605 / 683
第十五幕 転生歌姫の最終決戦
第十五幕 8 『立ちはだかるもの』
しおりを挟む今頃……カルヴァードとグラナの大戦が始まってしまってるだろうか?
神様たちは地上に降臨して、力を貸してくれているだろうか?
ロランさんに案内されて『黒き神の神殿』に向かう道すがら、そんな考えが頭によぎる。
だけど、いくら心配したところで、今の私達には戦いの状況を知る術もない。
レティに借りた通話の魔導具も、流石にここまで来たら通じなかった。
だから、いまは心配な気持ちを圧し殺して、ひたすらに前進を続けるだけだ。
……いや、むしろ私達の方こそ他所の心配をしている場合ではないかも知れない。
占星術師との戦いが終わったあと、突然現れたあの禍々しい気配は、今こうしている間にもどんどん強く なっている。
強大な何者かの存在をひしひしと感じるのだ。
「これが邪神のものだとしたら……こんな気配を放つ存在に、私達は勝てるのでしょうか?」
「「「…………」」」
あの、いつも揺るぎなく前進するルシェーラでさえも、そんな言葉を口にする。
それは、誰もが抱く思いを代弁するものだった。
彼女の呟きに、誰も答えることができない。
いつも天真爛漫で明るいミーティアやメリエルちゃんでさえも、今は不安げな表情だ。
私は重苦しい空気を振り払うように、殊更冷静であるようにつとめて、ロランさんに質問する。
「ロランさん、この気配を放つ存在について、何か知らないですか?」
「いえ、カティア姫。私は黒神教幹部ではありましたが……このような存在の事は知りませんでした。恐らくは、魔王や軍師、調律師あたりは何か知ってると思いますが……」
丁寧な口調でロランさんが答えてくれる。
……どうも、リル姉さんの印を受け継ぐ私に対して敬意を払ってくれているらしい。
元々は、アルマ王家に仕える貴族家の出だから……と言う事みたい。
アグレアス侯爵と同じだ。
夢の中でも、テオフィールに対しては敬語だったしね。
「あともう少しで神殿に着きます。この気配の正体も……否が応でも知る事になるでしょう」
「でも、その前に……ロラン。とうさ……魔王と調律師、軍師が神殿に居るのでしょう?」
それを聞くシェラさんの表情は硬い。
それはそうだろう。
敵対しているとは言え、魔王と調律師は彼女の肉親だ。
複雑な想いが渦巻いているのは想像に難くない。
それでも、シェラさんは戦う道を選んだ。
その覚悟たるや……推して知るべし。
「その筈だ。軍師のヤツは、グラナ侵攻はついでのような口振りだったぜ。あくまでも、カティア様を神殿に招き入れるのが本当の目的……そんな感じだった」
「…………」
魔王や調律師たちがグラナ侵攻と言う大きな戦いには帯同せず、神殿に留まっている。
それは、ロランさんが言う通り、彼らにとってカルヴァードへの侵攻は真の目的では無いと言う事なのだろう。
そして……
やはり、『軍師』の正体は……彼なのか?
だとすると……私を本拠地に招き入れる、その意図は?
道を急ぎながらも、先程から考えが堂々巡りになって、何とも言えない恐れのようなものが込み上げてくる。
「カティア」
そんな私の様子を見かねたのか、テオが声をかけてくれた。
「大丈夫だ。お前はお前だ。自分を見失うなよ。今、ここにいるのが……俺の目の前にいるのが、カティアなんだ」
……全くもう。
この人はいつも、私が欲しいときに欲しい言葉をかけてくれる。
ますます好きになっちゃうじゃないか。
テオだけじゃ無い。
他のみんなも、私を見て頷く。
「ママ」
ミーティアが、ギュッと私の手を握る。
そうだね。
今の私は、もう……
前世に囚われる必要なんか無い。
例え『軍師』が『彼』だとしても……それで私が私を見失うことは無い。
「大丈夫だよ。みんな、ありがとう。どちらにしても、もうすぐ答えは分かる……行こう!」
もう目的地は近い。
全ての謎は、きっとそこで解ける。
だが、そんな風に気を取り直し、荒野を駆ける私たちの前に、立ちはだかる者がいた。
それは……
「ここから先には行かせませんよ」
「ヴィー!?」
そう……あの、『調律師』ヴィリティニーアだった。
カルヴァードで暗躍していた因縁の相手……避けて通れない相手だ。
だったら、今こそここで決着を付けるんだ!!!
10
あなたにおすすめの小説
異世界で一番の紳士たれ!
だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。
リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。
リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。
異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる