『市街戦』
しおりを挟む『ぐおぉーーーーーーんっっ!!!!』
七番街に破壊音が鳴り響き、怒号が飛び交う。
3体の黒魔巨兵は雄叫びを上げ、手あたり次第に建物を破壊する。
騎士たちの初動が早かったのか、負傷者はいるものの死亡者の報告は上がっていない。
壊された建物は国の支援で復旧出来るが、失われた命は補償する事が出来ないので、不幸中の幸いと言えるだろう。
このまま犠牲者を出すことなく撃退したいところだ。
人命優先と言えども、これ以上街が破壊されるのも阻止したい。
しかし、あれ程の巨体を阻止するのは流石に厳しい。
騎士たちは果敢にも攻め立てるが、優に10メートルはあるであろう巨体には、精々が膝くらいまでしか攻撃が届かないのだ。
更にはあの甲虫のような皮膚は見るからに強固そうで、実際に騎士たちの剣は有効打を与えているようには見えない。
何人か魔法が使えるものは攻撃魔法も試しているが……あの『異形』の時と同じ様に、魔法そのものを減衰させる結界のようなものが張られてるらしく全く効かない。
『ぐがぁーーーっっ!!!』
巨人は足元に纏わりつく騎士達を鬱陶しそうに足を降ったり手で払おうとする。
まるで羽虫を追い払うかの様だが、その巨体から振るわれるそれは恐るべき攻撃となる。
精鋭揃いの騎士と言えど、圧倒的な質量が高速で迫ってくるのを躱すのは困難で、何とかギリギリで回避するのがやっとだ。
いや、何人かは直撃は避けたものの僅かに掠め……それだけで負傷してしまった。
負傷した騎士は後方に下がるが、その足取りは割としっかりしている所を見ると……どうやら魂を喰らう能力は無さそうで、その点は安心した。
そんな状況で奮戦してるのは……
「うおーーーっっ!!!」
「でりゃぁーーーっっ!!」
父様と父さんは大剣を振るって、騎士達が表面に傷つけるのがやっとだったところ、明らかにダメージを与えている。
「シッ!!」
リュシアンさんの槍の一撃も巨人の足に穴を穿つ。
アネッサ姉さんは攻撃魔法が効かぬと見るや、味方の能力を底上げしたり、幻惑魔法を使ったりして支援に徹している。
だが、誰もが持てる力を結集しても、巨人はその歩みを止めない。
父様たちが与えたダメージも即座に再生してしまう。
私やテオはその状況を黙って見てる訳ではない。
この状況を打破するための一手を打つべく意識を集中させているところだ。
そして、準備が整った!
「我が血の中に眠る古の力よ…今こそ目覚めて顕現せよ。そして、彼の者の束縛を解き放て!」
テオの印の力が解放される!
その瞬間、私の中に眠った力が目覚めるのを感じる。
「[拡声]~!」
いつの間にか姉さんが私の側にやって来て[拡声]の魔法を使ってくれる。
そして、私も[絶唱]の力を使うため、歌い始めた!
見よ、我らが行く先にある栄光を
勇敢なる者たちよ、恐れることなかれ
女神の加護は我らとともに
我が歌声は勇者を導く女神の福音
行け、その手に勝利を掴むまで
行け、道を切り拓き、勝鬨を上げるまで
………
……
…
街中に私の歌声が響き渡る。
テオの印の力によってその効果を劇的に増した[絶唱]の力……それは漣のように広がる光の波動となって広がった。
その光に触れた戦士たちは、薄っすらと燐光を帯びて、その力を倍増させる!
「これが[絶唱]の力か!!凄まじい力が湧き上がるな!!」
「相変わらずのデタラメさだぜ……!」
「近くの『学園』に誘導しなさい!!あそこなら被害が拡大しません!!」
「学生たちの避難は終わったのか!?」
「まだですが、野外訓練場であれば大丈夫です!!」
「分かった!皆の者!聞いた通りだ!!気合を入れろ!!」
「「「おおーーーーっっ!!!」」」
圧倒的に力が増大した騎士達が反撃に出る。
硬い外殻に阻まれていた攻撃も通るようになった。
父様たちの攻撃は更に苛烈なものとなり、巨大な足を切り飛ばしてしまいそうな勢いだ。
それでも、恐ろしいまでの再生速度で即座に傷が塞がれてしまう。
だが、巨人の歩みは明らかに遅くなった。
あとはリュシアンさんの指示通り、広い場所……学園の野外訓練場に誘導できれば……
激戦はまだまだ続く。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
323
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる