【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
598 / 683
第十五幕 転生歌姫の最終決戦

第十五幕 1 『演説』

しおりを挟む

ーー ウィラー王国アルマ地方 対グラナ戦線 ーー


 国境の山岳地帯を超えてやって来たグラナ帝国軍。

 魔物と通常兵の混成部隊。

 その数は、ざっと見積もっても数万は下らないだろうか。
 ただし、それが全てと言うわけではない。

 似たような光景がウィラー以外の国境地帯でも繰り広げられている事だろう。
 デルフィア、レーヴェラント、シャスラハにも、それぞれの国軍と、各国が派遣した支援軍が展開しているはずである。

 グラナ帝国が、それほどの規模の軍を同時に展開出来るのは……やはり魔物を戦力に組み込むことが出来るためだろう。
 実際に侵攻軍の構成をみれば、通常兵よりも魔物の数の方が多いように見える。

 その魔物だが、種族としてはゴブリンやオーガ、オーク、トロールなどの人型の魔物が中心となっているようだ。
 これは、先ごろのウィラー侵攻でも見られた傾向だ。

 だが、少数ながら、飛竜などの飛行型の魔物や、大型肉食獣の魔物も混じっている。


 対するカルヴァード大陸連合軍は、当然ながらほぼ全ての兵員が人間である。
 飛竜を駆る竜騎士もいるが、それはごく限られた戦力に過ぎない。


 兵数の面では互角かそれ以上。
 しかし、このままでは苦戦は必須のものと思われた。








 だが……


「グラナ軍の侵攻が始まりました!!」

 ウィラー王国軍の本陣。
 その中で最も大きい天幕にやって来た伝令の兵が、グラナ侵攻開始の報を伝えた。

 そこには、ウィラー軍の総大将を始めとした上級将校たちが居並ぶ。
 そして……


「いよいよか。……エメリナ様」

「ええ。私も出るわ。回復支援は任せて。……攻撃は期待しないでね」

「お願いします。強力な回復魔法があるのであれば、兵たちも安心して戦えます」

「これは伝えたとは思うけど……森都の時よりも広範囲で人数も多いから、あの時みたいな劇的な回復は難しいわよ」

「承知しております。それでも望外の事ですよ」

「うん、分かってるならいいわ。さぁ、行きましょう!!」


 そうして、地上に降りた生命神エメリナは、戦場に赴く。



(……お姉ちゃん達も地上に降臨する準備をしているはず。私達が力を合わせれば、きっとグラナの侵攻は防ぐことができる。あとは……カティアちゃん、しっかりやるのよ!)


 グラナ軍と連合軍は、今にも衝突寸前。

 そんな最前線から、やや後方に、将校達に囲まれて立つエメリナ。

 戦場に似つかわしくない、やや幼くも美しい小柄な少女。
 だが、そこに内包するのは圧倒的な力。
 それは、神々しいオーラとなって周囲を圧倒する。


 そして、戦場に女神の声が響き渡る!!


『勇者たちよ!!生命神たる私がいる限り!!あなた達の勝利は揺るぎないわ!!』

 その瞬間、鮮やかな翠の光がエメリナを中心に広がっていく!!

 その光を浴びた連合軍の兵士たちは、己の身体の内で命の炎が燃え上がるかのような感覚を覚える。


 おぉおーーーーっっっ!!!!


 神の加護を得た兵たちは奮い立ち、雄叫びを上げて戦場を疾駆する!!



 そして遂に、両軍は激突した……!!













 戦端が開かれ、激しい戦いがそこかしこで繰り広げられる。
 大軍同士の激突は、個の力を数で飲み込んでいく。


 連合軍の戦士たちは勇猛果敢に戦っている。
 彼らが怪我を負っても、エメリナの力によってたちまちのうちに治ってしまうが、それとて万能ではない。
 一撃で絶命するような場合は流石に回復不可能であるし、何度も大きな怪我が癒える訳でもない。
 失われた命は戻らないという自然の摂理は、厳然として存在するのだ。

 それでも、魔物が主力のグラナ軍と互角に戦えるのは、女神の加護の賜物であろう。






 そんな戦場に一人の少女が現れて、大声を張り上げる。
 『拡声』を使っているらしく、その声は戦場の怒号に掻き消されることなく響き渡る。


『聞け!!グラナの臣民よ!!私はグラナ帝国の第三皇女、エフィメラである!!』

 突然の名乗りに、グラナ軍の人間の兵に動揺が走る。
 将校たちはそれを収めようとするが……


『此度のお前達の侵攻は、皇帝陛下の意思によるものではない!!全ては黒神教の野望によるものである!!』


 激しい戦いの中、エフィメラの演説は続けられる。


『この戦いに、グラナの大義など無い!!お前たちが祖国の事を想って戦うならば……黒神教こそが、その相手であると知れ!!そして、志があるのならば!!私とブレイグ将軍の下に集え!!!』


 ブレイグ将軍の名が出ると、更に動揺が広がる。
 中には、将校の一部にも迷いが見られた。




 エフィメラの演説は続く。

 そして……僅かながらも、グラナの兵の中に離反する者が現れ始めた。


 それはまだ、戦況を左右するほどのものではなかったが……多くのグラナ兵に、迷いの心を植え付けるものとなるのだった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

神々に見捨てられし者、自力で最強へ

九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。 「天職なし。最高じゃないか」 しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。 天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...