【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

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第十二幕 転生歌姫と謎のプリンセス

第十二幕 54 『姉妹』

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「シェラさん!?」

 狂気に囚われた調律師が、破滅的な何かをしようとした正にその時……制止の声を上げたのはシェラさんだった。
 どういうわけか、メリエルちゃんに支えられている。


「姉さん……」

 憑き物が落ちたように落ち着きを取り戻した調律師が呟きを漏らす。

 やはり、この二人は姉妹なのか。
 改めて両者を見比べてみても、よく似ている。


「ヴィー、馬鹿な真似は止めなさい」

 再び、今度は諭すような口調で制止の言葉をかけるシェラさん。
 その瞳には、悲しみ、哀れみ、嘆き……何とも形容し難い色が浮かんでいた。


「何故止めるの?どうして分かってくれないの?脆弱で愚かな人間という軛から脱却し、全ての者が魔族に至れれば……未来永劫にわたり平和な世が訪れると言うのに」

「そんなものは幻想よ。あなたは黒神教に良いように利用されてるだけ。魔族など……『黒き魂』の意思に支配された、奴らの傀儡に過ぎない。以前のあなたであれば、そんなことは言わなかった」

 『黒き魂』の意思に支配された……でも、そう言うシェラさん自身は、とてもそうとは思えない。
 彼女も妄執に囚われているのは同じ……かつてリル姉さんはそう言ったけど、他の魔族とはやはりどこか違うように思える。


「私は魔族に至ることでその素晴らしさに気がついた。同じ魔族なのに……何故姉さんにはそれが分からないの?」

 そう言う調律師の口調は、これまで相対してきた印象とはまるで違っていた。
 それこそ、姉妹どうしの自然な会話のよう。

 そして、それはシェラさんも同じ。

 だけど、会話の内容はお互いに平行線をたどって相容れない。



「メリエルさん、ありがとう。ここは危険だから、下がってて」

 そう言ってシェラさんはメリエルちゃんから離れ、戦闘体勢を取ろうとする。
 もはや説得は不可能と判断したのだろう。

 だが……

「だ、ダメだよ!!姉妹で戦うなんてっ!!」

 メリエルちゃんはシェラさんの腕を掴んで引き止めようとする。

 シェラさんは少し困ったような表情で、しかしやんわりと腕を解く。

「あなたは本当に優しい娘なのね。だけど、あの娘を止めるには戦うしかないの。もう、遥か昔に私達の進む道は別れてしまったのよ」

「そんな……」


「ふふ……姉さんに私が止められるのかしら?さっきだって、私の力を思い知ったばかりでしょうに」

 調律師の言う通り、シェラさんは彼女と一度戦って敗れているはず。

 だけど……


「何も私だけで戦う必要はないわ。先程あなたが使おうとした力は、私が何が何でも封じて見せる。そうすれば……カティアさんたちなら、必ずやあなたを打倒してくれる」

 シェラさんは決然として言い放つ。

 私達もそれを聞いて、改めて戦意を高め……彼女の期待に応えようと気合を入れ直す。


「…………」

 沈黙する調律師。
 どこか逡巡しているかのようだ。



 そうして睨み合いを続けていると……











『もう良い、調律師よ。まだお前の力を失うわけにはいかぬ。此度は引き上げよ』

 唐突に新たな何者かの声が響き渡った!


「誰っ!?」


 声はすれども姿は見えず。
 戦場全体に響き渡るような感じで、発声元も判然としなかった。
 ただ、その声音からすれば、おそらくは男性だろう……という事だけ分かった。


「……『軍師』ですか。あなたに指図される謂れはないのですが」

 不機嫌そうに答える調律師。

 『軍師』という事は、黒神教の幹部である七天禍の一人と言う事か?


『ふ……お前にしては珍しく、随分と感情的になってるではないか』

「あなたには関係ありません」

『まぁそう言うな。お前が本気を出せば、その場にいる者たち全員を屠る事も出来ようが……お前自身もただでは済むまい。今お前を失うことは我らにとって大きな損失であるし、それは本意ではあるまい?』

「……分かりました。今回は引きましょう」



「待ちなさい!!これだけのことをしておいて……このまま逃がすと思ってるのっ!!?」

「総員!!総攻撃っ!!ヤツを逃がすなっっ!!」

 謎の声との会話のやり取りから、逃亡するつもりなのを察した私達は、剣閃を飛ばしたり魔法を放ったりして攻撃を仕掛けるが……!


「……命拾いしましたね。お互いに」


 調律師は私達の攻撃を意にも介さず、どんどんと上空へと昇っていく。

 シフィルやミーティアが追い縋ろうとするが、その距離は縮まらず。



「ヴィーっっ!!!」


「さようなら、姉さん。また会いましょう。……願わくば、姉さんと一緒に……」


 最後のその言葉は、段々と小さくなって最後まで聞き取ることが出来なかった。

 そして、調律師の姿は、ふっ…と掻き消えるのだった。

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