500 / 683
第十三幕 転生歌姫と生命神の祈り
第十三幕 23 『ダンスパートナー』
しおりを挟むーーーー ステラ ーーーー
夜会に出席するのは、カティアのお披露目パーティー以来ね。
あの時はまだイスパルに来たばかりで、ずっと不安を抱えていたけど……今はこうして、国を代表して出席しているのが不思議に思えるわ。
まだ何の実績もない私が代表なんて……と言う不安も少しあったけど、無難に務められたとは思う。
シフィルが随分心配してたけど、彼女はあくまでも学園内での護衛兼友人だから、一緒に出席をお願いするのは止めておいた。
そして、会議に出席した各国要人が招かれたこの夜会。
以前はあまり積極的に他の人と話すことが出来なかったけど、他国の要人との顔繋ぎができる貴重な社交の場を無駄にするわけにはいかない。
アダレットの過去の過ちにいつまでも囚われて俯いてもいられない。
信頼を取り戻すには行動しなければ。
そう意気込んで、色々な人と話をした。
幸いにも、過去をあれこれ言ってくる人はいなかったので、私としても必要以上に気負うことなく応対できたのは良かったと思う。
ふと、会場の片隅でエフィとシェラさんが話をしているのが目に入った。
よくよく考えてみれば、彼女たちの方が私なんかよりもよっぽど居心地悪いと感じるはず。
周りを見てみれば、悪意のある視線を向ける人はいないけど、どう接すればよいのか戸惑うような雰囲気を感じた。
そう言えばカティアから、『自分は中々動けないだろうから出来ればフォローしてあげて欲しい』……と言われていたわね。
それを思い出してエフィ達のもとに行こうとしたが、先に声をかけようとする人がいた。
あれは……イスファハン王子ね。
あの人とは、カティアのお披露目パーティーの時に少し話をしただけなんだけど……一見して軽薄そうに見えて、その実真面目な方なのよね。
そう思うと、私はある人を思い出して……何だかソワソワした気分になった。
イスファハン王子が声をかけると、最初は訝る様子を見せた二人も直ぐに表情を和らげて、和やかな雰囲気で談笑を始めた。
……先を越されたけど、あの様子なら大丈夫かしらね。
多分、他の人も声をかけやすくなった事でしょう。
せっかくいい雰囲気で話しているところに水を差すのも悪いので、私はまた後で声をかけようと思い、その場を後にした。
ーーーーーーーー
宴も酣と言うところで、会場の音楽の雰囲気が変わった。
それに合わせて会場の中央は場所が空けられる。
「あ、ダンスの時間みたいですね」
「そのようですね。……カティア様、よろしければ一曲お付き合い頂けませんか?」
「……へ?」
ジークリンデ様の申し出に、思わず間の抜けた声が出てしまった。
いや、だって……女同士でダンスと言うのはどうなのだろう?
ん~……見た目的には違和感のない組み合わせに見えるけど。
思わずテオの方を見やる。
「せっかくのお誘いなんだ。行ってきたらどうだ?」
ちょっと苦笑しながら後押ししてくる。
テオ的には別に構わないと。
「ふふ、婚約者様のお許しも出た事ですし……さぁ、お手をどうぞ、お嬢様」
「は、はい……」
う~ん、随分手慣れた様子。
普段から女性を誘いなれてる感じがするよ。
その格好の通り、男性パートで踊れるのだろうね。
何だか複雑な気分。
【俺】という男性の記憶も持つ私が、女として男装の麗人にダンスのお誘いを受ける。
シュールだわ。
……でも何だか面白そうではある。
私はジークリンデ様の手を取って、一緒にダンス会場となった空間へと進み出た。
そして、俄に注目を浴びる中、私達は踊り始める。
「……ジークリンデ様は、女性がお好きなのですか?」
「気になりますか?」
「それはもう……気になりますね」
ダンスを楽しみながらも、気になっていたことを聞く。
変に取り繕っても気まずいので直球勝負だ。
それで気分を害するような方ではない、と思ったのもある。
「私は性別に関わらず魅力的な方は好きですよ」
「……それは恋愛的な意味で?」
「人の付き合い全般において。もちろん、恋愛も含めてです。カティア様はとても魅力的な方なので、誘わずにはいられませんでした」
……どう受け取って良いのやら。
そう言われて悪い気はしないのだけど。
まぁ彼女も婚約者がいる女性を口説くような人ではあるまい。
……そう思うことにする。
「そう思っていただけるのは嬉しいです。私も、ジークリンデ様はとても魅力的な方だと思いますよ」
もちろん恋愛的な意味はないけど、彼女が魅力的だと思うのは偽らざる本心だ。
「光栄です。しかし、こうして踊っていると……カティア様はあまりにも可憐で、とても武勇に優れる方とは思えませんね」
可憐とか。
何だかテオ以外からまともに女の子扱いされるのは久しく無かった気がするなぁ……
「……見た目で侮られる事はよくありますね」
「ある程度の実力者でなければ、そう思うのは仕方ありません。もちろん、私はカティア様が確かな実力者であることは感じてますよ。こうしてダンスをしていても……武に通じるものがありますね」
それは私も同じだね。
無駄のない洗練された彼女の所作は、武人としての実力の高さを感じさせるものだ。
こうしてダンスしていても……運動能力が高いだけでなく、相手の動きに合わせて巧みにリードしてくれるのでとても踊りやすい。
もちろん、テオのリードが一番だけど……彼女とのダンスもとても楽しいと思うのだった。
10
あなたにおすすめの小説
異世界で一番の紳士たれ!
だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。
リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。
リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。
異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる