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第十五幕 転生歌姫の最終決戦
第十五幕 3 『神威降臨〜勝利の女神・月の女神・技巧神』
しおりを挟むーー デルフィア王国 対グラナ戦線 ーー
デルフィア王国のグラナ国境付近においても、激しい戦いが繰り広げられていた。
デルフィア王国軍、及び各国支援軍によって構成される連合軍の総大将……ジークリンデ王女は、刻一刻と変わる戦況を本陣にて確認しながら、次々と伝令を飛ばしていた。
休まる時間など殆どなかったが、ある程度指示を出し終えて僅かながら息をつく事が出来た。
「……ふぅ。中々厳しい状況だな。本当だったら私も前線に赴いて、直接指揮を執りたいところだが……」
総大将と言う役割を与えられた以上、迂闊に本陣を離れることなど出来ない事は理解しているが、一人の武人としては忸怩たる思いがあるようだ。
「貴方様は我が軍の大将なのです。ご自重くださいませ」
副官の……それこそ年若いジークリンデなどよりも、よほど歴戦の将といった雰囲気の壮年男性の言葉に、思わず苦笑が漏れる。
「ふ……私などより、15年前の大戦の勇将である貴殿の方が、大将に相応しいと思うのだがな。私は一介の騎士として戦う方が性に合ってる」
「そんな事は有りませぬぞ。各方面への指示も的確でございました。……陛下の親心もございますれば」
「あ~……父上は過保護すぎると思うよ。まぁ、そうは言っても……戦況によっては私も出るぞ。印の力をここで使わずして何とするか」
「……」
ジークリンデの言葉に、複雑な表情をしながらも副官は否定する事が出来ない。
魔物を主体としたグラナ軍の攻勢。
今は何とか均衡を保っている状況だが、少しでも戦力が欲しいのは事実だからだ。
「さて……カティア王女の話では、神々のご助力をいただけるかも知れないとの事だったが……」
「……それは、真の話なのでしょうか?」
「少なくとも、ウィラーでの戦いではエメリナ様がご降臨された。それにカティア王女がそう仰ったんだ。私は信じているよ。それまでは、私達の力で頑張るんだ」
彼女の言葉には、カティアに対する確かな信頼が込められていた。
「随分と、カティア王女を信頼されてらっしゃるのですな」
「ああ、彼女は素晴らしい女性だよ。テオフィルス殿と婚約してなかったら、私のパートナーになってもらいたかったくらいだ」
「そ、そうですか……」
どこまで本気なのか、副官は計りかねていたが……彼女の目は、冗談を言っているような雰囲気ではなかった。
均衡を保っていた戦況は、少しずつ変わり始めていた。
やはり、地力で勝る魔物が中心のグラナ軍の力は強大で、徐々に連合軍が押され始めているのだ。
戦線の各所から厳しい報告が相次ぎ、ジークリンデは難しい判断を迫られていた。
「こうなれば……私の印の力で反撃を……」
「姫様、なりませぬ。まだ、時期尚早かと存じます」
「だが、グラーツ殿。このまま押し込まれては、反撃する機会もいずれ失われてしまうぞ」
「ですが……」
副官……グラーツの言葉も、ジークリンデの言葉も……どちらの意見も正しいように思える。
ジークリンデの印は、個人の戦闘能力のみならず、周辺の兵に対して知覚を共有することで、部隊としての戦力を底上げする事が可能だ。
しかし、その発動時間には限りがある。
使い所を見極めて、適切に部隊運用しなければ効果が薄くなってしまうだろう。
だが、このままズルズルと後退して、いざ反撃という時に兵員が減少していたのでは、やはり印の力を十全に発揮することができない。
そんな、難しい判断を迫られた状況……しかしながら、早急に決断は下さねばならない。
そして、ジークリンデが決断を口にしようとした時、それは起きた。
戦場の上空を覆っていた雲の切れ間から光が差し……
『『『神威降臨!!』』』
何者かの厳かな声が響き渡った……!
「おぉ……ついに、神々がご降臨されるぞ!!」
いち早く状況を察したジークリンデは、歓喜の声を上げた。
上空より地上に降り立ったのは……
デルフィアの守護神でもある、勝利の女神エメリリア。
月の女神パティエット。
技巧神オーディマ。
カルヴァード大陸の誰もが存在を知る、伝説の三神。
「さて、待たせてしまったな。だが、私達が来たからには勝利は揺るぎないぞ」
「ええ。自らの可能性を信じ、望むものを掴み取るのです」
「……ワシはあまり戦闘向きでは無いがのぅ。支援程度はやり遂げてみせよう」
三神が降り立ったデルフィア戦線……この時を堺に、連合軍は反転攻勢をかける事となる。
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