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幕間
幕間23 『エフィメラ』
しおりを挟む我がグラナ帝国は斜陽を迎えつつあります。
表向き強大な力を持っている様に見えても、人心が離れてしまった国の末路など……論ずるまでもないでしょう。
だけど。
私は皇族の一員として国の行く末を放って置くことなどできるはずもなく、どうにかしようと思ってここまでやって来ました。
今のグラナの実質的な支配者である黒神教の目を、何とか逃れて……そして、彼らを打倒するために。
しかし、黒神教の力は絶大です。
長い時をかけて皇族の権限を削いでいった政治的手腕のみならず、文字通りの人外の力を持った者たちが実権を掌握し、もはや普通の人間では対抗することができません。
だから、私は外側から国を変えようとしました。
長きに亘って交流の無かったカルヴァード大陸の国々……15年前の大戦から再び敵対関係となってしまった以上、グラナの皇族である私が助力を求めるなど無理筋とも思えます。
それでも、一縷の望みを託して逃してくれた家族のためにも……私は諦めるわけにはいきませんでした。
「……どうにか、会談まで漕ぎ着ける事が出来ましたな」
「ええ、アグレアス様のご助力には感謝いたします」
「エフィメラ様が誠意を持って事に当たられたからこそでありましょう」
カティア様との秘密の面会のあと、王都争乱と言う大きな事件を経て、遂にイスパル王国との正式な会談が行われる事になりました。
調律師……黒神教に私の所在がばれてしまいましたが、大きな成果と言えましょう。
「……黒神教もいよいよ本格的に侵攻を始めるつもりでしょうか」
「……そう、ですな。調律師の行動からすれば、もう既に準備は整った……と考えるのが自然かと」
やはり、そういう事ですよね。
ヴィリティニーア様の役割は『黒き魂』を集める事と、様々な研究成果の確認を実地で行うこと。
だからこそ、これまでは自身は直接戦闘は極力避けるように行動していたはず。
それが今回は……正体を隠そうともせず、積極的に戦いに身を投じた。
リシェラネイア様や『軍師』の介入がなければ、果たしてどういう結果になっていたことか。
「『黒き魂』を意図的に人の身に降ろして魔族化させる。それだけではなく、あの『黒魔巨兵』も……300年前の大戦と同じくらい……いえ、それ以上の戦乱の時代が到来してもおかしくありません」
「それだけは何としても避けなければなりません。事によっては……直接グラナに乗り込んで、黒神教の幹部と教皇を打倒しなければ」
「黒神教幹部……七天禍は、『獣騎士』と『奇術師』は既に倒して……残るは『調律師』『薬師』『軍師』『占星術師』……そして『魔剣士』、ですか」
「人為的に魔族を作り出せる以上、他にも強力な魔族がいると思った方が良いでしょうね。幹部クラスを早々作れるとは思いたくありませんが……」
あまりにも困難な先行きを思い、目眩すら感じてしまいます。
「ですが、カルヴァードの国々も負けてはいませんよ。本格的な侵攻では無いとはいえ、これまで何度も黒神教の企みを退けてきました。そして、その中心には……」
「カティア様ですね。確かに、彼女ならば何とかしてくれる……そう思わせる何かがあると、私も思います」
まだ少ししか話していませんけど……あの方には人を惹きつける不思議な魅力と、根底に流れる大河のような力を感じました。
「出来れば……可能な限り彼女と一緒に過ごしたいところですね」
今後のための連携強化……という意味もありますが、私自身が彼女に惹かれているというのもあります。
『黒爪』を壊滅させたとは言え、暗殺の危険が全く無くなったわけでも無いでしょうし……出来るだけ近くに居た方が良いと思うのです。
そのようなことをアグレアス様に相談すると……
「ふむ……でしたら私めに考えがございます。少々根回しが必要ですが………………というのは如何でしょう?」
「まぁ……それは良い考えですね。是非お願いしたいです」
彼の提案を非常に魅力的に感じた私は、早速その案を進めてもらうようにお願いするのでした。
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