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第十三幕 転生歌姫と生命神の祈り
第十三幕 48 『森都防衛戦2』
しおりを挟むーーーー ジークリンデ ーーーー
森都の中には相当数の敵が侵入してるようだ。
私が向かう先からも、激しい剣戟と怒号が聞こえてくる。
戦いの場は近い。
ここに至るまで、まだ避難できていなかった住民らしき者たちと何度かすれ違った。
中には大きな怪我を負った者もいて、支えられながら何とか歩いている……という風だった。
私に治癒の魔法が使えれば応急処置も出来ただろうが、生憎と魔法の素養は持ち合わせていない。
出来ないことは嘆いても仕方がないが、だからといって市民に犠牲が出ることは割り切れるものでもない。
取り敢えずエメリナ大神殿に避難するように伝えながら先を急いだ。
グラナの目標は、この森都をカルヴァード侵攻のための足掛かりの一つとする事だろう。
天然の要塞とも言えるウィラー大森林に守られたこの場所は、重要な軍事拠点となる。
そして、ここを陥落させる事が出来れば、次はおそらく……
今はとにかく森都を守らねば。
敵の目的を考えれば、おそらく大規模破壊や大量虐殺は考え難い。
それでも市街が戦闘区域となれば市民の犠牲は少なからず出てしまう。
これ以上の戦域拡大は避けなければ。
戦いの場が見えてきた。
私は神経を研ぎ澄ませ、剣を抜き放ち、冷静になれ…と自分に言い聞かせる。
対魔物戦も、対人戦も……経験はそれなりにある。
……人が相手だからと剣を鈍らせる事はない。
そして私は印を常駐化させて、最後の距離を一気に詰めていく!
「デルフィアのジークリンデ!!いざ、参る!!」
最大速度のまま駆け抜け、すれ違いざまに数体の魔物を切り刻む!!
「ジークリンデ様!?」
私はウィラーには何度か訪問しているので、私の顔を知っていたらしいウィラー兵から驚きの声が上がる。
「私が来たからにはグラナの好き勝手にはさせない!!さあ、押し返すぞ!!」
そして私は印の力を開放する!!
私の……エメリリア様の印の力は『共感』。
人間の精神の根底にある無意識領域の繋がりを媒介し、感覚知覚を共有する事ができる。
それはつまり……
「これは……敵の動きが手に取るように……!!」
「みなの感覚を共有した!!これでお互いにフォローしながら戦うんだ!!」
そう。
感覚知覚を共有するという事は、集団戦闘において絶大な効果を及ぼす。
これこそエメリリア様が『勝利の女神』と言われる所以だ。
そして私達は、集団でありながら一つの意志を持った生き物のように機能し始める。
ーーーー ステラ ーーーー
カティア、テオフィルスさん、イスファハン王子、ジークリンデ王女……それぞれが前線に向かう一方、私は別の場所を目指していた。
入り組んだ場所での混戦では、私の力を発揮できないと思い……弓の射程を活かせる高所の確保を考えている。
そう考えた時、この街で最も高所で見通しの効く場所……それは、もう目前だった。
そして私がやってきたのは、エメリナ大神殿。
ここの大鐘楼からなら上空から戦場が見下ろせるはず。
巨大な神殿には、今も多くの住民が避難するため列をなしている。
私は彼らの横を駆け抜けて神殿の中に入る。
広大な礼拝堂……普段であれば多くの人々がエメリナ様に祈りを捧げるその場所は、今は多くの避難民が不安そうに肩を寄せ合う。
負傷者も多くいるようで、神官たちが治療に当たっていた。
すすり泣く声があちこちから聞こえるのは……
ともすれば意識がそちらに向きそうになるけど、今はとにかく敵をなんとかするのが先決…と自らに言い聞かせる。
「お待ちなさい!あなたは……」
神殿の奥、鐘楼へ続く階段へ向かう私を、神官の一人が呼び止めた。
「私はアダレットの王女、ステラです。戦闘支援のため鐘楼をお借りします!」
「アダレットの……!?そ、そんな事、信じられる訳が……」
いきなり他国の王女が来たと言っても、やっぱり直ぐに信じられないわよね……
問答してる暇もないのだけど、どうしたものか……
そう思っていると、別の…より高位らしい巫女と思われる女性が話しかけてきた。
「その方をお通ししなさい」
「え!?……よろしいのですか?素性の分からぬ者を立ち入り禁止区域に通すわけには……」
「今しがたエメリナ様から神託がありました。結界の影響か、これまで交信が出来なかったのですが……とにかく、今この森都には各国の王族……印持ちの方々が助勢に駆けつけてくれているから、協力しなさい、との事です」
エメリナ様が事前に説明してくれたようね。
多分、カティアが貰ったという宝玉を介して神託を降ろせるようになったのかしら?
「なんと……!!失礼しました!!どうぞこちらへ……どうかウィラーをお救いください!!」
「ええ。私の持てる力の限りを尽くします」
例え微力ながらでも……一人一人が全力を尽くして力を合わせれば、きっと道は開ける。
そう信じて戦いましょう!
10
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