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第十五幕 転生歌姫の最終決戦
第十五幕 2 『神威降臨〜豊穣神・武神』
しおりを挟むーー ウィラー王国アルマ地方 対グラナ戦線 ーー
戦端が開かれて数時間が経過した。
エメリナの助力があっても、戦況は五分と五分の状況。
連合軍、グラナ軍の双方に少なくない損害が生じているが、戦闘は激化の一途を辿る。
そんな中にあって、獅子奮迅の活躍を見せるもの達がいた。
リュシアンは公爵家伝来の神槍を手に、自ら先陣を切って次から次へと敵軍の魔物たちを屠る。
そして、リュシアンに付き従うケイトリンとオズマも、持てる力の限りを尽くし、目覚ましい活躍を見せる。
彼らの主……カティアに再開した時、胸を張れるようにとの想いを込めて。
そして、エフィメラとブレイグ将軍率いる部隊の活躍も瞠目に値する。
符術を駆使して戦う皇女と、圧倒的な武威を誇る歴戦の将。
彼らが率いる兵たちも士気高く、更には……エフィメラの説得に応じてグラナ軍から寝返った者達も加わり、連合軍にとって大きな力となっている。
それでも。
依然、厳しい戦いであることに変わりは無かった。
(お姉ちゃん、まだなの?このままだと犠牲者がどんどん増えちゃうよ……。早く来て!!)
自らの力を持ってしても、消えゆく命を救えないもどかしさに、焦りの色を見せるエメリナ。
もちろん、彼女の力無くしては、戦況はより厳しいものになっていたであろうことは、疑う余地もない。
それは彼女の回りにいる将兵たちもよく分かっているので、エメリナを責めるものなどいない。
それでも、自分達を神として慕ってくれる人間たちを、一人でも多く救いたいと彼女は思うのだ。
そんな彼女の祈りが通じたのか……
ついにその時がやって来た!
(来た!!)
『『神威降臨……!』』
優しくも厳かな女性の声と、威厳あふれる男性の声が、天上より戦場に響き渡る。
その時、誰もが戦いを忘れて天を見上げた。
エメリナが降臨したときと同じように、雲の切れ間から差し込む光とともに、神々しいオーラを纏った豊穣神と武神が地上へと降り立つ。
「遅いよ!お姉ちゃん!ディザールさん!!」
文句を言いながらも、二人に駆け寄ったエメリナの表情には喜色が浮かんでいた。
「ごめんなさい、リナ。座標の固定に手間取ってしまって……」
「我らの地上降臨を阻むような波動が、東の地より放たれ始めてるのだ」
「それって……邪神?」
「分からぬ。だが、徐々に強まっている。もう少し遅かったら、地上に降り立つのが困難になっていただろう」
そのディザールの言葉を象徴するかのように……戦場の上空には暗雲が垂れ込め始めていた。
「カティアちゃん……大丈夫よね」
「カティアなら、きっと大丈夫。今は、あの娘との約束を守るため、全力を尽くしましょう」
「……うん!!二人が来てくれたから……これ以上の犠牲者は出さないよ!!」
そして。
伝説に語られた、三神の力が再び地上で振るわれる。
エメリールは本陣近くに立ち、目を瞑り、祈りを捧げるように両手を組む。
そして……その唇から、美しい歌声が紡がれ始めた。
と、同時に彼女から金銀の光の波動が波紋のように広がっていく。
その光を受けた連合軍の兵たちは、己の身体から活力が湧き出るのを感じた。
最前線で戦っていたリュシアン達も、光を浴びて自身の力が著しく増大するのが分かった。
「これは……カティア様の[絶唱]と同じ……?」
「ええ!!まるで……カティア様が一緒に戦ってくれているかのようです!!」
「優しい歌声……これが、エメリール様の……」
エメリールの支援を受けた連合軍は、少しずつグラナ軍を圧倒し始める。
そして更に……!
ドォォンッッ!!!!
「何だっ!?」
凄まじい爆音が鳴り響き、グラナ軍の一角が纏めて吹き飛ばされるのが見えた。
「あれはまさか……ディザール様の攻撃か?」
「……どうやらそのようです」
「ひぇ~……凄まじいですね……」
どうやら、最前線に躍り出たディザールの剣閃が、衝撃波となって敵を吹き飛ばしたらしい。
こうして、三神が降臨した事により……戦況は連合軍有利に大きく傾くのであった。
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