625 / 683
第十五幕 転生歌姫の最終決戦
第十五幕 28 『姉妹の再会』
しおりを挟むーー ウィラー王国 対グラナ戦線 ーー
地上でエルネラとの戦いが決着した頃と時を同じくして、天空における神と竜たちの戦いも終わりを迎えようとしていた。
『グルゥアアァァーーーーッッ!!!!』
黒魔神竜ボラスが咆哮とともに雷撃をまき散らす!
無数の光の大蛇がのた打ち回りながら、ディザールを背に乗せたゼアルへと殺到するが……
「ふんっ!!!」
ディザールが剣を一閃させると、雷撃を尽く打ち払い散逸させてしまう。
そしてゼアルは黒竜へと肉薄し……
『グォーーーーッッ!!!!』
強烈な炎のブレスを至近距離から撃ち放つ!!
極限まで圧縮されたそれは、灼熱の光線となってボラスに襲いかかった!!
ドゴォーーーーーンンッッッ!!!!
回避行動も間に合わず、ボラスの胴体に直撃!!
黒竜に大きなダメージを与えるが、強力な再生能力によってたちまちのうちに傷が癒え始める。
しかし……!!
『ディザール!!!』
「任せろ!!!」
直前にゼアルの背中から跳躍したディザールが、高々と剣を振り上げて……!
「ぜりゃあーーーーーーっっっ!!!!」
裂帛の気合で振り下ろす!!!!
ザシュッッ!!!!
ディザールの剣は、ボラスの首を一刀のもとに切り落とした!!!
これまで幾度となくダメージを負っては再生を繰り返してきた黒魔神竜であったが……
もはや切り落とされた首を再生するほどの力は残されておらず、次の瞬間には崩壊を始めた。
その首と残された巨体はみるみるうちに黒い灰となって崩れ落ち、地面に降り注ぐ前に風に吹き散らされて跡形もなく消えてしまった。
激闘を終えてから、未だに目を覚まさないエルネラを抱きかかえ天空の戦いを見上げていたエフィメラと、連合軍の仲間たち。
そして、エメリールとエメリナの姉妹神。
一際大きな爆発音が響いたあと……黒魔神竜が脆くも崩れ去るのが遠目にも確認できた。
そして上がるのは勝鬨の声。
グラナ軍の魔物は尽く斃され、あるいは潰走し、最後まで生き残って戦いを続けていた人間の兵たちも、今となっては既に戦意を喪失。
そしてそれは、デルフィア、レーヴェラント、シャスラハの各戦線でも同じような状況であった。
今この時をもって、グラナのカルヴァード侵攻に端を発した大戦……後世の歴史家たちが『神威戦争』や『再臨戦争』などと名付けた大戦が幕を下ろすのであった。
「終わりました……ね」
連合軍の将の一人として指揮に当たっていたリュシアンは、長かった戦いの終結に、ほっ……と息をつく。
「最後はどうなるかと思いましたね~」
「全くだ。神々が来てくださらなければ、果たしてどうなっていた事か……」
リュシアンの呟きに、ケイトリンが応え、オズマが同意する。
「確かに、神々の力無くしては今回の勝利は無かったかもしれませんが……私達も力を合わせたからこそ、ですよ。胸を張ってイスパルに凱旋しましょう」
「「はい!!」」
「……う、うぅ……」
「!!エルネラ!!」
エフィメラの腕の中でうめき声を上げながら身動ぎするエルネラ。
そして、暫くすると薄っすらとまぶたを開く。
その瞳は黄金ではなく、透き通るような青だった。
「エルネラ!!……目を覚ましたのね?大丈夫?私の事、分かる?」
「……お姉様?」
まだ夢現の様子のエルネラであったが、はっきりと姉の名前を呼ぶ。
「そうよ!!あぁ……良かった……」
「お姉様……。私は、いったいどうして…………!!」
記憶を探るように視線を彷徨わせていたエルネラであったが、気を失う前のことを思い出したのか、目を見開いて姉の腕の中から、バッ!と飛び起きる。
「あぁ……お姉様……私は、何てことを……」
「エルネラ……まさか、魔族だった時の事を覚えているの?」
彼女の様子を見れば、それはそうなのだろう。
再び人間としての意識を取り戻した彼女であったが、魔族であった時の行動を思い出して、後悔の念が押し寄せる。
「ごめんなさい、お姉様……ごめんなさい、ごめんなさい……」
頭を抱えてうずくまり、何度も謝罪の言葉を繰り返すエルネラ。
涙がとめどなく溢れて地面に落ちる。
「エルネラ、落ち着いて……あなたのせいではないわ。それに、あなたは誰も傷つけていない」
実際、戦いの中で怪我を負った者はいるが、それも既にエメリナが完璧に治療を施している。
敢えてそれを言う者はいないだろう。
そうして、暫くエフィメラは妹を宥め落ち着かせて、ようやく話ができるようになった。
「……ごめんなさい、エフィお姉様……取り乱したりして」
「大丈夫よ。……久しぶりね、エル。大きくなって……見違えたわ」
幼い頃の愛称で呼び合う二人。
ようやく彼女たちは、姉妹として再会を果たしたのだった。
10
あなたにおすすめの小説
異世界で一番の紳士たれ!
だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。
リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。
リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。
異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる