【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
518 / 683
第十三幕 転生歌姫と生命神の祈り

第十三幕 41 『森の魔女』

しおりを挟む

 迷いない足取りでロビィは朝靄の森の中を進む。
 整地された街道ではないがペース自体は悪くないので、順調に進んでいると言えるだろう。


「しかし、メリエルやロビィの案内なしにこんな森の中を彷徨う事を想像したら……ぞっとしないな」

 テオが染み染みと呟く。
 本当にその通りだね。
 何の手がかりもなしに深い森の中を探索するのはリスクが非常に大きい。

 熟練の斥候でも、目的地がハッキリ分からなければ退路を常に把握しつつ地道に探索するしか無いだろうし。



















「靄が濃くなってきたね……」

 白く立ち込める靄が徐々に濃くなっていき……もう殆ど霧と言っても良いくらいだ。
 ただでさえ見通しの悪い悪い森の中が、ほんの数メートル先も見えない程に視界が遮られる。


 ふと、違和感を覚える。
 それが何なのかは直ぐに分かった。


「……え?皆、どこに行ったの!?」


 そう。
 気が付いたら、先程まですぐ近くにいた仲間たちが誰もいないのだ!


「これじゃあ、まるで……前のメリエルちゃんみたいじゃない!?」

 何気に失礼なことを言ったが、まさに彼女が迷子になるのと同じような状況だ。
 逸れようがない状況で孤立するなんて……

 どう考えても普通の状況ではない。
 もしや、これも大森林結界の力のなのか……?

 嫌な汗が背中を伝い落ちる。


 どうする?

 とにかく進んだほうが良いのか?
 それとも下手にその場を動かない方が良いのか?
 判断材料がない。




 どうしようか……と、途方に暮れていると。
 何だか前方が気になった。

 特に何らかの気配や変わったものを見つけたわけではない。
 何となく……意識が誘導されるような感じ。
 精神干渉でも受けてるのだろうか?

 だが、イヤな雰囲気は感じられないし、このままこの場にいるだけではどうにもならなさうなので、先に進むことにした。
 目印も道案内も無い、ただ自分自身の直感だけに従って……















 似たような光景が続くと時間の感覚が曖昧になる。
 一体どれくらい歩いただろうか。
 景色に変化が訪れたのは唐突だった。


 深い森の中にあって、まるでそこだけ切り取ったように開けた草原が現れる。
 そして、その中心には赤茶けたレンガ造りの一軒家が建っていた。
 家の周りには色とりどりの花が咲き誇る花壇が囲む。

 鬱蒼とした森から一転して突然メルヘンな光景が現れた事に戸惑う。


「こんなところに民家……?」

 そう呟きを漏らして呆然と佇んでいると、どこからともなく声が聞こえてきた。


「ようこそお嬢さん。私の領域へ」

 透き通るような美しい女性の声だ。
 だが、どこにも姿は見えない。


「どなたですか?ここは一体……」

「私は……『森の魔女』よ。さぁ、遠慮なく入ってらっしゃい」


 『森の魔女』……?
 それは確か……

 入って来いと言うのは、あの家の事だよね。
 悪い雰囲気はしないし……ここで引き返すわけにもいかない。

 私は意を決して家に近づき、木の扉に手をかける。
 当然ながら鍵などはかかっておらず、キィ…と僅かな音を立てて扉はあっさりと開いた。

 一応警戒しながら中を覗き込むと、そこはごくありふれた民家の居間と言った雰囲気。

 そして、ソファに腰を下ろす人物と目があった。
 煌めく黄金の髪、澄んだ青い瞳の美しい女性だ。
 彼女は私に微笑みかけながら言う。

「どうしたの?そんなところに立ってないで、中に入って?」

「は、はい……では、お邪魔します……」

 少々気後れしながら私は家の中へ入った。


「さ、どうぞ座って」

「……失礼します」

 勧められるまま私はソファに腰を下ろす。
 取り敢えず挨拶をしないと。


「あの……お招きいただきましてありがとうございます。私はカティアと申します。それで、その……あなたは……」

「カティアさんね。よろしく。私はメリアよ」

 やはり、そうなのか?
 『森の魔女』はウィラー初代女王の通称だ。
 しかし……

 いや、直接聞けばハッキリすることだ。

「メリア様は、ウィラー初代女王のメリアドール様なのですか?」

 その私の問に、彼女は笑みを深めて……



 そして私は驚愕の事実を知ることになる。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...