【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
486 / 683
第十三幕 転生歌姫と生命神の祈り

第十三幕 9 『死闘』

しおりを挟む

 夢の中の最終決戦は続く。

 残ったのはテオフィールとリディアの二人。
 激しい戦いによって、リディアの呼吸は荒くなり、テオフィールはそれ以上に疲弊している様子。
 二人共まだシギルの輝きは失われてはいないが、長くはもたなそうだ。


 対する魔王は未だ力の底が見えず、全くの無傷で疲労も感じられない。
 泰然と佇んで二人の勇者を余裕の表情で待ち構える。



『リディア、俺も前に出る』

『テオ……うん、お願い!』

 今まで見てきた夢の中では、テオフィールは『異界の魂』に対抗するためシギルの発動と制御に集中していた。
 その彼が剣を抜き放ってリディアと並び立った。

 手にするのは、シンプルな形状ながら、黒い剣身に無数に散りばめられた輝きを持つ神々しいオーラを纏った剣。
 まるで夜空の星々を集めたようなそれは、もしや……あれこそが星剣イクスヴァリスの真の姿か!

 そうか……リディアと同じく、テオフィールも神器を最終決戦に持ち出していたんだね。






 そして、二人は魔王に決死の戦いを挑む。

 二人の剣の技量は達人の領域を遥かに超えて、神技と呼ぶべきほどに研ぎ澄まされたものだった。
 更に、これまでの長い戦いの旅で培われた息の合った連携も……並大抵の敵ならば、とうに打倒出来ていたに違いない。


 だが、それでも魔王はその場から動くことなく巨剣一本で二人の攻撃を尽く弾く。
 あれ程の力を持つ二人をもってしても、掠り傷一つ与えることが出来ない。
 そして、やはり全く本気を出していないように見える。
 ……正に魔王と呼ぶに相応しい隔絶した力を持っているのが良く分かった。














『はぁっ……はぁっ……なんて……強さなの……』

『……まるで攻撃が通らないとは』

 何度攻撃しても結果は同じだった。
 このままでは二人は体力を消耗するだけで、何れは……


『こうなったら……一か八か、賭けに出るわ』

『……あれを使う気か?』

『ええ。もうそれしか方法は無いでしょう?』

『……分かった』


 どうやらリディアには何か切り札があるようだ。
 それをここまで出さなかったのは……相応にリスクが有るということ。
 彼女が言う通り、一か八かの賭けなんだろう。

『必ず隙を作るから……テオは滅魔の刃をあいつに叩き込んで!』

『ああ……任せろ!!』



『ふ……まだ何かするつもりか?もうお前たちの力では、私には勝てぬということがまだ分からぬのか。大人しく我が軍門に下れば、悪いようにはせぬぞ?』


『ほざきなさい、余裕の表情もそこまでよ。……[戦神降臨]!!!!』

 !!
 それが切り札か!

 リディアの身体から青い闘気が勢いよく噴き上がり、シギルの青い光と混ざり合ってより鮮烈な輝きを放つ!!


 ドンッ!!


 爆発音を伴う猛烈な踏み込みによって、残像すら残しながら一瞬で魔王との間合を詰め……


『でやあーーーーーっっっ!!!!』


 ギィンッッッッ!!!!


 聖剣と巨剣が交錯する!!!



『ほうっ!?そんな隠し玉を持っているとはな!!面白い!!』


 リディアの切り札に、流石の魔王もしっかりと剣を構えて猛然と襲いかかる斬撃を迎え撃つ!!

 完全に本気を出してるのかは分からないが……今度は魔王もそれほど余裕はなさそうだ。
 互角の戦いが繰り広げられているように見える。

 しかし、おそらくは[鬼神降臨]と同じように発動時間はごく短いはずだ。

 果たして、短期決戦の選択は吉と出るか凶と出るか!?


『ハァーーーッッ!!!』

『小娘がやりおる!!だが、それでも私を倒すことは出来ぬぞっ!!!』

 ギィンッッッ!!!

 ガィンッッ!!!

 ドゴォッッ!!!


 これまで防御しかしてこなかった魔王も、遂には巨剣による攻撃を繰り出すようになった。

 二人の戦いは、もはや猛烈に吹き荒れる暴風の如く誰も寄せ付けない領域となる。

 隙を伺うテオフィールも手出しが出来ない状況だが……シギルの光は燦然と輝きを増して、聖剣に集まって光の刃を形作る。
 今はただ、リディアが隙を作るという言葉を信じて、滅魔の刃を研ぎ澄まさせているのだ。





 そして、膠着していた状況が遂に動く!!


『中々楽しめたが、ここで終わりにしてやる!![天魔波旬烈氣]っ!!!!』

 僅かに間合いが離れた瞬間、魔王の纏った漆黒のオーラが爆発する!!
 圧倒的な破壊の力をもった闇の衝撃波が、魔王を中心に広がって周囲の全てを飲み込もうとする!

 しかし、それがリディアを飲み込もうとした、その瞬間……!


『[至天一閃]!!!』

 床を削りながら天に向かって聖剣が斬り上げられる!!
 剣を纏っていた青い光が斬撃となって、目前まで迫っていた闇の衝撃波を切り裂き、そのまま魔王に襲いかかる!!
 

『!!?うおーーーーっっ!!!』


 ドゴォーーーーンッッ!!!!


 大技を放って硬直したところに、まともに直撃!!

 だが、完全に衝撃波を相殺しきれなかったリディアも大きく吹き飛ばされる!!


『キャアーーーーッッ!!!』

 ゴロゴロと何度も床を転がってようやく止まったが、もう既に青い輝きは失われ……彼女の目から光が失われていく。


『リディアっ!!!』

『テオ……今よ……!!止めを……刺してっ!!!』

 最後に声を振り絞ったところで、リディアは気を失ってしまった。



 そして、その場面を最後に……私の視界も急速に白い靄で覆われていくのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...